赤外放射観測

測定の原理と理論

すべての物質は、その絶対温度の4乗に比例した放射(電磁波)を放出しています。 地球の表面や大気の温度は太陽の表面温度に比べて低いので、太陽放射より長い赤外領域の波長の放射(赤外放射)を放出します。 地球および大気から放出される赤外放射は、そのエネルギーのほとんどが3-100μmの領域に集中しています。

赤外放射を観測する赤外放射計は、この放射エネルギーを熱エネルギーに変換して熱電対により測定する熱型放射測器で、 赤外域の広い波長領域にわたり、波長依存性の少ない高精度な測定が可能です。

観測の種類

下向き赤外放射量
大気中の空気分子・雲・炭酸ガス等から放射される長波(赤外)放射を大気放射といい、 このうち地表方向へ向かう成分を下向き赤外放射といいます。 水平面で受けた単位面積あたりの下向き赤外放射エネルギーを下向き赤外放射量といいます。
上向き赤外放射量
地表面から放射され、天空方向へ向かう長波(赤外)放射を上向き赤外放射といい、 水平面で受けた単位面積あたりの上向き赤外放射エネルギーを上向き赤外放射量といいます。

観測の方法

観測は赤外放射計を用いて行います。受光面は、風雨などからの防護及び風による受光面温度の乱れを防ぐためシリコンドームに覆われており、 ドームの防塵・防霜用として通風ファンが取り付けられています。 また、ドームの内面は、赤外領域の放射のみを測定するため、短波長の光(日射)をカットする金属蒸着による干渉フィルターとなっています。

下向き赤外放射量
水平に設置した赤外放射計に、遮蔽リングや遮蔽ディスクなどの直達日射を遮蔽する装置を取り付けて、直達日射による影響を除いて観測します。
上向き赤外放射量
地上1.5mから2mの高さのポールに赤外放射計を下向き水平に設置して観測します。
下向き赤外放射量の観測の写真

下向き赤外放射量の観測

上向き赤外放射量の観測の写真

上向き赤外放射量の観測

観測の結果

赤外放射観測データは、BSRNの要求を満たすため、毎秒サンプリングで24時間連続して取得され、品質がチェックされます。 つくば(高層気象台)における観測結果の例を以下に紹介します。


つくばにおける赤外放射量月平均値のグラフ(2021年)

つくばにおける赤外放射量月平均値のグラフ(2021年)

つくばにおける赤外放射量年平均値の長期変化傾向のグラフ

つくばにおける赤外放射量年平均値の長期変化傾向のグラフ

このページのトップへ