国際貢献

国際貢献にむけた取り組み

高層気象台は、高層大気の観測を100年以上続けている、世界でも極めて稀な観測地点です。この長期間にわたる高精度な観測により、様々な国際貢献が行われています。例えば、高層気象台は1923年に世界で初めてジェット気流を発見した他、南極のオゾンホール発見の際のオゾンデータの検証を行っており、世界規模の大気の流れであるブリューワー・ドブソン循環の発見にも最初期のオゾンゾンデの観測データが使われています。

このように、観測データや観測・解析の技術を世界各国の気象技術者と共有し、世界の気象観測・気候監視に貢献するため、現在は以下の国際組織に所属しています。

WMO(世界気象機関)

WMO(World Meteorological Organization: WMO)は国連の専門機関の一つとして、世界の気象業務に必要な企画・調整活動を行っており、世界で200か国近くが加盟しています。観測の方法や基準など、世界で共通のルールが定められている他、新たな基準の作成のための調査や検討が行われています。

高層気象台はこれまでWMOの活動に度々協力しており、1993年には高層気象台を会場として、世界各国のラジオゾンデを集結させ同時に観測を行うラジオゾンデ国際比較観測を行っています。

WMOラジオゾンデ国際比較観測

WMOラジオゾンデ国際比較観測

WMO奨学生の見学

WMO奨学生の見学

GUAN(GCOS高層観測網)

GUAN(GCOS Upper-Air Network)は、気候変動監視に必要な上空大気の観測を行うことを目的として、WMOやGCOS(全球気候観測システム)などの複数の組織が共同で設立した組織です。世界で約800地点ある高層気象観測地点のうちから約150地点が選ばれており、日本では高層気象台を含めて6地点あります。

気候変動は、同じ場所で長期間観測を続けなければ、その変化がわかりません。特に上空の大気の観測を長期間継続している地点は限られており、GUAN地点の観測データは地球規模の気候変動の様子を把握するために重要なものとなっています。

札幌、館野上空の気温トレンドグラフ

札幌、館野(高層気象台)上空の気温トレンドグラフ
(縦軸は気温の変化、横軸は年)
500hPaでは温暖化しているが、より上空の100hPa、50hPaでは寒冷化が進んでいる。
高層気象台よりも札幌の方が、上空の寒冷化がより顕著であることがわかる。

GRUAN

GRUAN(GCOS Reference Upper-Air Network )は、気候観測を行うGUANの中の基準(Reference)となる地点で、気候変動をより精密に監視・評価するため、その時代で可能な最高の技術を用いた高精度な観測を長期間にわたり継続することを目的とした組織です。観測精度を向上させるため、観測器の比較、点検装置やデータ解析アルゴリズムの開発も含めた調査・研究も継続的に行っています。また、毎年国際会議が開かれ、最先端技術の情報交換も行っており、2012年は気象庁/高層気象台が会場となりました。

高層気象台は上空の大気の精密な観測を100年以上継続しており、このような地点は世界的に見ても殆どありません。アジア付近では唯一となるこの観測データは、世界規模の気候監視に極めて重要なものとなっています。

GRUAN国際会議(ICM-4)

GRUAN国際会議(ICM-4)

GRUAN観測地点

GRUAN観測地点(2020年)

BSRN

BSRN(Baseline Surface Radiation Network)は、1990年に世界気候研究計画(WCRP)/全球エネルギー・水循環観測計画(GEWEX)の下に設立された、高精度の世界的な地上放射観測網です。2004年からは全球観測システム(GCOS)の地上放射観測網の役割も担っており、現在世界で約60地点が運用しています。BSRNの目的は、気候変動の主要因である地表面におけるエネルギー収支の正確な把握・監視や、気候変動予測モデル及び衛星観測の検証に貢献することです。高層気象台はBSRN設立初期の1996年から参加し、地表面に入射する放射要素に加え、世界で約10地点しか行われていない地表面で反射・射出される放射要素(上向き放射観測)も実施しており、重要な観測点となっています。

日射放射計の国際比較観測

日射放射計の国際比較観測

精密日射放射観測装置

精密日射放射観測装置

GAW

GAW(Global Atmosphere Watch)は、地球規模の環境監視・予測に必要なオゾン、紫外線、エーロゾルなどの観測行うことを目的とした計画です。 高層気象台は、オゾン量を観測するドブソン分光光度計のアジア地区基準器を管理し、各国の測器と比較観測を行うことで、同地区におけるオゾンの観測精度向上に貢献しています。

ドブソン分光光度計アジア地区比較

ドブソン分光光度計アジア地区比較

紫外線観測国際比較

紫外線観測国際比較

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