長野地方気象台長からのメッセージ

長野地方気象台長竹村正弘(たけむらまさひろ)

台長

桜の標本木前にて

長野地方気象台のホームページをご利用いただき、ありがとうございます。

台長の竹村 正弘(たけむら まさひろ)です。令和5年度のスタートにあたり、一言ご挨拶申し上げます。

標高3000m級の山々に囲まれた長野県は、多くの火山を有し、厳しくも豊かな自然環境が観光資源となっている一方で、地震や火山災害、気象災害などの自然災害も少なくありません。幸いにも昨年度は、県内で人命に関わるような自然災害の発生はありませんでしたが、7月、8月には局地的な大雨が頻発し、家屋等に被害の及ぶ事象が発生しました。全国に目を向けますと、8月には梅雨前線の停滞による大雨で新潟県、山形県に、9月には台風の接近に伴う大雨等で鹿児島県、宮崎県に特別警報が発表され、多くの被害報告がありました。

長野県歌「信濃の国」で、♪流れ淀まずゆく水は 北に犀川千曲川 南に木曽川天竜川 これまた国の固めなり♪ と歌われています。国家の礎にも例えられるこれらの河川も、時として牙をむき人命を脅かします。令和元年東日本台風(台風第19号)では、長野県に初めて大雨特別警報が発表され、大雨や千曲川の堤防決壊などにより建物等の被害や土砂災害、浸水害、農業被害等が多数発生しました。過去にも三六災害(昭和36年)や平成18年7月豪雨など、梅雨前線の停滞や台風がもたらした大雨により甚大な被害が発生しています。

長野県内には77の市町村があります。昨年度(令和4年度)は、そのうち76の市町村長さんと懇談させていただきました。その市長村長さんの多くが、気象現象の“局地化”“集中化”“激甚化”を指摘しており、大雨への備えは必須、とおっしゃっていました。地球温暖化に伴い、大雨の増加や台風の勢力増大が予想されており、災害に対する一層の備えが必要となります。

また、長野県西部地震(昭和59年)、長野県北部の地震(平成23年)、神城断層地震(平成26年)など、過去には地震による被害も発生しており、南海トラフ大規模地震に備えて県内34市町村が「地震防災対策推進地域」に指定されています。南海トラフ地震は繰り返されることが歴史的にも証明されており、前回の地震からすでに70年以上が経過していることから、今後20年以内の発生確率が60%程度と言われています。そして、近隣を含めると10もの活火山があり、噴火に伴う災害リスクも低くありません。

気象台では、自然災害による人的被害や経済的影響を可能な限り軽減し、災害リスクから県民のみなさま、観光で訪れる多くのみなさまの生命や財産を守るため、日頃からわかりやすい防災気象情報の提供、丁寧な解説に努めるとともに、信頼される気象台を目指して日々予報技術を研鑽し、精度を高めるよう努力してまいります。そして、長野県や県内77市町村、国の防災関係機関、報道機関との連携をさらに強化・深化させ、職員一丸となって地域に根差した地域防災力強化に取り組んでまいります。また、気象データや情報の利活用を促進し、気象や気候の変動に適合した地域ビジネスの発展のために貢献してまいります。

引き続き、気象台業務へのみなさまのご理解とご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

なお、今年は関東大震災から100年となる節目の年です。10万人以上もの死者・行方不明者を出した大災害をより多くの方々に知っていただくため、気象庁では特設サイトを設けています。是非、ご利用ください。

●「関東大震災から100年」特設サイト

~関東大震災から100年~ 知って備えよう 過去の大災害から学ぶ

令和5年4月

長野地方気象台長 竹村 正弘