高層気象台彙報 第74号

収録内容

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高層気象台彙報 第74号 2016年3月
題  目 著  者
まえがき 安 藤 正
口絵 居島 修
明星電気製RS-11G およびiMS-100 ゾンデのGRUAN データプロダクト(GDP)の作成 [要旨] 星野 俊介・木津 暢彦・古林 絵里子
ラジオゾンデの歴史的変遷を考慮した気温トレンド(第2報) [要旨] 古林 絵里子
分光型全天日射計(MS-712)を用いた太陽光スペクトルの近赤外域における試験観測 [要旨] 居島 修・高野 松美

要旨一覧

題目
明星電気製RS-11G およびiMS-100 ゾンデのGRUAN データプロダクト(GDP)の作成
著者
星野 俊介・木津 暢彦・古林 絵里子
要旨

高層気象台はTateno の名称で2009 年にGRUAN(GCOS 基準高層観測網)サイトとして登録され,RS-11G(明星電気製)及びRS92-SGP(ヴァイサラ社製)を使用してラジオゾンデ観測を行い, その高層気象観測データおよびメタデータをGRUAN リードセンター(LC)に送信している.GRUAN では, (1)データのトレーサビリティが確保されている, (2)不確かさの情報が付加されている,(3)データの特性の理解や再処理のために必要なメタデータが付加されている,(4)処理方法が査読付き論文などで公開され評価を受けている,といった基準を満たす高精度のデータであるGRUAN データプロダクト(GDP)を作成・公開しているが, このGDP 作成処理についてはゾンデの種類ごとに担当するデータ処理センター(PC) が決められており,RS92-SGP を用いた観測についてはLC が, RS-11G を用いた観測についてはTateno が担当することになっている.本稿では,このRS-11G の観測データに基づくGDP 作成の流れの概要を解説するとともに, 今後の高層気象台としての取り組みについて紹介する.

題目
ラジオゾンデの歴史的変遷を考慮した気温トレンド(第2報)
著者
古林 絵里子
要旨

ラジオゾンデによる高層気象観測データを気候変動監視目的として長期的に利用する場合,ラジオゾンデの変更に伴い観測データに「段差」が生じる可能性があり,均質なデータとして取り扱うためにはその「段差」を補正する必要がある.高層気象台ではこれまで,観測に使用されるラジオゾンデが変更されるたびに新旧ラジオゾンデの同時飛揚による比較観測を実施してきており,その比較観測結果から気温データにおける「段差」の補正を試みている(上里ほか:2008).本報告では,上里ほか(2008)と同じ手法を用いて最新のRS-11G 型GPS ゾンデによる比較観測結果を含めた補正値を作成し,これをもとに高層の気温トレンド解析を行った.補正を行うことにより,成層圏での低温化傾向,対流圏での高温化傾向が顕著となり,補正前と比べて30hPa では約-0.15℃/10 年,850hPa では約+0.1℃/10 年変化率が大きくなった.また,作成した気温データセットの検証のため,気象庁の長期再解析データと比較した結果,成層圏の気温変化率はおおよそ一致していたが,対流圏の気温変化率は本報告で作成した気温データセットの方が大きい値を示した.

題目
分光型全天日射計(MS-712)を用いた太陽光スペクトルの近赤外域における試験観測
著者
居島 修・高野 松美
要旨

分光型全天日射計(MS-712)は,太陽光スペクトルの近赤外域のうち,900~1700nm の波長範囲を観測する測器である.本稿では,MS-712 について,以下の調査を行った.1) 温度特性及び入射角特性の把握MS-712 の温度特性には波長依存性がみられ,全波長範囲における温度特性は20℃を基準とした場合,-13.0℃では0~+4%,1.3℃では-1~+2%,13.8℃以上では±0.5%であった.入射角特性は,天頂角60~65°において,実際の光の強さの0.94 倍であった.なお,入射角特性には波長依存性はみられなかった.2) 測器常数の決定及び測器感度変化の把握標準光源による校正により測器常数を決定した後,測器常数の変化を把握するため,外部標準ランプ点検を定期的に実施し,日々の測器常数を決定した.測器感度は,2013 年12 月から2016 年2 月までの2 年3 ヶ月の期間において,2014 年は安定に推移し,2015 年は季節変化がみられたが,全期間では-1.2~+0.3%の範囲内に収まっていた.3) 近赤外域における試験観測2015 年1 月,4 月,7 月,10 月の快晴日において,太陽光スペクトルの近赤外域における変化特性を調査した.太陽天頂角の変化に伴う直達日射照度(1000nm)の減衰する割合は,1 月と7 月ではほぼ等しく,減衰する割合が大気中の水蒸気量に依存していないことを確認した.また,エーロゾルの光学的厚さの増加に伴い散乱波長別日射照度が増加すること,さらに,エーロゾルの光学的厚さ(862nm)と散乱率(1000nm)に高い相関があることを確認した.