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★台風8210号と低気圧による浸水害(昭和57年7月31日~8月3日)

 7月31日から8月3日にかけて、台風第10号と引き続く低気圧により豪雨となって、県下各地では昭和34年9月の「伊勢湾台風」以来の大災害をもたらした。
 奈良県では、「災害対策基本法」施行以来初めて災害対策本部が設置され、災害救助法の適用により陸上自衛隊が派遣される他、県民総ぐるみの戦いとなった。
 奈良県での死者は14名、行方不明者2名をはじめとして、大和川をはじめとする県下各河川は氾濫し、王寺町をはじめ床上・床下浸水合わせて12398棟に及んだ。
 引き続く豪雨により各地で山・がけ崩れが生じ、道路寸断・鉄道のストップにより県下一円マヒ状態となった。  また4日未明、西吉野村和田で大規模な地滑りがあり、土砂が丹生川をせき止めたため、上流約2km「ダム湖」化し、家屋の浸水などの甚大な災害を生じた。

天気概況

昭和57年台風第10号の経路図  台風第10号は父島の西方約500kmの海上を北上し、8月1日21時頃に潮岬の東南東約100kmの海上に達し、なお北上を続けた。
 中心気圧は970hPaと衰えを見せたが大型で並みの勢力を保ち、24時頃渥美半島に上陸した。この台風による県内の総降水量は東部で約300mm~900mm、西部で約200mmとなり、奈良市では日降水量が160mmに達した。この値は気象台が現在地に移転した昭和28年以来第2位の記録である。

1回目の雨のピーク

 1回目の雨のピークは8月1日0時~3時にかけてで、台風は奈良県の南南東600km以上南に位置している。南東部の日出岳では2時に時間雨量87mmの猛烈な雨となった。県内の多くでは、時間雨量20mm以上の強い雨となった。
 この雨は南東気流型の大雨で地形性降雨が卓越するため、日出岳を中心とした南東部で雨量が多くなっている。この段階では所々で発雷している。

2回目の雨のピーク

 2回目の雨のピークは1日18時~20時頃で、台風は奈良県の南南東~南東150~200kmまで接近した。県内の所々で1時間雨量20mm・3時間雨量60mm以上の強い雨が降り、1回目のピークの2~3倍の降水量を記録した。この強い雨は、台風本体の雨雲によるものである。
日出岳の降水量グラフ

雨量の分布

雨量分布図  台風に向かって暖湿気が吹き込んだ県南東部で雨量が多くなっている。
 奈良盆地でも総雨量が300mm以上の相当の雨量である。

災害救助法の適用市町村

 天理市、御所市、田原本町、王寺町

被害状況の経過

1日22時頃 田原本町で大和川左岸破堤
1日23時頃 王寺町葛下川氾濫
2日08時 陸上自衛隊員113名、車両14台到着 大和川右岸堤防補強工事実施
3日02時10分 田原本町大和川左岸再破堤
3日06時30分 王寺町葛下川氾濫
4日02時 西吉野村やなせ地区の大規模地すべりにより丹生川せきとめられる
4日08時 再度、山地崩壊

被害状況(「災害の記録」奈良県 昭和58年3月より)

被害状況
 

参考:雨量から見た災害の目安

 年間降水量の1/20が注意報基準[災害]に近い値と言われている。
 年間降水量の1/10が1日の警報基準[重大な災害]に近い値であると言われている。
 この事例では、1日の警報基準の1.5倍~2倍の雨が県下全域で降った。→[甚大な災害]
 自分の住んでいる地域の年間降水量を知っていると、雨量予測値からどのような災害が発生する可能性があるのかイメージすることができる。

 奈良県内の主な観測所の年降水量の平年値
 奈良(1316.0mm)  針(1508.3mm) 大宇陀(1469.3mm)
 田原本(1246.3mm)上北山(2713.5mm) 風屋(2314.0mm)

 (参考資料:奈良県発行の「災害の記録(昭和58年3月)」)

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