3.8μm帯差分画像の利用の手引き(霧域の検出)

はじめに

 雲頂を観測する衛星画像では、雲底が地面に接している場合(霧)と接していない場合(層雲)の区別ができない。このため、ここでは両者を一括して霧として扱っている。
 霧は赤外画像では暗灰色またはさらに暗い色調で表される。雲頂が低く周囲の地表(海表)面と温度差が小さいため、赤外画像で霧域を特定することは難しい。
 可視画像では灰~白色の雲域として見られ、霧域の雲頂表面は滑らかで一様である。厚い上層雲や中層雲に覆われていない限り、可視画像による霧域の特定は容易である。


下の図は2006年4月18日09時の赤外画像(左)と可視画像(右)である。

2006年4月18日09時の赤外画像 2006年4月18日09時の可視画像


この両画像を比較すると、下図のようにカムチャッカ半島の南東沖の海上に霧域が明瞭に検出できる。

霧域

 夜間の下層雲は赤外画像のみでは識別が難しい。3.8μm帯チャンネルとの差分画像(ここでは単に差分画像と呼ぶ)を併用すると識別できる場合が多い。
 差分画像は、3.8μm帯の温度から赤外の温度を差し引いて画像化したもので、差分が正の場合を暗く、負を明るく表している。3.8μm帯では、下層雲などのように水滴でできている雲に対しては赤外より温度を低く、一方、巻雲などのように氷の結晶でできている雲に対しては逆に赤外より高い温度を観測する。
 そのため、下層雲は明るく、薄い巻雲は暗く表される。この性質を利用して霧域の識別が可能となる。



 下図は、上記の事例の6時間前である4月18日03時の赤外画像(左)と差分画像(右)である。
2006年4月18日03時の赤外画像 2006年4月18日03時の可視画像


この両画像を比較すると、下図のようにカムチャッカ半島の南の海上に広がる霧域が明瞭に検出できる。

霧域