竜巻Q&A

Q1.竜巻とはどのような現象でしょうか?

発達した積乱雲の底から柱状またはロート状に地面や水面に延びた非常に速い速度で回転する空気の渦です(参考文献(2))。

Q2.竜巻の発生する仕組みは?

次の二つの条件が必要と言われています。

  •  (1)発達した積乱雲があること。
  •  (2)積乱雲のまわりの空気がゆっくり回転していること。

積乱雲のまわりでゆっくり回転している空気が上昇気流に巻き込まれると、急激に回転半径が小さくなり竜巻となる場合があります。 ただし、現実に積乱雲は無数あり、また空気はなんらかの回転性を持っています。 それにもかかわらず、竜巻がめったに発生しないと言うことは、これらに加えて未解明な条件がさらに必要であることを物語っています。 実際の竜巻発生の仕組みは単純ではありません(参考文献(3))。

Q3.竜巻の規模は?

日本での平均的な規模は以下のとおりです。

  •  (1)平均被害幅は103m(そのほとんどが160m以下、最大1.6km)
  •  (2)平均の被害の長さは3.3km(そのほとんどは5km以下、最大50.8km)
  •  (3)平均の移動速度は36km/h(そのほとんどが60km/h以下、最大100km/h以上

(参考文献(1))

Q4.陸上竜巻、水上竜巻、空中竜巻とは?

陸上竜巻とは竜巻が地面に達しているもの。

水上竜巻とは竜巻が水面に達しているもの。

空中竜巻とは雲底からロート雲が下がっているだけで地面や水面に達していないもの。

災害との関係でこのように分類して統計することがあります(参考文献(2))。

Q5.回転は時計回り、反時計回り?

両方ありますが、日本で発生する竜巻は反時計回りが多いようです。

Q6.竜巻と低気圧などとの関係は?

竜巻は低気圧や前線および台風にともなって発生することが多いようです。 参考文献(1)では、低気圧や前線に伴ったもの57%、台風に伴ったもの28%でした。 また位置関係では低気圧の暖域(温暖前線の南側)および前線付近、台風の中心付近と北東象限での発生が多いようです(参考文献(1))。

Q7.日本での竜巻の発生の状況は?

1971~2005年の調査では、

  •  (1)年間の平均発生件数は約12件でした。
  •  (2)9月(平均2.5件)を中心に夏季に多く、冬季は少なくなっています(3月に0.3件が極小)。
  •  (3)府県別では、鹿児島(1971~2005年の合計40件)、沖縄(32件)、北海道(28件)、宮崎(22件)、高知(21件)の順で多くなっています。

Q8.世界での竜巻の発生の状況は?

全世界で目撃される竜巻の数は年平均1000個であり、そのうち約800個がアメリカです。 日本、アメリカの他では、ヨーロッパ、インド、オーストラリア、ニュージーランド等温帯域での発生が多いです(参考文献(2))。

Q9.竜巻の予報は可能でしょうか?

低気圧や台風との関係および大気の不安定度等から、日本のどこかで竜巻が発生しやすい気象状況であるという 程度の予測は可能です。 しかし、時間や場所を細かく特定して予想することは、現在の観測および予報技術から見て極めて困難です。

Q10.アメリカでの状況は?

アメリカでは竜巻(トルネード)に対する注・警報を行っていますが、 日本とは環境が大きく異なっています。 例えば年間の発生数は日本の14件に対してアメリカでは800件、 竜巻の寿命は日本の数分から30分位に対してアメリカでは数時間に及ぶものもあります。 また、竜巻の規模も大きく、最大風速も日本の竜巻のそれを大きく上回っており、 参考文献(1)によれば被害からの最大風速の推定は日本で約100m/s、アメリカでは156m/s、 竜巻による死者も日本の年間平均0.5人に対し、アメリカでは約100人です。 従って、予警報に対する日米の違いを同列には扱えません。

これは次のようなアメリカの地勢が影響していると考えられます。 北米大陸はロッキー山脈が南北に走っているため、その東側の大平原においては、 対流圏上層では気圧の谷となって寒気が入りやすく、下層ではメキシコ湾からの熱帯気団が入りやすくなっています。 このため、日本全域よりもさらに広い地域にわたって大気の状態が著しく不安定になりやすく、 竜巻の規模も上記のように日本と大きく違ってくるものと考えられます(参考文献(1))。

参考文献

  • (1)光田寧他 竜巻など瞬発性気象災害の実態とその対策に関する研究(文部省科学研究費自然災害特別研究成果、1983)
  • (2)藤田哲也 たつまき 上(共立出版、1973)
  • (3)宮澤清治他 近年、日本付近に発生した「たつ巻」について(研究時報、1980)