観測機器について
観測機器は、気象状況を正確に知る上で非常に重要です。
函館空港出張所では、以下の観測機器を使用し空港の気象状況を観測しています。
また、観測機器が常に正常に動作するよう、点検や整備を行っています。
観測機器の設置場所
屋外の観測機器は、周囲からの影響が少なく正しく作動するよう、平坦で開けた、建物等建造物の日陰にならない水平な地面に、芝草を植え整備された場所に設置されています。このような場所を露場(ろじょう)と呼んでいます。
函館空港の露場は、滑走路の緑地帯にあり、滑走路の12側、中央、30側に配置されています。各機器の設置場所については次のとおりです。
滑走路(12側)
滑走路(中央)
滑走路(30側)
屋内(庁舎内)
観測機器の種類
風向風速計
航空機にとって、地上付近の風は離着陸の進行方向の決定や操縦に非常に重要なものです。
函館空港の風向風速計は、滑走路の12側と30側にある高さ約8mの鉄塔に、それぞれ2機(正・副)ずつ設置されています。
1基の鉄塔に風向風速計が2機設置されているのは、1機が故障しても、もう片方により観測しデータが途切れないようにするためです。
風向風速計の感部
風向風速計の感部は、風車型のアルミ合金製で、流線型の胴体に垂直尾翼と4枚羽根のプロペラが取り付けられています。
垂直尾翼より風が吹くとプロペラが風上に向くように回転し、胴体の向きからは風向を、プロペラの回転数からは風速を測定しています。
滑走路視距離観測装置(RVR)
航空機の操縦席からの見通し距離は、離着陸の可否の判断、離着陸の飛行方式・進入方式の決定等に極めて重要です。
滑走路の中心線上の航空機の操縦士が、滑走路面の標識や滑走路の輪郭を示す灯火、中心線を識別できる灯火を見ることができる距離を滑走路視距離(RVR:Runway Visual Range)といいます。
滑走路視距離観測装置はこの距離を測定する機器で、滑走路中心線から120m以内、精密進入滑走路の末端から滑走路の中央に向かって約300m、滑走路面上約2.5mの高さに設置されています。
機器内部には投光部と受光部があり、投光部から赤外線に近い波長の光を発射します。光は、空気中の水蒸気やちりなどにぶつかり散乱します。こうして散乱した光を受光部で受け取り、受けた光の強さにより距離を計算しています。航空機が計器着陸を行う場合はこの値を利用します。
シーロメータ
雲の底面までの高さは、航空機の離着陸の可否を判断する際の重要な要素です。
シーロメータは雲高測定器とも呼ばれ、飛行場の標高(海を基準とした高さ)から機器の真上にある雲の底面までの高さを測る機器です。上空約8km(25,000ft)の高さまで測定することができます。
測定方法は、機器内部の投光部より、上空に向けてレーザー光を発射します。上空に雲があると、レーザー光が雲の底に当たります。反射して戻るまでの時間を元に高さを求めます。
なお、シーロメータの値は機器上空の雲の底面の高さであり、飛行場及び周辺全体の雲の底面の高さは測定できません。このため、観測者が目視で雲の観測を行っています。
電気式温・湿度計
気温及び露点温度(湿度)は、航空機の離着陸時の滑走距離と搭載重量(飛行機の重さ)の計算に使用されます。
函館空港の電気式温・湿度計は、気温と露点温度を測定する機器で通風筒という筒の内部に設置されています。
屋外で気温や湿度を測定するには、日射や風雨の影響を受けないようにする必要があるため、通風筒は、通風口を地表面から1.5mの高さに設置されています。
気温は、白金抵抗温度計(写真右側)により、金属(白金)の電気抵抗が温度によって変化する特性を利用して測定しています。露点温度(湿度)は、塩化リチウム露点計(写真左側)により測定しています。
白金抵抗温度計の感部
白金抵抗温度計の感部には、白金抵抗温度センサを使用しています。
これは、白金の温度の上昇により電気抵抗が一定の割合で増加する性質を用いたものです。
塩化リチウム露点計の感部
塩化リチウム露点計の感部は、表面をらせん状の2本の導線で覆われた、乾湿部と呼ばれる金属パイプ(写真上部の棒状の箇所)と、乾湿部の内部に収められている感温部から構成されています。
乾湿部の表面には、吸湿性を持つ塩化リチウム溶液を塗布します。この状態で電流を流すと、導線から熱が伝わり乾湿部が加熱され、水蒸気の塩化リチウム溶液からの放出や、周辺の空気からの吸収のない平衡な状態を作り出すことができます。
その際の、感湿部の温度を感温部で検出し露点温度を測定しています。
- 相対湿度と露点温度
空気中には水蒸気(水が気体になったもの)が含まれています。
空気中に含まれる水蒸気の量は、温度により変化します。これを飽和水蒸気量といいます。
相対湿度は、飽和水蒸気量と実際にその空気に含むことができる水蒸気量の比を割合(%)で表したものです。
露点温度は水蒸気を含む空気を冷やしたとき、露ができる温度をいいます。このときの湿度は100%です。
雨量計
雨の量は、航空機の安全運航、飛行場の施設や滑走路の供用、管理に重要です。
雨や雪(降水)は、雨量計内部の口径20cmの受水器で受け、転倒ますに集められます。
雪の多い官署の雨量計には、外側に助炭(風よけ。写真上部のシルバーの輪になっている部分)が取り付けられ、横なぐりの雨や雪も集めることができます。また、雨量計のカバー(写真のオレンジ部分)の中には不凍液が入っており、雪が降ってもヒーターで不凍液を温め、受水部の雪を溶かし測定することができます。
雨量計の感部
雨や雪による降水は、雨量計内部の転倒ますに集められます。
転倒ますは、降水が0.5mmたまると1回転倒するしくみになっており、降水量はその転倒回数により測定されます。
降雨強度計
強い雨は視界不良やスリップの原因になります。
降雨強度計は、雨の強さを測定する機器で、雨や雪による降水を口径20cmの受水器で受け、たまった雨水を同じ大きさの水(1滴:約0.0083mm)になるように、油そうと呼ばれる灯油の中に落としています。
油そうの外側には豆ランプ等が取り付けられ、一定の明るさを保つようになっています。
油そうの中に落ちてくる水滴による影を受光量の変化により捕らえ、雨の強さを測っています。
なお、函館空港では、冬期は運用を休止しています。
降雨強度計の感部
降雨強度計の感部は、ろうと(写真中央上のステンレス製のラッパの先のような部分)、受水筒(写真中央の「ろうと」の下のステンレス製の筒)、油そう(写真右側の透明な筒)、豆ランプ(油そうの左外側にある小さな電球)で構成されています。
また、寒冷地には、ヒーターとして保温電球(写真左側の大きな電球)が取り付けられています。
受水器で受けた降水は、ろうとを通り受水筒に運ばれ、一定量の水滴で油そうに落ちるしくみになっています。受水筒と油そうの中にはそれぞれ水と油が入っており、油面がつりあうよう設定されています。水と油が同じ体積の場合、油は軽く、水は重い性質を持っているため、筒の中では油が上に浮き、水は下に沈みます。
この性質を利用して、油そうの中に落ちてくる水滴の影から雨の強さを測っています。
積雪計
滑走路上に積雪があると、スリップの原因になります。
積雪計は、地面からの雪の深さ(積もっている量)を測定し、積雪計の内部にある検知器には、レーザーを発射する感部が3箇所、地面には降雪板が3枚取り付けられています。
検知器のそれぞれの感部から雪面にレーザー光線を当て、戻るまでの時間からデータを平均したものが積雪の値になります。
なお、運用は冬期のみです。
気圧計
気圧は、飛行中の航空機が自己の飛行高度を知るための手掛かりとなる気圧高度計の規正等に用いられる重要な要素です。気圧計は、大気の圧力を測定する機器で、飛行機の気圧高度計が正しい値となるよう気圧補正値を計算しています。
函館空港では、振動式気圧計を使用しており、屋内(庁舎内)に設置しています。
振動式気圧計では、薄い金属性の円筒を共振させ、気圧変化による円筒の共振周波数の変化より気圧を測定しています。
気圧の観測
航空気象観測においては次に挙げるものの他、気圧の急上昇・急下降、日最高飛行場現地気圧、日最低飛行場現地気圧を観測しています。
飛行場現地気圧
飛行場の標高から3mの高さにおける気圧です。hPa(ヘクトパスカル)で表します。
海面気圧
現地気圧を海面更生した気圧値です。異なる高度の観測地点の気圧と比較するためにある定められた高度の値に換算する必要があります。この定められた高度は国際的には平均海面とされています。
日本の場合は、東京湾の平均海面が用いられています。hPa(ヘクトパスカル)で表します。
高度計規正値
ある基準値高度面から気圧高度を求めることができるよう航空機の気圧高度計の原点を規正するための気圧値をいいます。航空気象観測ではQNHとQFEを観測しています。
- QNH
滑走路に着陸した航空機の気圧高度計が、滑走路の標高を示すよう気圧高度計原点を平均海面上3mの高さに合わせるための気圧値です。単位はhPa(ヘクトパスカル)及びinHg(水銀柱インチ)です。
我が国の航空交通管制では主にQNHを用いています。
1inHg(1水銀柱インチ)=33.86hPa(33.86ヘクトパスカル) - QFE
滑走路に着陸した航空機の気圧高度計が、高度「ゼロ」を示すよう、気圧高度計の原点を飛行場の標高から3mの高さに合わせるための気圧値です。つまり、飛行場現地気圧がQFEです。単位はhPa(ヘクトパスカル)及びinHg(水銀柱インチ)です。高地の飛行場等の離着陸で用いられます。
