気候リスク管理

屋外水泳プール入場数と気温との関係

はじめに

気象庁では、季節予報をはじめとする気候情報をより多くの産業分野で有効に活用していただくための取り組みを行っています。この取り組みのひとつとして、週間天気予報より先の2週目の気温予測情報などを利用し、様々な産業分野における猛暑や寒波などの影響を軽減もしくは利用する「気候リスク管理」技術の普及を進めています。

大阪管区気象台では、上記の取組みの一環として、予測情報の利用価値の実証を目的として、大阪府内にある公共のプール施設の協力を得て、平成27~28年度に共同で気候リスク管理に関する調査を実施しました。

昨年度の調査の結果、週間のプール入場数と平均気温との関連性があり、2週目の気温予測情報を有効に活用できる可能性がわかりましたので、幅広い分野で「気候リスク管理」の参考としていただくために一例として示します。なお、気候リスク管理についての解説や、産業や農業分野における気候情報の高度利用に関して関連団体と共同調査を行った結果、気候リスク管理に有効なツールなどを以下にまとめています。

【気象情報を活用して気候の影響を軽減してみませんか?】 https://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/index.html


気候リスクを認識する ~プール入場数の傾向~

入場数データが蓄積されている8年分から平均(赤実線)を求めて時期的な変動傾向をみると、学校が夏休みに入る7月後半から8月上旬にかけて概ね横ばいで推移し、8月15日前後のお盆時期にピークを迎えています(図1)。また、入場数は年によって大きなバラツキがみられます。このバラツキの要因のひとつとして、当プールが屋外施設のため、気候の影響を受けている可能性が考えられます。

図1 各年の入場数及び過去8年間の平均(7日間移動平均値)


気候リスクを認識する ~プール入場数と気温を比べてみる~

大阪で8月に高温の2013年低温の2014年を比べると(図2)、入場数に大きな差があることが分かります(図3)。

また、気温の変動と入場数が連動している関係もみられます。

図2 平均気温平年差図

図3 プール入場数及び平均気温の推移(7日間移動平均値)


気候リスクを評価する ~プール入場数を見積もる~

入場数の見積もりが高い精度で出来れば、事前の対策が可能となります。まず、過去の週間入場数平均(図1の赤実線)から見積もりし、実数と比較したものを図4に示します。これは、これまでの経験からの見積もりとなります。また、気温との関連もみられるため、週間の平均気温と入場数の関係から見積もりしたものが図5となります。いずれもある程度の見積もりはできるものの、誤差幅が大きくなっています。

図4 過去の入場数平均からの見積もりと誤差

図5 平均気温からの見積もりと誤差



気候リスクを評価する ~プール入場数増減と気温との関係~

図6は平均気温の平年からの差(偏差)を横軸に、過去の入場数平均(図1の赤実線)からの増減の割合を縦軸に表しています。

入場数は一般的に想像されるとおり、平均気温が平年より高いときは増加し、低いときは減少する傾向となっています。

具体的には、平均気温が平年より1℃高いと約10%増加し、逆に1℃低いと約20%減少しています。

図6 入場数増減と平均気温偏差との関係



気候リスクを評価する ~実績と気温を組合わせて見積もる~

入場数の増減と気温との関係が分かったことから、過去の入場数平均(図1の赤実線)に図6の関係式を適用(補正)し、新たに見積もったときの実数との比較が図7となります。図4及び図5の見積もりと比べると明らかに誤差幅が小さくなり改善されています。入場数の事前予測には過去の実績データの平均は不可欠でありますが、さらに一定の精度を持つ気温予測を加味することによって見積もり誤差を減らせ、管理業務計画に活かせる可能性を示すものであります。

図7 平均気温偏差で補正後の入場数見積もりと誤差


調査内容についての問い合わせ先

大阪管区気象台 気象防災部 地球環境・海洋課(電話:06-6949-6653)