特殊ゾンデ観測

特殊ゾンデ観測について

特殊ゾンデは、通常のGPSゾンデにはない特別のセンサを搭載したラジオゾンデのことで、オゾンや放射能などの気象要素を観測するものや、気温や水蒸気量を高精度に観測するものなど様々な種類があり、主に調査や研究のために使用されています。

現在高層気象台では、気温基準ゾンデ(MTR)、水蒸気基準ゾンデ(SKYDEW)を使用しています。また、過去には水蒸気基準ゾンデ(CFH)、放射能ゾンデ、輻射ゾンデ、気象電気ゾンデ 、露点ゾンデが使われていました。

特殊ゾンデ観測の飛揚前写真

特殊ゾンデ観測の飛揚前写真

気温基準ゾンデ(MTR)について

気温基準ゾンデ(MTR)は気温計測に特化したゾンデであり、通常のGPSゾンデと比べて分解能の高い気温観測が可能です。タングステンを用いた温度センサにアルミコーティングを施して日射の影響を低減し、気温を0.01℃単位で1秒間に16回測定できます。

高層気象台では毎年2回観測を行っています。これまで国際比較観測や研究用の観測に用いられ、GPSゾンデの気温データ品質の向上に役立てられています。

なお、観測の際はGPSゾンデを取り付け、GPSの測位情報などから気圧や高度を算出するとともに、MTRによる観測データと併せて送信する発信機としています。

気温基準ゾンデ(MTR)[発信機:RS-11G]

気温基準ゾンデ(MTR)[発信機:RS-11G]

気温基準ゾンデ(MTR)の飛揚

気温基準ゾンデ(MTR)の飛揚

水蒸気基準ゾンデ(SKYDEW)について

水蒸気基準ゾンデ(SKYDEW)は、大気中の水蒸気量を高精度で測定する鏡面冷却式露点計を搭載しているゾンデです。この露点計の内部には鏡面があり、その鏡面を冷却して露・霜ができる温度から、露点・霜点温度が求められます。また、SKYDEWに接続したGPSゾンデの気温・気圧を使うことで、水蒸気量が分かります。冷却にはペルチェ素子を用いるため、冷媒物質が不要で環境負荷が少ないという特徴があります。

高層気象台では毎年2回観測を行っています。また、これまで国際比較観測や研究用の観測に用いられ、GPSゾンデの湿度データ品質の向上に役立てられています。

なお、観測の際はGPSゾンデを取り付け、GPSの測位情報などから気圧や高度を算出するとともに、SKYDEWによる観測データと併せて送信する発信機としています。

水蒸気基準ゾンデ(SKYDEW)[発信機:RS-11G]

水蒸気基準ゾンデ(SKYDEW)[発信機:RS-11G]

水蒸気基準ゾンデ(SKYDEW)の飛揚

水蒸気基準ゾンデ(SKYDEW)の飛揚

その他の特殊ゾンデ

水蒸気基準ゾンデ(CFH)

水蒸気基準ゾンデ(CFH)はコロラド大学で開発・改良された鏡面冷却式露点霜点計です。冷媒(CHF3=トリフルオロメタン)により鏡面を冷却し、鏡面に露又は霜を生成させて露点又は霜点を測定します。CFHは地表から成層圏までの水蒸気量を高精度で観測できます。

高層気象台では、2015年から2021年まで使用していました。

水蒸気基準ゾンデ(CFH)

水蒸気基準ゾンデ(CFH)

放射能ゾンデ

放射能ゾンデは、大気中の放射能(β線とγ線)の強度を観測するもので、水爆実験等に伴う大気中の人工放射能の監視を行うために開発されました。

高層気象台では、1959年から2006年まで使用していました。

放射能ゾンデ(RC-94型)

放射能ゾンデ(RC-94型)

輻射ゾンデ

輻射ゾンデは、大気循環や大気物理の重要な因子である大気中の輻射(赤外放射)を観測するために開発されました。

高層気象台では、1965年から1977年まで使用していました。

輻射ゾンデ(R69型)

輻射ゾンデ(R69型)

気象電気ゾンデ

地球表面と電離層の間には大きな電位差があり、これは雷活動とも関連があります。気象電気ゾンデは大気中の電気伝導率や電流の強さを測定するために開発されました。

高層気象台では、1957年から1977年まで使用していました。

気象電気ゾンデ(E70)

気象電気ゾンデ(E70)

露点ゾンデ

成層圏にある水蒸気は、オゾン層などの光化学反応に大きく影響します。露点ゾンデは、露点温度を測定し、成成層圏の微量な水蒸気量を観測するために開発されました。

高層気象台では、1957年から1977年まで使用していました。

露点ゾンデ(H70型)

露点ゾンデ(H70型)

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