金沢地方気象台(気象庁)

平成19年(2007年)能登半島地震から10年

もくじ

1.はじめに

金沢地方気象台では、平成19年(2007年)能登半島地震の発生から10年という節目を迎えるにあたり、地震災害への防災意識を新たにしていただくことを目的として本資料を作成しました。 能登半島地震を教訓として、地震災害はいつでもどこでも発生する可能性があることを肝に銘じておきましょう。 そして、いざというときのために耐震補強や家具の固定、非常持ち出し品の準備、避難場所の確認など、日頃からできる限りの備えを進めておきましょう。

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2.能登半島地震の概要

平成19年3月25日09時41分、突然の揺れがわたしたちを襲いました。 能登半島地震です。 地震による揺れはたいへん強く、震央に近い場所では立っていられませんでした。 多くの方が当時の状況を今もなお鮮明に記憶されているのではないでしょうか。

この地震は、能登半島西岸付近(気象庁震央地名:能登半島沖)の深さ11kmを震源として発生しました。 地震の規模を示すマグニチュード(以下「M」と記述します。)は、6.9(確定値)で、七尾市、輪島市、穴水町では最大震度となる6強、志賀町、中能登町、能登町で震度6弱を観測したほか、北陸地方を中心に北海道から中国・四国地方にかけて震度5強~1を観測しました。 また、珠洲市長橋(気象庁観測点)で11時13分に最大22cmの津波を観測しました。 気象庁ではこの地震を「平成19年(2007年)能登半島地震」と命名しました。 この地震による震度分布を第1図に、石川県内の各地の震度を第1表に示します。

第1図

第1図 平成19年3月25日09時41分の能登半島地震の震度分布図(震度観測点毎)
(左上の四角内は全国の地域毎の震度分布図)

第1表 平成19年3月25日09時41分の能登半島地震による石川県内の各地の震度
(「*」が付いた震度観測点は石川県または防災科学技術研究所の震度観測点、他は気象庁の震度観測点です)
震度震度観測点名
6強七尾市田鶴浜町* 輪島市鳳至町 輪島市門前町走出* 穴水町大町*
6弱輪島市河井町* 志賀町富来領家町 志賀町香能* 志賀町末吉千古* 中能登町末坂* 中能登町能登部下* 能登町宇出津 能登町松波*
5強七尾市本府中町 七尾市袖ヶ江町* 珠洲市正院町*
5弱珠洲市大谷町* 羽咋市柳田町 羽咋市旭町* 宝達志水町子浦* 中能登町井田* 能登町柳田* かほく市浜北*
輪島市舳倉島 珠洲市三崎町 金沢市西念 金沢市弥生* 小松市小馬出町 小松市向本折町* 加賀市直下町 加賀市大聖寺南町* 加賀市山中温泉湯の出町* 川北町壱ツ屋* 津幡町加賀爪 内灘町鶴ケ丘* かほく市宇野気* 白山市別宮町* 白山市白峰* 白山市倉光* 白山市美川浜町* 白山市河内町口直海* 能美市来丸町* 野々市市三納*
白山市鶴来本町* 白山市市原* 白山市女原*

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3.被害の状況

石川県では、死者1名、重傷者88名、軽傷者250名、住家全壊686棟、住家半壊1740棟など甚大な被害が発生しました。 第2表に、能登半島地震による人的被害、住家被害等の市町別一覧表を示します。

第2表 能登半島地震による人的被害、住家被害等の市町別一覧表
(出典:輪島測候所114年(平成21年8月12日現在・石川県危機管理監室危機対策課調べ))
市 町人的被害(人)住家被害(棟)非住家被害(棟)
死者重傷者軽傷者全壊半壊一部損壊
輪島市146695131,0869,9882,899
七尾市24103693047,300357
珠洲市368523
穴水町336791002,318248
能登町2101101,13018
志賀町1027152153,384850
羽咋市131314229
宝達志水町3261
かほく市321811
中能登町3371,95915
津幡町121
金沢市16
白山市17
能美市1
小松市2
加賀市66
合計1882506861,74026,9594,484

気象庁では平成19年3月26日から28日にかけて、震度6弱以上を観測した11箇所の震度観測点付近の被害状況調査を実施しました。 気象庁による調査実施場所は第2図のとおりです。

第2図

第2図 気象庁による被害状況調査実施場所
(図の出典:気象庁災害時地震・津波速報 平成19年(2007年)能登半島地震)

調査の結果、震度6強を観測した震度観測点付近では、古い木造家屋や土蔵の全壊等が多く見られました。 震度6強を観測した観測地点付近の被害状況は次のとおりです。

◆輪島市門前町走出の震度観測点付近(第2図A)

古い木造家屋や土蔵の全壊、板塀の倒壊、アスファルト・コンクリート舗装の沈下、亀裂等が多く見られました。

写真1左 写真1右

【写真1】崩壊した家屋(輪島市門前町走出)
(出典:気象庁災害時地震・津波速報 平成19年(2007年)能登半島地震)

◆穴水町大町の震度観測点付近(第2図B)

古い木造家屋の倒壊、アスファルト・コンクリート舗装の沈下、亀裂等が多く見られました。

写真2左 写真2右

【写真2】1階部分が崩れた家屋(左)と、壁が崩落した土蔵(右)(穴水町大町)
(出典:気象庁災害時地震・津波速報 平成19年(2007年)能登半島地震)

◆輪島市鳳至町の震度観測点付近(第2図C)

古い木造家屋の全壊が多く見られました。

写真3左 写真3右

【写真3】崩壊した家屋(輪島市鳳至町)
(出典:気象庁災害時地震・津波速報 平成19年(2007年)能登半島地震)

◆七尾市田鶴浜町の震度観測点付近(第2図D)

古い木造家屋の全壊、タイル舗装の沈下が見られました。

写真4左 写真4右

【写真4】壁が崩落した土蔵(左)と沈下したタイル舗装(右)(七尾市田鶴浜町)
(出典:気象庁災害時地震・津波速報 平成19年(2007年)能登半島地震)

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4.過去の主な地震被害

第3図

第3図 1600年代以降石川県とその周辺で発生したM5.5以上の地震の震央分布図
(緑色の丸は被害の発生した地震。陸地の茶色線は地震調査研究推進本部による主要活断層帯を示す。「発生地域(名称)」「発生年月日」「震源の深さ」「規模」は、1922年以前は新編 日本被害地震総覧[増補改訂版]、1923年以降は気象庁震度データベースによる。なお、1997年9月以前の震源の深さは精度が低いため記載していない。)

過去に石川県とその周辺で発生した主な被害地震(緑色の丸)を第3図に示します。 石川県付近では過去に多くの被害地震が発生していますが、1600年代以降、石川県内でM7.0を超える地震の発生はなく、能登半島地震(図中※1)は石川県で最大規模の地震となりました。 能登半島地震をはじめとして石川県に被害を及ぼす地震は、主に「陸域の浅い地震」とよばれる地震で、地上からの深さがおよそ20kmより浅い場所で発生するため、比較的規模の小さな地震であっても震源の付近では大きな被害となることがあります。 また、被害地震の発生場所を見ると、特定の地域で発生するなどの偏りはみられません。 能登地方でも加賀地方でも発生しており、それぞれの沖合いでも発生しています。 これは、地震がどこで発生してもおかしくないことを意味しています。

詳しくは、「石川県に被害をもたらした過去地震」をご覧ください

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5.能登半島地震と活断層の関係

第4図

第4図 本震と余震の震央分布
(2007年3月25日09時41分~3月28日24時00分、深さ20km以浅、M≧2.0)
(出典:験震時報72巻「平成19年(2007年)能登半島地震」)

能登半島西方沖には北東方向から南西方向にのびる海底活断層(第4図参照)が認められていましたが、能登半島地震発生後の海底地形調査と海底音波探査から、この活断層の一部でわずかな変動が現れたことが確認されました(産業総合技術研究所、2007)。 余震分布の延長上にこの活断層が位置していることや、強震波形解析及び地殻変動観測結果により得られたすべり量分布などから、能登半島地震はこの断層が活動したものであると考えられています(地震調査委員会、2007)。

活断層とは過去に繰り返し地震を起こし、将来も再び地震を起こすであろうと考えられる断層です。 当然、活断層による地震には注意が必要ですが、活断層が確認されている場所以外でも能登半島地震よりも小さな規模の地震がおきて被害が生じていますので、活断層の有無にとらわれず日頃から地震に備えることが大切です。

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6.過去の主な津波被害

第5図

第5図 1700年から2015年までに発生したM6.0以上の地震の震央分布図
(黄色の丸は石川県に津波をもたらした地震。緑線内は日本海東縁部を示す。「地域(名称)」「発生年月日」「震源の深さ」「規模」は、1922年以前は新編 日本被害地震総覧[増補改訂版]、1923年以降は気象庁震度データベースによる。なお、1997年9月以前の震源の深さは精度が低いため記載していない。)

能登半島地震では、珠洲市長橋で最大高22cmの津波を観測しました。 幸いにも被害の発生はありませんでしたが、過去には津波の来襲により大きな被害が発生しています。 例えば、1833年(天保4年)12月7日の羽前・羽後・越後・佐渡の地震(山形県沖の地震)では、輪島市に巨大な津波が押し寄せました。 「日本被害津波総覧」によれば、「輪島では地震後10町ばかり潮が引いたが、第1波で床上浸水し、第3波で最大となり、家屋流出および半潰365、溺死47」と記述されています。 また、「加賀・能登海難史年表」では、「昼7ツ頃(15時頃)大いなる地震ありて、7ツ時過磯端波引事凡そ10町許輪島沖に大蛇石という岩あり。 舟方通い路に障る所、此の岩を知って舟を廻らすこと第一とする由、波引去と彼岩大蛇の如く現れ、跡黒く見えあり云々。 家300軒引取られ、人100余人死亡す。」と記述されており、甚大な被害であったことがうかがえます。 津波の浸水深(地面から測った高さ)は輪島市で5.7m程度と推定(出典:「平成23年度石川県津波浸水想定調査報告書」、「続 古地震」)され、県内に来襲した津波としては有史以来最大です。

第5図は1700年から2015年までに発生したM6.0以上の地震の震央分布図です。 このうち、石川県に津波をもたらした地震は黄色の丸で、石川県付近で発生したものと日本海東縁部(日本海における新潟県沖を起点として東北、北海道、サハリンの海岸線に平行に走る細長い海域:概ね図中の緑線内)で発生したものに分けられます。 1833年(天保4年)12月7日の羽前・羽後・越後・佐渡の地震(図中※2)のように、震源から離れた地震でも大きな被害をもたらすことがあり注意が必要です。

また、津波は日本海側の地震だけではなく、太平洋側で規模の大きな地震が発生した場合にも石川県沿岸に到達することがあります。 1960年5月23日(日本時間)にチリ中部沿岸付近で発生した地震(モーメントマグニチュード9.5)による、チリ地震津波では七尾港で最大全振幅59cmの津波を観測しました。 また、2011年3月11日の「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(M9.0)では、七尾港と金沢で最大19cmの津波を観測しています。 太平洋側で発生した地震でも安心せずに津波の情報に注意しましょう。

※モーメントマグニチュードとは

地震は地下の岩盤がずれて起こるものです。 この岩盤のずれの規模(ずれ動いた部分の面積×ずれた量×岩石の硬さ)をもとにして計算したマグニチュードを、モーメントマグニチュード(Mw)と言います。 普通のマグニチュード(M)は地震計で観測される波の振幅から計算されますが、規模の大きな地震になると岩盤のずれの規模を正確に表せません。 これに対してモーメントマグニチュードは物理的な意味が明確で、大きな地震に対しても有効です。

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7.地震から身を守るために

(1)地震が起きる前に

地震はいつ、どこで起きるのかはわかりません。 地震による災害から身を守るためには、耐震補強や家具の固定、非常持ち出し品の準備、避難場所の確認など、日頃からできる限りの備えをしておくことが大切です。

(2)もし地震が起きたら

あわてずに、まずは身の安全を確保しましょう。 また、物が落ちてこない所、倒れてこない所、移動してこない所で身を守りましょう。

家では

  • 頭を保護し、丈夫な机の下など安全な場所に避難してください。
  • あわてて外に飛び出さないでください。
  • 無理に火を消そうとしないでください。
家では

人が大勢いる施設では

  • 施設係員の指示に従ってください。
  • 落ち着いて行動し、あわてて出口に走り出さ ないでください。
人が大勢いる施設では

鉄道・バスでは

  • つり革や手すりにしっかりつかまってください。
鉄道・バスでは

エレベーターでは

  • 最寄りの階で停止させすぐに降りてください。
エレベーターでは

街では

  • ブロック塀から離れてください。
  • 看板やガラスの下から離れてください。
街では

(3)緊急地震速報

気象庁では一般の方を対象に、震度5弱以上の揺れを予想したときに震度4以上の揺れを予想した地域に対し緊急地震速報を発表します。 緊急地震速報とは、地震による強い揺れがすぐに到達することを知らせる情報で、テレビ、ラジオ、携帯電話、スマートフォンなどからの報知音により知ることができます。 緊急地震速報が発表されてから、強い揺れ が到達するまでの時間はごくわずかです。 緊急地震速報を見聞きしたら、机やテーブルの下にかくれるなど、直ちに身の安全を図りましょう。

緊急地震速報が鳴ったら・・・

あわてずに、まず身の安全を!

あわてずに、まず身の安全を!

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(※参考:地震に関する知識・解説

8.津波から身を守るために

第6図

第6図 石川県の津波予報区

気象庁では、津波による災害の発生が予想される場合には、地震発生後約3分を目標に大津波警報、津波警報または津波注意報を、全国を66の区域に分けた津波予報区単位で発表します。 石川県の津波予報区は第6図のとおりで、「石川県能登」や「石川県加賀」と発表されます。

大津波警報、津波警報が発表されたときには、海岸付近や川沿いにいる人はただちに高台に避難しましょう。 このとき、ここなら安心と思わず、より高い場所をめざして避難しましょう。 津波注意報が発表されたときに海や川の中にいた場合は、すぐに海や川から離れましょう。

種類とるべき行動
大津波警報
  • 沿岸部や川沿いにいる人はただちに高台や避難ビルなど安全な場所に避難してください。(ここなら安全と思わず、より高い場所を目指しましょう。)
  • 津波は繰り返し襲ってきます。警報が解除されるまで安全な場所で避難を続けてください。
津波警報
津波注意報
  • 海や川の中にいるときは、ただちに海、川からは離れましょう。
  • 注意報が解除されるまで、海、川に近づかないでください。

なお、大津波警報や津波警報、津波注意報が発表されていなくても、次の場合には津波が起きるおそれがあります。 ただちに高台へ避難しましょう。

津波は繰り返し襲ってきます。 最初の津波から何時間もたってから来ることもあります。 また、後から来る津波のほうが高くなることもあります。 もし、津波警報や津波注意報が発表されたときには、解除を聞くまでは安全な場所で避難を続けましょう。

(※参考:津波に関する知識・解説


【本資料のご利用にあたって】