日射観測

測定の原理と理論

すべての物質は、その絶対温度(単位:K(ケルビン))の4乗に比例した放射(電磁波)を放出しています。 日射とは、表面温度が約6000Kと高温の太陽を源とする太陽放射の内、全エネルギーの約97%を占める0.29-3μmの波長領域の放射であり、 特に人間の目で感じることのできる可視光の領域にエネルギーの約50%が集中しています。 日射を観測する放射測器は、この日射の持つ放射エネルギーを他のエネルギー形態(熱・電気等)に変換するセンサーを用いて測定しています。

高層気象台で使用している放射測器は、放射エネルギー観測用測器と分光放射観測用測器に大別されます。 放射エネルギー観測用測器のセンサーは、放射エネルギーを熱エネルギーに変換する熱電対が用いられています。 このセンサーは、温度差のある2つの金属を接触させた時に発生する起電力を利用しています。 熱電対を用いた放射測器は、波長依存性が小さいため、広い波長領域の放射を測定する直達日射計や赤外放射計などに使用されます。 分光放射観測用測器のセンサーは、物質が光を吸収して電子を放出する光電効果を利用したフォトセンサーが用いられています。 このセンサーは、熱電対に比べて感度が高く、応答速度が速いですが、波長によって感度が異なるため、狭い波長領域のサンフォトメータに利用されています。 また、分光放射計には、シリコンフォトダイオードアレーが使用され、短時間に波長別放射照度を測定することができます。

熱型放射測器の概念図

熱型放射測器の概念図

量子型放射測器の概念図

量子型放射測器の概念図
(フィルター型サンフォトメータ)

観測の種類

直達日射観測
太陽光球面から直接地上に到達する太陽放射を直達日射といい、 太陽光線に対して垂直な面で受けた単位面積あたりの直達日射エネルギーを直達日射量といいます。
散乱日射観測
大気成分により散乱・反射して天空の全方向から届く太陽放射を(天空)散乱日射といい、 水平面で受けた単位面積あたりの散乱日射エネルギーを散乱日射量といいます。
全天日射観測
天空の全方向からの太陽放射を全天日射といい、水平面で受けた単位面積あたりの全天日射エネルギーを 全天日射量といいます。
反射日射観測
地上に到達した太陽放射のうち、地表面で反射して天空方向へに戻るものを(地表)反射日射といい、 水平面で受けた単位面積あたりの反射日射エネルギーを反射日射量といいます。

観測の方法

観測は、直達日射計と全天日射計を用いて行います。日射計は、太陽放射を受け取り熱に変換する受光面と熱的基準点との温度差を、 熱電対により熱起電力として検出することで日射量を測定する構造になっています。 受光面は、風雨などからの防護及び風による受光面温度の乱れを防ぐためガラスドームに覆われており、またガラスドームの防塵・防霜用として通風ファンが取り付けられています。


直達日射観測
太陽追尾装置に直達日射計を搭載し、太陽を自動追尾しながら観測します。
散乱日射観測
水平に設置した全天日射計に直達日射を遮蔽する遮蔽リングや遮蔽ディスクなどの装置を取り付けて観測します。
全天日射観測
水平に設置した全天日射計により観測します。ただし、全天日射計は太陽の高度角や方位角により誤差を生じることが知られています。 この誤差を大幅に軽減するため、高層気象台では、直達日射量の水平面成分と散乱日射量の合成値として算出しています。
反射日射観測
地上1.5mから2mの高さのポールに全天日射計を下向き水平に設置して観測します。
直達日射観測、散乱日射観測および全天日射観測の写真

直達日射観測、散乱日射観測および全天日射観測

観測結果

日射観測データは、BSRNの要求を満たすため、毎秒サンプリングで日の出から日の入りまで毎日連続して取得され、品質がチェックされます。 つくば(高層気象台)における観測結果の例を以下に紹介します。

つくばにおける日射量(月平均値)のグラフ(2021年)

つくばにおける日射量(月平均値)のグラフ(2021年)

つくばにおける日射量(年平均値)の長期変化傾向のグラフ

つくばにおける日射量(年平均値)の長期変化傾向のグラフ

このページのトップへ