山形県の地勢・気候・コラム

山形県の地勢と気候

図1 山形県の地勢と観測地点
図中に観測所の位置を示す。赤丸は地方気象台、青丸は特別地域気象観測所(旧測候所)、緑丸はアメダス。(2017 年 1 月現在)

 山形県は、東北地方の南西部に位置し、県の北西側が日本海に面している。北は秋田県、東から南は宮城、福島の両県、南西は新潟県にそれぞれ隣接し、東西約100km、南北約160km、総面積は約9,323km2で全国第9位の広さである(図1)。

 東の県境には標高1000mから2000mに及ぶ奥羽山脈が南北に走り、山形県が日本海側の気候に属する要因となっている。また、中央部には県を内陸部(最上、置賜、村山)と沿岸部(庄内)に分ける形で、出羽山地・月山・朝日山地が南北に延びる。北の秋田県境には鳥海山(2236m)、南の新潟県境と福島県境には飯豊山地・吾妻連峰が連なる。山形県の母なる川である最上川は、福島県境の吾妻連峰に源を発し、置賜地方、村山地方を北流し、西に流れを変え、最上地方、出羽山地を横切り、庄内平野を流れ、酒田市で日本海に注ぐ。

 山形県の気候は、日本海に面する沿岸部と奥羽山脈西側の内陸部に大別される。沿岸部の庄内地方は海洋性気候の特徴を持ち、多雨多湿で冬季には北西の季節風が強い。内陸部は一日の最高気温と最低気温の差が大きい。山形市を中心とする村山地方の平野部は雨、雪ともに少ないが、山間部は多雪地帯となっている。新庄市を中心とする最上地方は冬の積雪が多く、米沢市を中心とする置賜地方は比較的穏やかな気候だが、山間部は多雪地帯となっている。



※図1は、国土地理院『数値地図50mメッシュ(標高)平成13年5月1日』および、国土交通省国土政策局『国土数値情報(行政区域データ)平成28年』をもとに、仙台管区気象台が加工・作製した。

「歴史的のあつさ」日本一の最高気温

「きのふ 歴史的のあつさ 華氏百五度全国一の高温 測候所でも驚く」、1933年(昭和8年)7月26日の山形新聞朝刊の見出しである(脚注)。本文には酷熱・殺人的な暑さの文字も見られる。前日(25日)、山形では日最高気温40.8℃を観測している。

図2 1933年7月25日06時の地上天気図

 図2は25日6時の地上天気図で、この日は熱帯低気圧が日本海を北海道方面に足早に進み、太平洋高気圧の張り出しと相まって、日本海沿岸では南西風が強まり、暖かく湿った空気が流れ込んでいた。南西の風に乗って新潟県から飯豊山地を越えた空気は、乾燥しながら山形県内に吹き下ろし、乾いた熱風と化した。いわゆるフェーン現象によってこの高温はもたらされたと考えられる。15時の気象観測値をみると、風上側の新潟では、気温33.0℃、湿度55%であったのに対し、風下側の山形では、気温40.6℃、湿度26%となっていた。山越えした空気が高温・乾燥化していたことがわかる。

 当時の加藤山形測候所長は、「前古未曾有、最新レコードで創設以来のものです。明治42年新潟測候所で三十九度一といふのがありましたが四十度突破は珍しいです。」とコメントしている。

 この山形の40.8℃は、日本の最高気温として長い間破られることはなく歴史的な気温であった。学校で習ったり、クイズ番組で耳にしたという人も少なくないと思われる。

 ところが2007年(平成19年)8月16日、埼玉県の熊谷と岐阜県の多治見で40.9℃を観測し、山形は74年間保持した最高気温日本一の座を譲ってしまった。この年、山形の気温は37.2℃が最高となっている。この年の8月は偏西風が日本付近で北に大きく蛇行し、日本付近では太平洋高気圧の北への張り出しが強かった。これは、日本の夏の平均気温が1898年の統計開始以来1番高くなった2010年の夏後半の大気の流れと似ている。なお、2013年(平成25年)8月12日、高知県の江川崎で41.0℃を観測し、日本記録を更新している。

 再び山形が最高気温日本一となる日は来るのか、可能性を考えてみよう。

最高気温の記録

全国の最高気温の高い方から20位までの記録をみると、4位に山形40.8℃、16位に酒田40.1℃、19位に鶴岡39.9℃と東北地方では山形県内の観測地点だけが入っている(2016年1月現在)。

日最高気温の順位をみると県内の3地点の1位と2位の差はいずれも2℃近くあるのに対し、江川崎、熊谷と多治見は39℃以上が並んでおり、記録的な高温の出現頻度が高いことがうかがえる(表1)。8月の最高気温の平年値も江川崎32.4℃、熊谷31.9℃、多治見33.7℃と山形の30.4℃に比べるとかなり高い。

表1 日最高気温の高い方からの順位

山形の夏の気温

図3 山形の夏(6月~8月)の日最高気温の3か月平均値
(1890年~2015年)
赤線は各年の値、青線は5年移動平均値、
直線は期間を通じての長期変化傾向を表す。
図4 山形の猛暑日(日最高気温35℃以上)の年間日数
(1890年~2015年)
青線は5年移動平均値、直線は期間を通じての
長期変化傾向を表す。
図5 山形県平均の日最高気温季節別平均値の変化量
(将来気候の現在気候との差)
IPCC温室効果ガス排出シナリオ(SRES A1B)に基づき、
気象庁の気候予測モデルで将来気候(2076-2095年平均)と
現在気候(1980-1999年平均)の差を計算。
赤棒グラフは現在気候と将来気候の差。
細線は現在気候、将来気候それぞれにおける年々変動の標準偏差。

 1890年から2015年までの山形の夏(6月~8月)の最高気温の推移(図3)をみると、統計期間1890~2015年で上昇傾向が明瞭に現れており(統計的な信頼度水準95%以上で有意)、近年は1993年の観測史上最低、2010年の同最高と変動が大きくなっている。また、日最高気温が35℃以上の猛暑日日数は、1990年代半ばから出現頻度が高くなっているのがわかる(図4)。

 将来はどうなるのか、地球温暖化予測情報第8巻(気象庁,2013)を元にした解析によると、山形県の21世紀末の日最高気温は、1年を通じて上昇するものの夏の昇温の度合いは他の季節と比べると小さくなっている(図5)。また、年々の月平均気温の変動が大きくなるとされ、猛暑日日数は、変化量は小さいながらも増加が予測されている。

日本一の可能性

 地球温暖化に伴い、平均気温が上昇傾向であること、近年気温の変動が大きくなっていることから、日本の最高気温の記録が更新される可能性は高いものの、気温のベースや高温の頻度をみると、山形が記録を更新する可能性は一見すると低くそうである。

 しかし、山形が記録的な高温となるには1933年と同様、フェーン現象がカギとなることは間違いなく(日本海側に位置し、2000m級の山々に囲まれた地形は可能性を秘めている!)、これから100年の間に、「台風が日本海西部を北上した影響で、日本海側ではフェーン現象により猛烈な酷暑となった。山形では41.X℃を観測、○○年ぶりに日本最高記録を奪還し、一世紀以上の時を隔て歴史的な暑さとなる。」というニュースを目にする日が来るかもしれない。

おわりに

 最高気温40.8℃を記録した1933年は山形県内の水稲の収量はやや良とされ、冷害年が続いた昭和初期のなかで、庄内では近年まれな大豊作との新聞記事があった。確かに高温は秋の実りをもたらすことが多いが、水稲のモミが成熟する登熟期の高温は品質低下の要因ともなる。また、果樹なども日焼けや着色不良で商品にならないという。農業の専門家は、このまま地球温暖化が進めば「サクランボ」の適地が山形県から北に移動するとも指摘する。地球温暖化は農業県の山形にとって切実な問題であり課題でもある。


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