彦根地方気象台ホームページをご覧のみなさん、こんにちは、彦根地方気象台の鳩岡正喜といいます。私は地域防災に係る業務を担当しています。昨年4月から初めて彦根で勤務し、早いもので1年が経ってしまいました。
私は若いころ、登山(といってもクライミングや競技登山ではなく、ただの山歩きで、後の温泉とビールを楽しむ程度ですが・・・)が趣味で、一時は地元の山岳会で活動すると同時に、深田久弥の「日本百名山」の登頂を目指しましたが、時間、資金、体力、経験等々の関係で、結局登頂できたのは30数個と半分にも満たない数しかできませんでした。自分でも天気図が読めて、山小屋等で登山客に「天気」の解説ができるようになりたいと考えたことが、気象庁での勤務を志望した理由の一つでもあります。
登山を楽しむ者にとっては、「山の天気」は、とても気になる要素だと思われます。
そこで山の天気の特徴を簡単にお話したいと思います。
一般的に平地と比べて
〇「山の天気は変わりやすい」 ⇒ 一日の中でも刻々と変わりやすい。雨になることが多い山では、上昇気流(悪天の原因)と下降気流(好天の原因)が発生しやすく、風向きによって天気は大きく変化しやすい。
〇「気温が低い」 ⇒ 標高が100m上がるたびに、温度は約0.6℃ずつ低くなる。
伊吹山は標高が1377mであり、麓と頂上の標高差をおおよそ1200mとすると、1200m×(0.6℃÷100m)=7.2℃となり、気温は麓と比べて7℃位下がります。加えて風の影響があり、風速が1m増すごとに1℃ずつ体感温度が下がります。
以上の事は、登山をする者にとっては誰でも実感することだと思います。
間もなく待ちに待ったゴールデンウィークがやってきます。長期の休みを利用して登山を楽しまれる方も多いと思います。ゴールデンウィークは毎年決まった時期にやってきますが、この期間の天気は毎年同じというわけにはいきません。年によっては、好天に恵まれることもあれば、雨や嵐になり、折角の長期休暇が台無しになるという事も珍しくはありません。 また、4月後半から5月にかけては、年によっては、温帯低気圧の急速な発達により、台風並みの暴風が吹き荒れることがある「メイストーム(May storm)」別名(春の嵐)とよばれる現象が発生し、山や海が大荒れになったり、局地的に非常に激しい雨が降ったりし、落雷や降雹が起きることもあります。
右図に、「メイストーム」と「台風」の天気図を示します。メイストームと台風の違いですが、台風の場合は、中心が近づくと急激に風が強まりますが、メイストームの場合は低気圧の中心から離れたところでも強風となることです。
山で怖いのは、ケガや低体温症等の体調の乱れ、気象的要因(強(暴)風、大雨、雷、濃霧、降雪・積雪(なだれ))によって事故につながり、命を失いかねない事態となるおそれがあります。
これらを防ぐのは、体調管理や登山技術を磨くことは勿論ですが、地元気象台が発表する天気予報(週間天気予報も含む)や各種警報・注意報などの防災気象情報の最新版をラジオやインターネット等により頻繁に入手・チェックすることです。無理のない計画を立て、安全第一で登山に行くようお願いします。
出典:台風並みの暴風となる「春の嵐」「メイストーム」 気象情報や警報・注意報に注意して安全対策を(政府広報オンライン)
令和6年 4月
彦根地方気象台
鳩岡 正喜