奥尻航空気象観測所業務紹介
新千歳航空測候所奥尻航空気象観測所は、全国に27ヶ所ある航空気象観測所の1つで、昭和49年(1974)04月11日に函館海洋気象台奥尻空港出張所として開設されました。
奥尻空港に離着陸する航空機の安全運航のため、奥尻空港で観測業務を行っています。
函館空港出張所は、奥尻航空気象観測所の基地官署として観測データや気象報の品質管理を行い、観測の指示・指導及び通報を行っています。
観測業務
| 観測の種類 | 内容 |
|---|---|
| 定時観測 (SCAN) |
航空気象観測所ごとに定められた時刻に行う観測です。 奥尻空港では1日6回09~14時の毎正時の通報の他、航空関係機関からの要請により臨時観測も行っています。 |
奥尻航空気象観測所のあゆみ
| 年月日 | 出来事 |
|---|---|
| 昭和49年(1974)04月11日 | 函館海洋気象台奥尻空港出張所開設。 |
| 昭和49年(1974)12月24日 | 庁舎新築。 所在地:奥尻郡奥尻町字米岡57番地2 |
| 昭和50年(1975)05月01日 | 業務開始。 |
| 平成11年(1999)03月01日 | 函館海洋気象台奥尻航空気象観測所と改称し運用開始。 |
| 平成16年(2004)03月18日 | 新ターミナルビルへ移設。 所在地:北海道奥尻郡奥尻町米岡185番地2 |
| 平成18年(2006)04月01日 | 新千歳航空測候所奥尻航空気象観測所と改称。 |
奥尻空港の地勢と滑走路
地勢
奥尻島は北海道の南西端の日本海に浮かぶ、東西約11km、南北約27kmの南北に長い台形状の島です。
島の周囲は約84kmで北海道の離島では5番目(北方領土を除くと2番目)に広い面積を誇り、島のほとんどが山林で占められ、その60%以上はブナの原生林に覆われています。
奥尻空港は、奥尻島の南西端に位置し、空港の北側は山林となっており、北西側には島内最高峰の神威山(標高584m)、がそびえています。それ以外は日本海に囲まれています。
滑走路
滑走路は、海岸線とほぼ平行の南東から北西方向(RWY13-31)に設置され、直交する真方位は北東(030°)と南西(210°)となっています。滑走路の長さは1,500mです。
- 真方位:真北を基準とした方位
概要
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 地点略号 | RJEO(ICAO 4レターコード) OIR(IATA 3レターコード) |
| 標点位置 | 北緯42度04分18秒 東経139度25分58秒 |
| 標高 | 49.0m(161.0ft) |
| 滑走路の全長・全幅 | 1,500m×45m (着陸帯:1,620m×150m) |
| 滑走路番号 | RWY31(主風向)、RWY13 |
| 分類 | 第3種空港 |
| 設置管理者 | 北海道 |
奥尻空港の気象特性
2006年~2010年の気象データをもとに、各要素別にグラフにしました。
風
データは滑走路の主風向である滑走路(31側)の値を基に作成しています。
風向
グラフは風向の出現頻度を表した風配図です。
赤塗は01時~24時(JST)の毎正時データ、緑塗は現行の観測時間にかかる09時~14時(JST)の毎正時のデータです。
青色の30毎の数字は風向、黒色の0~3000までの数字はデータ件数を表しています。
風配図では、滑走路にほぼ沿った西~北西の風と東~東南東の風が多くなっています。
夜間については、北北東の風も多くなっています。
春の風向
グラフは現行の観測時間にかかる09時~14時(JST)の毎正時データより算出した春の風向です。
青色の30毎の数字は風向、黒色の0~200までの数字はデータ件数を表しています。
春(3~5月)は、年間を通した風配図とほぼ同じ傾向を示しています。
春は、冬型の気圧配置が緩み、天気は周期的に変わりますが、3月~4月上旬頃までは、季節風の影響を受け、西や北西の風が多くなっています。
5月頃になると、オホーツク海高気圧の影響により東の風も多くなります。
夏の風向
グラフは現行の観測時間にかかる09時~14時(JST)の毎正時データより算出した夏の風向です。
青色の30毎の数字は風向、黒色の0~400までの数字はデータ件数を表しています。
夏(6~8月)は、高気圧が日本の南海上から日本列島を覆い、その北側を低気圧が通過する南高北低の気圧配置となる場合が多く、オホーツク海高気圧の影響による東の風と、太平洋高気圧などで南に高気圧がある場合の南~南西の風が多くなっています。
秋の風向
グラフは現行の観測時間にかかる09時~14時(JST)の毎正時データより算出した秋の風向です。
青色の30毎の数字は風向、黒色の0~250までの数字はデータ件数を表しています。
秋(9~11月)は、夏に勢力の強かった太平洋高気圧が弱まり、大陸からの移動性高気圧や低気圧の影響により、天気は周期的に変化します。東南東の風や南西の風が多いのはこのためです。
晩秋から初冬にかけては、季節風の影響により西~北西の風が多くなります。
冬の風向
グラフは現行の観測時間にかかる09時~14時(JST)の毎正時データより算出した冬の風向です。
青色の30毎の数字は風向、黒色の0~400までの数字はデータ件数を表しています。
冬(12~2月)は、西高東低の冬型の気圧配置による季節風の影響が大きく、ほとんどが西~北西の風で占められています。
風速
年間の風速
年間の風速をグラフにしたものです。グラフの縦軸の数字は風速(kt=ノット)、横軸は頻度割合(%)です。グラフの右に表示している数値はそれぞれの階級の頻度割合(%)です。
グラフでは、風速6~10ktの出現頻度が最も多く、10kt以下の風の出現頻度が全体の約47%を占めています。
- グラフ内の数値は、数値の小数第2位を四捨五入し表示しているため合計が100%とならない場合があります。
季節毎の風速
季節毎の風速をグラフにしたものです。グラフの縦軸の数字は風速(kt=ノット)、横軸の数字は頻度割合(%)、グラフ内に表示している数値は季節毎の頻度割合(%)です。
季節毎にみると、春(3~5月)は、季節風の影響がまだ残っているため、比較的風が強く31~35ktの風の出現頻度が多くなっています。
夏(6~8月)は、5kt以下の風が約50%を占め、秋(9~11月)は、30kt以下の風の出現頻度がそれぞれ約25%前後とあまり頻度のばらつきが見られません。
一方、冬(12~2月)は、季節風の影響が大きく年間で最も風が強く、26~30ktの出現頻度が約58%となっています。
なお、春の出現頻度で、36~40ktの階級が約73%、41~45ktの階級が約100%となっていますが、出現回数はごく少なく、他の季節でこのような強い風速値がなかったため割合が大きくなっています。
- グラフ内の数値は、数値の小数第2位を四捨五入し表示しているため合計が100%とならない場合があります。
降水量
年間の平均降水量は851.9mmで、月別の平均降水量では7月が135mmと最も多く、2月が29.1mmと最も少なくなっています。
このため、降水量は夏季から秋季に多く冬季に少ない傾向となっています。
気温
年平均気温は9.7℃、平均最高気温は12.3℃、平均最低気温は6.9℃となっています。
月平均気温が20℃を超えるのは8月だけで、観測史上、猛暑日(日最高気温が35℃以上の日)、真夏日(日最高気温が30℃以上)の記録はなく、夏は比較的すごしやすい気候といえます。
一方、1~2月は月平均気温が0℃以下で、真冬日、冬日となることもあります。
観測機器について
奥尻航空気象観測所では、航空気象観測所システム(AMOSOS)により、空港の気象状況を観測しています。
- AMOSOSは、Aviation Meteorological Observing System for Observation Siteの略称です。
観測機器の設置場所
奥尻空港の観測機器は、屋内(庁舎内)に設置されている電気式気圧計を除き、周囲からの影響が少なく、機器が正しく作動するよう屋外に整備された露場(ろじょう)に設置されています。
奥尻空港の露場は、滑走路の緑地帯にあり、それぞれ滑走路の13側、中央、31側に配置されています。各機器の設置場所は次のとおりです。
滑走路(13側・31側)
滑走路(中央)
屋内(庁舎内)
観測機器の種類
風向風速計
航空機にとって、地上付近の風は離着陸の進行方向の決定や操縦に非常に重要です。
奥尻空港の風向風速計は、滑走路の両端(13側・31側)にある、高さ約8mの鉄塔にそれぞれ2機(正・副)ずつ設置されています。
1基の鉄塔に2機設置されているのは、1機が故障しても、もう片方により観測しデータが途切れないようにするためです。
風向風速計の感部
風向風速計の感部は、風車型のアルミ合金製で、流線型の胴体に垂直尾翼と4枚羽根のプロペラが取り付けられています。
垂直尾翼より風が吹くとプロペラが風上に向くように回転し、胴体の向きからは風向が、プロペラの回転数からは風速を測定できます。
視程計
飛行機の離着陸を判断する際には、視程(見通し距離)の情報が必要となりますが、奥尻空港には函館空港のような滑走路視距離計はありません。
このように滑走路視距離計を設置しない航空気象官署には、視程計が設置されています。
視程計の機器内部には、投光部と受光部があり、投光部から赤外線に近い波長の光を発射します。光は、空気中の水蒸気やちりなどにぶつかり散乱します。こうして散乱した光を受光部で受け取り、視程や現在天気を判別しています。
なお、現在天気の判別には、他のシステム(機器)で観測した気温・相対湿度、風速値も利用されています。
シーロメータ
雲の底面までの高さは、航空機の離着陸の可否を判断する際の重要な要素です。
シーロメータは雲高測定器とも呼ばれ、飛行場の標高(海を基準とした高さ)から機器の真上にある雲の底面までの高さを測る機器です。
機器内部の投光部より、上空に向けてレーザー光を発射します。上空に雲があると、レーザー光が雲の底に当たります。反射して戻るまでの時間を元に高さを求めます。
なお、シーロメータの値は機器上空の雲底の高さであり、飛行場及び周辺全体の雲底の高さは測定できません。このため、観測者が目視で雲の観測を行っています。
温湿度計
気温及び露点温度(湿度)は、航空機の離着陸時の滑走距離と搭載重量(飛行機の重さ)の計算に使用されます。
奥尻空港の温湿度計は、通風筒というステンレス製の二重の筒の中に収納されています。
これは、温度・湿度センサが、日射や反射光、風雨の影響を受けないようにする必要があるためです。このため、通風口を地表面から1.5mの高さに設置しています。
また、通風筒の上部にはファンがついており、筒の下から上に向けて常に外気を取り入れ、大気と同一の気温や湿度となるようにして測定しています。
電気式温度計の感部
電気式気温計は、通風筒の中に収納され、感部には金属(白金)が使用されています。
金属(白金)の電気抵抗が、温度によって変化する特性を利用して測定しています。
電気式湿度計の感部
電気式湿度計は、通風筒の中に収納され、感部には静電容量型で高分子フィルムの湿度センサを使用しています。
写真は感部(湿度センサ)ですが、通常はちりや水滴から保護するためフィルタで覆われています。
高分子フィルムに含まれる水分の量が変化する吸湿性を利用し、相対湿度を測定しています。
- 相対湿度と露点温度
空気中には水蒸気(水が気体になったもの)が含まれています。
空気中に含まれる水蒸気の量は、温度により変化します。これを飽和水蒸気量といいます。
相対湿度は、飽和水蒸気量と実際にその空気に含むことができる水蒸気量の比を割合(%)で表したものです。
露点温度は水蒸気を含む空気を冷やしたとき、露ができる温度をいいます。このときの湿度は100%です。
雨量計
雨の量は、航空機の安全運航、飛行場の施設や滑走路の供用、管理に重要です。
雨や雪(降水)は、雨量計内部の口径20cmの受水器で受け、転倒ますに集められます。
雨量計のカバー(写真のオレンジ部分)の中には不凍液が入っており、雪が降ってもヒーターで不凍液を温め、受水部の雪を溶かし測定することができます。
雨量計の感部
雨や雪による降水は、雨量計内部の転倒ますに集められます。
転倒ますは、降水が0.5mmたまると1回転倒するしくみになっており、降水量はその転倒回数により測定されます。
気圧計
気圧は、飛行中の航空機が自己の飛行高度を知るための手掛かりとなる気圧高度計の規正等に用いられる重要な要素です。
気圧計は、大気の圧力を測定する機器で、奥尻空港では、電気式気圧計(静電容量型)を使用しています。
電気式気圧計のセンサーには、縦・横約6mm、厚さ約1.5mmのシリコン基板があり、基盤の内部には、薄さ約4μm(マイクロメートル。1μm = 0.001mm)の真空部があります。この真空部は気圧の変化により、上下の電極間の静電容量に変位が生じます。この変化を電気信号として受信し、気圧値を算出しています。
雷監視システム検知局
航空機や空港への落雷は、機体や機器への損傷や安全運航をおびやかす大きな要因となります。このため、運航関係者にとって雷の発生状況を的確に知ることは、非常に重要です。
雷監視システムは、雷を検知するため約200km毎に全国30箇所の空港に設置された検知局と、検知局のデータを処理する気象庁の中央処理局から構成されています。
北海道には、新千歳空港、釧路空港、稚内空港、女満別空港、奥尻空港の5空港に検知局があります。それぞれの検知局では、アンテナより雷からの電磁波を受信し、雷の受信時刻、雲放電の発生方位、対地放電の規模などの情報を得て、瞬時に気象庁の中央処理局にその情報を伝送します。
中央処理局では、それらの情報を元に雷の種類及び発生位置を自動的に算出しています。
奥尻空港の通報文
航空気象観測所気象報
全国の航空気象観測所で通報する通報文で、航空気象観測所実況気象通報式(SCAN)という通報型式で送信します。奥尻空港では09~14時(JST)の毎正時(1時間毎)に通報しています。通報型式及び通報例については、次のとおりです。
通報型式
通報型式の内容
| 内容 | 記号 |
|---|---|
| CCCC | 地点略号(ICAO国際4文字) ※奥尻空港はRJEO |
| YYGGggZ | 観測日時(UTC:世界標準時) |
| dddffGfmfmKT | 風 |
| VVVV 又は CAVOK |
卓越視程 CAVOK(卓越視程10km以上、雲1500m(5000ft)又は最低扇形別高度の最大値のいずれか高い値未満に雲がなく、かつ重要な対流雲がなく、現在天気に該当する現象がない場合) |
| W'''W''' | 特別な現在天気 (該当する大気現象が2つ以上共存する場合は重要な現象1群のみ) |
| N'sN'sN'sh'sh'sh's 又は SKC |
雲 N'sN'sN's(雲量) h'sh'sh's(雲底の高さ) ※雲底の高さが5000ftを超える場合XXX SKC(雲が全くない場合) |
| T'T'/T'dT'd | 気温/露点温度 |
| QPHPHPHPH | アルティメーター・セッティング〔QNH(hPa)〕 ※高度計規正値(滑走路に着陸した航空機の気圧高度計が滑走路の標高を示すように気圧高度計原点を平均海面上3mの高さに合わせるための気圧値) |
| RMK | 国内記事(国内のみ通報されます) |
| AP'HP'HP'HP'H | アルティメーター・セッティング (高度計規正値)〔QNH(inHg)〕 |
| その他の記事 | 積乱雲が観測された場合存在位置を報ずる (例)CB 10KM N (積乱雲が北10㎞にある) |
雲について
雲は雲底高度の低い雲から高い雲の順に選定し、雲底高度はft(フィート:1ft=30.48cm)で表します。
雲量は10分雲量で観測し、数字符号で表し、通報する場合は略号を用います。
雲量の略号と対応表については、次のとおりです。
| 略語 | 数字符号 | 8分雲量 | 10分雲量 |
|---|---|---|---|
| SKC (Sky clear) | 0 | 0(雲がない) | 0(雲がない) |
| FEW (Few) | 1 | 1以下で0ではない | 1以下で0ではない |
| 2 | 2 | 2~3 | |
| SCT (Scattered) | 3 | 3 | 4 |
| 4 | 4 | 5 | |
| BKN (Broken) | 5 | 5 | 6 |
| 6 | 6 | 7~8 | |
| 7 | 7以上ですき間がある | 9以上ですき間がある | |
| OVC (Overcast) | 8 | 8(すき間がない) | 10(すき間がない) |
| /// | 9 | 雲量を推定できない | 雲量を推定できない |
- 10分雲量とは、全天を10とし、雲によって覆われた部分の全天空に対する見かけ上の割合をいいます。
- 8分雲量とは、全天を8とし、雲によって覆われた部分の全天空に対する見かけ上の割合をいい、オクタス(octas)で表します。全天を覆った場合は8オクタスとなります。
- 数字符号は8分雲量に対応しています。ただし、雲量を推定できない場合は9を用います。
通報例
通報文
SCAN RJEO 140100Z 17005KT 2000 BR SCT008 BKN010 OVC025 20/18 Q1011 RMK A2966
通報文の解説
奥尻空港の14日01時(UTC)のSCAN
風170°05kt、卓越視程2000m、現在天気はもや、雲の1層目は雲量3~4オクタスで雲底高度800ft、2層目は雲量5~7オクタスで雲底高度1000ft、3層目は雲量8オクタスで雲底高度2500ft、気温20℃/露点温度18℃、高度計規正値は1011hPa
<国内記事>高度計規正値は29.66inHg
