強風による災害事例

★奈良県に強風をもたらした台風

 いずれも9月を中心とした秋に来襲している。

奈良県に強風をもたらした台風


★台風9807号による強風害(平成10年9月22日)

天気概況

平成10年台風第7号の経路図


 9月17日21時、フィリピンのルソン島の西の海上で発生した台風第7号は、22日四国の南海上を北上し、中型で強い勢力で13時すぎに和歌山県御坊市付近に上陸した。上陸後、スピードを速めながら北北東進して、14時に大阪市の南約30km地点、15時に彦根市の南西30km地点、18時に富山市付近を経て日本海に抜けた。
 この台風による強風のため、新庄町(現在の葛城市)で死者2名が出たのをはじめ、県下で負傷者87名の人的被害を出し、建造物被害、農業被害等多数発生した。
 なお、奈良で22日15時33分に西の風37.6m/sの最大瞬間風速を観測した。この値は、気象台が現地(奈良市)で観測を始めた1953年以来第3位の記録となっている。

文化財への被害

 台風第7号の影響で、奈良県の室生寺五重塔(国宝)をはじめ近畿各地で文化財に被害があった。
 奈良県で52件、京都府で5件、滋賀県で18件。

室生寺五重塔の被害

 22日16時頃、樹齢約650年の杉(直径約1.5m、高さ約45m)が根こそぎ倒れて南東にある五重塔(高さ約16m)に当たり、屋根の一部が崩れたり傾いたりした。

交通機関への被害

 電車:近鉄吉野線は倒木100本などが各地で線路を塞ぎ、吉野口~吉野駅間が終日不通となった。
 道路:十津川村小山手の国道425号線では22日夕方、幅40m・高さ50mにわたり土砂が崩れ、道路が通行止めとなった。

農業被害

 水稲、野菜、花き、果樹、畜産等の被害総額は130億円。中でも、特産の柿は壊滅的な被害を受けた。強風で果実が落下したり枝が折れるなどして、被害額は西吉野村で約22億円、五條市で約15億円などで被害総額は45億円にのぼった。
 水稲は県内の水田の約6割にあたる7000haで稲が倒れるなど、被害総額は約9億円に上った。

風と雨の状況

平成10年台風第7号の雨量分布図


 台風の中心が紀伊水道に達した頃から風雨が強まり、雨のピークは台風の中心が県内を通過前、風のピークは通過前後となる。

奈良:最大風速13.1m/s(南南西)、最大瞬間風速37.6m/s(西)

アメダス最大風速
15時:大宇陀 16m/s(南西)、五條 13m/s(南西)、 針 12m/s(南西)
14時:風屋 12m/s(南西)、上北山 6m/s(北北西)

消防署の風速データ
新庄町の西葛城本部では、14時59分に最大瞬間風速59.5m/sを観測

雨量の分布

 南西風が流入するパターンで、県の南西部や紀ノ川に沿って南西風が流入する場所で雨が多くなっている。

(参考資料:奈良新聞)

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