大気の光学的厚さの観測

測定の原理と理論

日射は地上に到達するまでに、大気中の空気分子・エーロゾル・雲等により一部が吸収・散乱・反射されます。 大気による日射の減衰は、地球の放射収支にとって重要です。 また近年、地球の温暖化に関して、エーロゾルによる地球-大気系への直接的・間接的放射強制力の重要性が指摘されています。

大気による日射の減衰率(光学的厚さ)は、地上に到達する直達日射の強さを測定することにより算出できます。 高層気象台(つくば)では、地球大気による日射の減衰を表す量として、直達日射量から大気混濁係数(ホイスナー・デュボアの大気混濁係数)を算出しています。 また、サンフォトメータにより観測した特定の波長の日射から、エーロゾルによる日射の減衰を示すエーロゾルの光学的厚さを算出しています。

大気の光学的厚さ観測の図

大気の光学的厚さ観測

観測の種類

大気混濁係数
太陽光球面から直接地上に到達する太陽放射を直達日射といい、その単位面積あたりの直達日射エネルギーを直達日射量といいます。 晴天時の直達日射量から大気混濁係数が算出されます。 詳しくは、気象庁ホームページ(大気混濁係数の算出)を参照ください。
エーロゾルの光学的厚さ
直達日射のうち、特定の波長における直達日射エネルギーを波長別直達日射量といいます。 晴天時の特定の波長における波長別直達日射量からエーロゾルの光学的厚さが算出されます。 詳しくはエーロゾルの光学的厚さの観測をご覧ください。

観測の方法

大気混濁係数
太陽追尾装置に直達日射計を搭載し、太陽を自動追尾しながら観測します。
エーロゾルの光学的厚さ
光学フィルターにより複数の波長を切り替えて観測するサンフォトメータを 太陽追尾装置に搭載して、太陽を自動追尾しながら観測します。
大気混濁係数の観測の写真

大気混濁係数の観測
(直達日射計)

エーロゾルの光学的厚さの観測の写真

エーロゾルの光学的厚さの観測
(サンフォトメータ)

観測の結果

つくばにおける観測結果を以下に紹介します。 平年値(1981-2010)を基準とした大気混濁係数の月別最小値の経年変化を見ると、火山噴火による成層圏エーロゾルの影響が明瞭に確認することができます。 1963年から数年継続しているやや高い値、1982~1983年と1991~1993年にみられる極大は、それぞれ1963年2~5月のアグン火山噴火(インドネシア)、 1982年3~4月のエルチチョン火山噴火(メキシコ)、1991年6月のピナトゥボ火山噴火(フィリピン)によって火山ガスが成層圏に大量に注入され、 成層圏が長期間にわたって混濁しました。 ピナトゥボ火山噴火以降は大規模な火山噴火が発生していないため、大気混濁係数はアグン火山噴火前のレベルまで戻っています。

つくば(高層気象台)における大気混濁係数・月最小値平年比の経年変化

つくば(高層気象台)における大気混濁係数・月最小値平年比の経年変化

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