ドブソン分光光度計の測定原理と自動化システム

ドブソン分光光度計の測定原理

ドブソン分光光度計は、地上に到達する紫外線のうち、オゾンに吸収されやすい紫外線(図1の波長の短い光:以下UV1と呼称)とオゾンに吸収されにくい紫外線(図1の波長の長い光:以下UV2と呼称)の強度比を測定することにより大気中のオゾン量を測定します。 2つの紫外線の強度比が大きく測定されるほど大気中のオゾン量が多く、2つの紫外線の強度比が小さく測定されるほど大気中のオゾン量は少ないことを示します。

強度比の測定は、光学くさびという光の照度を減少させる機器を用いて、UV2の照度のみを減少させUV1と同じ照度にすることで行われます。 光学くさびにより、UV2をどれだけ減少させたのかが強度比の測定値となります。

2つの紫外線の照度は、2つの入射口から入ったUV1とUV2を回転セクターで交互に取り出し、それぞれの紫外線の照度を光電子増倍管で測定します。観測には下表の3つの波長組を使用しています。

表1.使用する紫外線の波長組(観測には下表の3つの波長組を使用しています)
波長組UV1:S2スリットUV2:S3スリット
A 305.5 325.0
C 311.5 332.4
D 317.5 339.9

ドブソン分光光度計の測定原理の図

図1.ドブソン分光光度計の測定原理

ドブソン分光光度計の自動化システム

ドブソン分光光度計は、従来、手作業で行われていたため、作業量も多くまた、手動作業による測定誤差も多少存在していました。 高層気象台ではそれらの問題を解消する自動化システムの開発を行い、観測また測器点検などの作業をパーソナルコンピュータによる自動制御に置き換え、グラフ画面での視覚的な測定や点検を可能としました。 更に情報技術の進歩に合わせ、Windowsパソコンを導入したプログラムの開発及び各種インターフェースによる測器の制御技術の開発と改良を行いました。

このシステムの主な自動化機能は、紫外線強度比測定用Rダイアルの制御、波長組選択のQレバーの制御、及び光電子増倍管の信号のリアルタイム処理、Rダイアル角度へのフィードバック制御などです。 測器内の電子基板については、アナログアンプの改良と器温の測定精度を向上させたさまざまな改良を施しています。 その他、Windowsのネットワーク機能を利用し、観測データの共有化と管理のシステムを向上させ、また世界の気象機関へリアルタイムにデータを報告することも可能になり、オゾン層監視のための即時的な研究に利用されています。

これらの自動化システムにより、現在は観測作業の省力化と高品質の観測データを取得することが可能となっています。 高層気象台で開発されたドブソン分光光度計の自動化システムは、国内のオゾン観測官署だけでなく、米国や韓国またオーストラリアなど国外においても導入されています。

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