観測精度向上に向けた取り組み

概要

大気を観測する場合、使用する観測器の機種の違いや個体差により、観測データに僅かな違い(器差)が生じます。高層気象台ではこの器差をできるだけ小さくし、より正確な観測データを取得するための様々な研究・開発・工夫を行っています。

このページでは、上空の大気の観測を行うGPSゾンデと上空のオゾンの観測を行うオゾンゾンデについて、高層気象台で行っている観測精度向上に向けた取り組みを紹介します。

GPSゾンデの観測データの精度向上について

GPSゾンデの観測精度を向上させるために、高層気象台では「湿度約0%環境での器差の測定」「湿度約100%環境での器差の測定」を行う装置を開発し、観測前にGPSゾンデ1台毎に低湿度下(約0%)及び高湿度下(約100%)でのGPSゾンデの器差を調べています。

0-100

低湿度(約0%)及び高湿度(約100%)での器差の測定を行う装置

また、様々なラジオゾンデを連結して同時に観測を行い、GPSゾンデの機種毎の特性を調査しています。このような様々な調査結果を元にデータ解析のアルゴリズムを改良し、より高精度な再解析データ(GDP:GRUAN Data Product)を作成しています。

2種類のGPSゾンデを同時に飛揚した場合の、通常の観測データと再解析結果(GDP)を下のグラフに示します。左側のグラフでは、2つのGPSゾンデで湿度の観測結果に違いがあることがわかります。これに対し、再解析結果(GDP)の右側のグラフでは、2つのGPSゾンデの湿度が非常に良く一致しており、観測データの精度が向上し、大気の状態をより正しく表現できていることがわかります。

比較観測写真

2台のGPSゾンデの同時観測

比較観測グラフ

黒線と赤線が2台のGPSゾンデの湿度、緑線が湿度の差
左の通常の観測結果に比べ、右の再解析結果は良く一致している

再解析データ(GDP)は、気温、風速、風向、高度、気圧についても同様に高精度なものとなっています。このような再解析データ(GDP)やGPSゾンデの詳細な技術資料は、以下のGRUANのホームページで公開されています。

なお、この高精度な解析を行うアルゴリズムは、2023年7月に気象庁における高層気象観測のデータ処理に採用されたほか、海外の観測所にも採用されており、国内・国外の観測精度の向上に貢献しています。

オゾンゾンデの観測データの精度向上について

上空のオゾンの観測を行うオゾンゾンデは、ポンプを使って空気を取り入れることで大気中のオゾン濃度を測定します。一方ポンプの性能はオゾンゾンデ毎に個体差があり、特に気圧が低い場所ほど個体差が大きくなります。この個体差を調べるため、高層気象台では地上気圧(約1000hPa)から超低圧(3hPa)まで減圧してオゾンゾンデのポンプ性能を点検するポンプ効率測定装置を開発しました。

ポンプ効率測定装置

ポンプ効率測定装置

ポンプの性能を測定した結果の例を、下のグラフに示します。このグラフでは、気圧が低いほどポンプの性能が低く、気圧5hPaの環境では地上気圧と比べて約30%性能が低下していることがわかります。このポンプの性能を表す曲線は、ポンプ1台1台異なります。

高層気象台では、このポンプ1台ごとの性能の測定結果を観測データの解析に利用することで、気圧や個体差の影響を除去した、非常に精度の良いオゾンの観測データを取得しています。

オゾンゾンデのポンプ性能の調査結果

オゾンゾンデのポンプ性能の調査結果
グラフ中の円が測定値、横軸はポンプの性能値で数値が高いほど性能が低い

オゾンゾンデの観測データ、ポンプ効率測定装置の技術資料は、以下の場所から閲覧できます。

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