金沢地方気象台長からのご挨拶

金沢地方気象台は石川県内を担当する気象台で、大雨をはじめ暴風・大雪・地震・火山などの自然現象を常時監視しながら、県内の19市町を対象とした警報・注意報を発表するほか、能登・加賀を対象とした天気予報や各種の防災気象情報を県民のみなさまや防災関係機関へ提供しており、防災官庁としての役割を担っています。
歴史は意外と古く、明治15年(1882年)1月1日に金沢市広坂で地上気象観測を開始した石川県地理課測量掛測候部が始まりで、その後、石川県立金沢二等測候所となり明治41年(1908年)には石川郡野村字泉野ホの部(現金沢市弥生町)へ移転、昭和13年(1938年)に国へ移管されたのち金沢地方気象台に昇格し、平成3年(1991年)から現在の金沢市西念(金沢駅西合同庁舎)で業務を行っています。今年で141周年を迎えることとなりました。
さて、近年わが国では⾬の降り⽅が局地化・集中化・激甚化し、毎年のように集中豪⾬や台⾵による⼤⾬災害に⾒舞われています。石川県ももちろん例外ではなく、令和4年8月4日に加賀南部を襲った集中豪雨による災害は記憶に新しいところです。この豪雨は日本海から本州にのびる停滞前線の影響によるものでしたが、石川県では台風による大雨を除くと、特に7月の梅雨末期から8月末の頃にかけて、これと同じパターンによる集中豪雨(線状降水帯が発現する場合もあります)が過去に幾度も発生しています。今後も、能登から加賀に至る県内のどこでも発現する可能性がありますので、豪雨による災害(具体的には、がけ崩れや土石流による土砂災害、平地を流れる河川の氾濫・低地の浸水や山間部を流れる小河川の氾濫による水害)のリスクがある地区にお住いのみなさまには、万が一を想定しての事前の備えが必要です。また、石川県は豪雪地帯でもありますので、冬期には大雪にも留意していかねばなりません。
地面に目を向けてみますと、県内には邑知潟断層帯や森本・富樫断層帯などのいくつかの活断層が確認されており、直下型地震の発生が危惧されるところです。日本海での大規模地震による津波も想定されており、海沿いの市町には津波災害警戒区域が指定されています。能登地方では依然として一連の地震活動が継続しています。震源域付近にお住まいのみなさまには気が休まらない日々が続いていることと思いますが、引き続き強い揺れへの備えをお願いいたします。
金沢地⽅気象台は、これらのさまざまな⾃然災害による⼈的被害や社会経済的影響を可能な限り軽減するために、県⺠のみなさまへ警報・注意報をはじめとする各種の防災気象情報を適時・的確にお伝えしてまいります。そして、県庁や県内の19市町、国の防災関係機関との連携を深め、また、報道機関等のご協⼒もいただきつつ、地域防災⼒を強化するための地域に根差したきめ細やかな取り組みを職員一丸となって進めてまいります。
令和5年4月1日 金沢地方気象台長 金子 法史