空港気象ドップラーレーダー
空港気象ドップラーレーダーは、ドップラー効果を利用して飛行場周辺及び航空路周辺の降水域の降水と気流を観測できるレーダーです。
これにより、航空機の離着陸に危険を及ぼす大気下層の風の急激な変化(低層ウィンドシアー)を探知し、その情報をリアルタイムにパイロットに伝えることで低層ウィンドシアーを回避するなど、航空機の安全運航に有効に利用されます。
観測原理
空港気象ドップラーレーダーは、空中線から発射された電波(入射波)の降水粒子からの反射波(受信電波)により、降水強度とドップラー速度(電波のドップラー効果を利用)等を観測します。
ドップラー速度を観測するためには、従来の気象レーダーに比べて高い観測精度が要求されるため、数多くの最新技術が使用されています。
(レーダーの観測原理)
鋭い指向性をもった電磁波を空中線から発射します。
発射されたパルス状の電磁波が、その伝搬経路にある雨や雪(降水粒子)にあたるとあらゆる方向にエネルギーの散乱が起こります。
その散乱のうち、空中線方向に反射されたエネルギーを空中線で受信し、検出した信号の強さと周波数の変化から、降水強度や降水粒子の移動速度を推定します。
電磁波の送信から受信までの時間差と電磁波の伝播速度から目標までの距離を求め、空中線の向きによって、方位がわかります。
(ドップラー効果とは)
電波や音波等において、発生源と観測者との相対的な速度差によって、周波数が異なって観測される現象です。
観測者に対して発生源が近づく場合は周波数が高く、反対に遠ざかる場合は低く観測されます。
例えば、救急車が通り過ぎる時に、近づいてくるサイレンの音は高く聞こえ、遠ざかる時は低く聞こえます。これもドップラー現象によるものです。
この原理を利用して考えられたのが、気象ドップラーレーダーです。
低層ウィンドシアー
風の収束域が線状に形成されるシアーラインなど、風の急変する領域を総称して「ウィンドシアー」といいます。このウィンドシアーのうち高度が地表から概ね500m(1,600ft)までのものを「低層ウィンドシアー」といい、離着陸中の航空機の航行に大きな影響を与えることがあるといわれています。
マイクロバースト
雷雲に伴い上空から降下してくる冷たく重い空気の固まりが地表付近で弾けるように発散する現象をマイクロバーストといいます。その中央付近では激しい下降気流と地上付近では強い発散域となります。
航空機が着陸態勢にある時、その飛行速度は小さく、姿勢回復の余裕がない高度にあります。この時、向かい風により揚力の急激な増加により航空機は持ち上げられ、中央付近を通過したところで急激な追い風により揚力が減少し航空機の航行に大きな影響を与えることがあります。
ドップラーレーダー局舎
中部国際空港の北の端にひときわ高い塔がそびえています。これが中部航空地方気象台の空港気象ドップラーレーダーです。
空港気象ドップラーレーダーは平成15年度にレーダー局舎を建築、平成16年6月よりレドーム(レーダードーム)の据付や機器の設置調整を行い、中部国際空港の開港と同時に正式運用を開始しました。
レーダー局舎のレドームにはレーダー電波を発射・受信する空中線、2階には、レーダー電波の送受信装置やデータ処理装置等が設置されています。
観測成果
低層ウィンドシアーを検出するために取得された飛行場周辺の降水及び風についての観測データは、多様な目的において有効に利用できるよう多彩なデータに変換されます。
データは、空港内に配信され、航空気象予報業務、航空管制業務等に活用されます。
降水エコー強度
降水からの反射強度の大きさを、色によって14段階に表示しています。降水の強い領域及び弱い領域を容易に確認することが可能です。
ドップラー速度
降水のドップラー速度の大きさを、色によって14段階に表示しています。暖色系の色はレーダーから遠ざかる速度、寒色系の色はレーダーに近づく速度です。
低層ウィンドシアー
ウィンドシアー(マイクロバーストとシアーライン)の検出結果を表示しています。マイクロバーストは発散領域を意味する楕円シンボルで表示され、円内の数値は最大風速差(kt)を表します。 シアーラインは風の収束域の連続を意味する破線で表示され、矢羽根で風の状態を表します。
中部航空地方気象台:愛知県常滑市セントレア1丁目1番地
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