ラジオゾンデによる高層気象観測の変遷

ラジオゾンデについて

高層気象台では、ラジオゾンデを用いた高層気象観測を1944年から定常的に行っています。ラジオゾンデは電子技術の発展と共に改良が行われてきました。

このページでは、過去に高層気象台で使用されたラジオゾンデを紹介します。

中央気象台1号型ラジオゾンデ

最初のラジオゾンデは、中央気象台1号型と呼ばれ、空ごう気圧計、バイメタル温度計と毛髪湿度計の器械的変化を送信周波数の変化に換えて測定します。

中央気象台1号型ラジオゾンデは搬送周波数変化式のため、気圧、気温、湿度に1つずつ送信器があって、地上の短波受信機もそれぞれ専用のものを3台必要としました。センサ等の収容箱には軽い桐箱が利用され、電源は注液式の電池が使用されました。

中央気象台1号型ラジオゾンデの写真

中央気象台1号型ラジオゾンデ

モールスコード送信方式のラジオゾンデ

モールスコード送信方式のラジオゾンデの計器部はセンサ部と符号発生部で構成されます。計器部は、空ごう気圧計、バイメタル温度計および毛髪湿度計の器械的変化をペン機構で拡大し、モーターで回転する接点板上をペンが移動すると要素の値に応じた所定のモールス符号を発生する仕組みになっており、上空の気圧、気温、湿度の観測値は、このモールス符号を受信して求めます。電源は、初め注液式の電池を使用しましたが、その後注水式の電池に移行しました。

モールスコード送信方式のラジオゾンデは1949年から1981年まで30年以上に渡って使用されました。また、当初は402MHz帯の周波数を使用していましたが、1957年頃から方向探知機で自動追跡が可能な周波数1,680MHzを使用するようになりました。

モールスコード送信方式のラジオゾンデの写真

モールスコード送信方式のラジオゾンデ

エコーゾンデ

エコーゾンデは、高層風の観測精度向上のために開発されたもので、符号式ラジオゾンデの計器部と受信器および送信器等で構成されます。地上装置から発射された送信パルスを受信器で受信し、送信器からパルス電波を返信することで、電波の往復時間から地上アンテナとゾンデ間の距離(直距離)を測定します。高層風の観測は、この直距離と方向探知機の角度からエコーゾンデの位置を求めて行います。

エコーゾンデは、1962年から1981年まで、主に09時の観測時に使用されました。

エコーゾンデの写真

エコーゾンデ

変調周波数変化式レーウィンゾンデ

変調周波数変化式レーウィンゾンデは、計算機による自動処理が可能なゾンデとして開発されました。センサは、気圧、気温、湿度の変化を抵抗または静電容量の変化として測定し、周波数変換回路で周波数に変換され、搬送周波数1,680MHzを変調して地上に伝送されます。地上では、パラボラアンテナを用いた自動追跡型方向探知機でレーウィンゾンデを追跡・受信して、周波数を抵抗または静電容量に変換し、気圧、気温、湿度を観測するとともに高層風も観測します。

RS2-80型レーウィンゾンデ

気圧センサは抵抗接点式空ごう気圧計を、気温センサはサーミスタ温度計を、湿度センサにはカーボン湿度計を使用し、気象要素の変化をすべて抵抗の変化として測定します。

RS2-80型レーウィンゾンデによる高層気象観測は、1981年3月から1992年9月まで行われました。

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RS2-80型レーウィンゾンデ

RS2-91型レーウィンゾンデ

気圧センサは静電容量変化式空ごう気圧計で、気圧の変化を静電容量の変化として測定します。気温センサはサーミスタ温度計で、気温の変化を抵抗の変化として測定します。また、湿度センサは静電容量型高分子膜湿度計で、湿度の変化を静電容量の変化として測定します。

RS2-91型レーウィンゾンデによる高層気象観測は、1992年10月から2009年11月まで行われました。

RS2-91型レーウィンゾンデの写真

RS2-91型レーウィンゾンデ

RS92-SGP型GPSゾンデ

気圧センサはシリコンセンサで、気圧によるシリコン膜の変化を静電容量の変化として測定します。気温センサは静電容量式ワイヤ温度計で、湿度センサは薄膜静電容量式加熱2センサ湿度計で、2つのセンサを交互にヒーターで加熱・除湿しながら、湿度の変化を静電容量の変化として測定します。風向と風速は、GPSの測位情報から算出します。

このRS92-SGP型GPSゾンデの使用開始によって、これまで必要であった方向探知機が不要となり、GPS衛星による精密な位置測定が可能となりました。

RS92-SGP型GPSゾンデによる高層気象観測は、2009年12月から2020年2月まで行われました。

RS92-SGP型GPSゾンデの写真

RS92-SGP型GPSゾンデ

RS-11G型GPSゾンデ

気圧計は搭載しておらず、GPSの測位情報をもとに、気温・湿度を用いて気圧を求めます。気温センサはサーミスタ温度計で、気温の変化を抵抗の変化として測定します。また、湿度センサは静電容量型高分子膜湿度計で、湿度の変化を静電容量の変化として測定します。 風向と風速は、GPSの測位情報から算出します。

このRS-11G型GPSゾンデでは小型・軽量化が行われており、観測終了後は従来のラジオゾンデと比べてより安全に降下します。

RS-11G型GPSゾンデによる高層気象観測は、2013年7月から2018年2月まで行われました。

RS-11G型GPSゾンデの写真

RS-11G型GPSゾンデ

iMS-100型GPSゾンデ

気圧計は搭載しておらず、GPSの測位情報をもとに、気温・湿度を用いて気圧を求めます。気温センサはサーミスタ温度計で、気温の変化を抵抗の変化として測定します。また、湿度センサは静電容量型高分子膜湿度計で、湿度の変化を静電容量の変化として測定します。 風向と風速は、GPSの測位情報から算出します。

iMS-100型GPSゾンデによる高層気象観測は、2017年9月から現在も引き続き行われています。

iMS-100型GPSゾンデの写真

iMS-100型GPSゾンデ

RS41-SG型ラジオゾンデ

気圧計は搭載しておらず、GPSの測位情報をもとに、気温・湿度を用いて気圧を求めます。気温センサは白金抵抗体で、気温の変化を抵抗の変化として測定します。湿度センサは薄膜静電容量式で、湿度の変化を静電容量の変化として測定します。風向と風速は、GPSの測位情報から算出します。

RS41-SG型GPSゾンデによる高層気象観測は、2020年6月から現在も引き続き行われています。

なお、RS41-SG型GPSゾンデの派生モデルとして、気圧計を搭載したRS41-SGP型GPSゾンデがあります。気圧センサはシリコンセンサであり、気圧によるシリコン膜の変化を静電容量の変化として測定するもので、2020年2月から2023年3月まで調査観測に使用していました。

RS41-SG型ラジオゾンデ

RS41-SG型GPSゾンデ

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