高知県の地勢と気象

 高知県は、北は四国山地によって徳島・愛媛両県に接し、南は太平洋に面しています。東に室戸岬、西に足摺岬が太平洋に突き出し、その内に土佐湾を抱く東西に細長い扇状をしています。

 寒い冬の季節は、四国山地が高知県の気候に与える影響は大きく、特に北西の季節風が関門海峡や中国・九州山地の低地を通り四国山地に吹き付けるため、山間部や豊後水道に面した地方は雪が意外と多くなっています。

海岸写真

しかし、海岸地方では季節風が四国山地に遮られるのに加え、黒潮の影響も受けて温暖な気候となっています。
高知県の中部・東部の平野部・海岸部では晴天が多く、冬季としては日照時間の多い地域の一つとなっています。

 暖かい夏の季節には、黒潮上を渡る南寄りの湿った気流が四国山地に吹きつけるため、山間部では平年の年間降水量が3000mmを超える所が多く、東部の魚梁瀬地方では4000mmと日本では有数の多雨地帯となっています。

 室戸岬や足摺岬のように海上に突き出た岬や沖の島では、年間を通じて風が強く吹いています。
このように高知県の気候は、温暖な海洋性気候、山間部の内陸性気候、また、多雨気候、低温で雪の降る日本海側の気候、風の強い岬の気候など変化に富んだ気候特性を持っています。

春の気象

 春は冬から夏への移り変わりの季節で、気温の寒暖の差が大きく、一年中で天気変化の最も激しい季節です。春のはじめには、冬の名残の寒い季節風が時折吹きますが、半ばには気温が急に上がり始め、ついには夏の気象に近くなります。

ソメイヨシノ

 3月から4月にかけては、空気が非常に乾燥する季節となり、山火事など火災の発生する事が多くなります。この頃が最も乾燥し、年間の最小湿度が現れます。
黄砂の見られるのもこの季節です。中国大陸北部の黄土地帯で風によって空高く巻き上げられた細かな砂が、西風によって日本まで飛んでくる現象です。

 4月から5月にかけては、移動性高気圧に覆われ、地面付近の空気が放射冷却現象により熱を奪われる時、気温が下がって霜の降りることがあります。この頃は農作物の発芽期にあたるため、晩霜害の発生することがあります。
また、帯状の高気圧に覆われ一週間以上も晴天の続くことや、日本の南海上に前線が停滞し天気がぐずつくこともあります。このように、天気の変化が大きかったり、周期的に変化するのもこの季節です。

梅雨の気象

 梅雨は日本の気候の中で大きな特徴を持っています。
梅雨期の雨水は、昔から水田の灌漑への利用、夏の水資源とするなど大きな役割を持っています。

アジサイ

 梅雨期の気象の特徴は、曇りや雨の天気で代表されますが、毎日ぐずついた天気が続くことはありません。

 梅雨のはじめは梅雨前線が日本の南海上に停滞し、前線上を低気圧が進んで来ると天気は崩れますが、一時的なもので長続きはしません。しかし、前線が太平洋高気圧の強まりと共に除々に北上すると、次第に曇りや雨の天気が続くようになります。 梅雨後半には前線が西日本付近や日本海南部に停滞することが多くなり、前線の活動が活発となって大雨の降ることが度々あります。

 梅雨の期間でも、平年より雨の量がかなり少なく、渇水のニュースが流れたりしますが、このような梅雨を「空梅雨」と言います。

夏の気象

 太平洋高気圧の勢力が強くなり、梅雨前線が日本海北部まで上がると梅雨明けとなります。気温が急激に上昇し、晴天が続きます。
太平洋高気圧の勢力が強いと毎日毎日暑い晴天が続きます。内陸部では日射が強いため、時には雷雲の発達で夕立が発生します。
海岸部では海から吹く風が心地よくなるでしょう。

サルスベリ

 この時期は台風の発生が次第に多くなり、時にはかなり接近したり上陸したりして被害の発生することがあります。
高知県では昭和45年8月に上陸した台風第10号により、高知市を中心に高潮による大被害を受けました。

秋の気象

 太平洋高気圧の勢力が依然として強く、9月前半でも暑い夏の季節となっていることがあります。
9月の中頃から10月にかけ日本の南岸に前線が停滞することがあります。これを「秋霖」と言い天気はぐずつきます。

 大型の台風が西日本に接近するのもこの季節です。室戸台風や伊勢湾台風、第2室戸台風など日本に大被害をもたらしたものは数多くあります。これは太平洋高気圧の縁に沿って台風が移動することによるものです。前線が西日本付近にあって台風が北上接近すると、前線の活動が活発となり大雨の降ることがあります。

日降水量が数100mm以上の大雨は、そのほとんどが台風や秋の前線が関係しています。

イロハカエデ

 10月から11月になると天気は次第に安定してきます。移動性高気圧に覆われ晴天が続きます。しかし気温は除々に下がり、山間部で霜が降りるようになるともうすぐ冬間近となります。

冬の気象

 冬型の気圧配置の時、北西の季節風が関門海峡から周防灘や伊予灘を経て来ると、多量の水蒸気を含んでくるため、四国山地に達すると山間部や豊後水道に面した地方では雪の降る日が多くなり、山間部では1mを超える積雪となることもあります。
しかし、季節風が中国山地を越え四国山地に達する時は、中国山地ですでに多量の雪を降らせているため、四国山地での雪は少なくなります。

ツバキ

 冬季での中部や東部の平野部では、雪は少なく晴天となることが多くなります。また、高気圧に覆われ穏やかな晴天の日には、放射冷却現象により朝夕の気温が急に下がり、冷え込みの厳しい日があります。