雪による災害事例

★雪圧害・着雪害

 1990年(平成2)1月31日から2月1日の午前中にかけて低気圧が西日本の南岸を東進したため(南岸低気圧)、近畿地方中部を中心に大雪となった。奈良県では積雪のため、北西部においてビニールハウスの倒壊、破損(5億3千万円:48ha)やハウス内の農作物に被害(4億5千万円:48ha)があった。 また、雪圧により送電線が切断して、天理市・奈良市・山添村の約1万戸で停電被害があった。

参考1:南岸低気圧とは

 東シナ海や沖縄近海で発生した低気圧が本州の南岸沖(北緯31度~北緯33度)を東進するとき、近畿中部から関東にかけて雪や雨を降らせる。真冬には寒気が本州の南海上まで覆っていることから寒気と暖気の境目はかなり南にあるが、寒気が弱まると低気圧の通り道が北上するため、2月~3月に出現しやすい。
 低気圧が本州に近すぎると地上付近に暖気が入るため、降水は雨となる。雨と雪の判別は主に地上気温2℃前後が目安となるが、地上から850hPa(上空約1500m)までの温度勾配(盆地のように夜間大気下層に冷気層があったり、冷気が流入する場合は雪片がとけにくい)や湿度の状態により異なる。850hPaの気温マイナス6℃・925hPa(上空約700m付近)の気温0℃が目安となるが、湿度が低い場合は地上気温6℃でも雪になることがある。

参考2:着雪の条件

 地上気温0℃~1.5℃で雪が降り続き、かつ風が強いと着雪しやすくなる。電線着雪の量は降雪強度(mm/h)と風速(m/s)に依存し、この積が15を超えると(降水強度3mm/hの時、電線に直角な風速成分5m/s)筒状の着雪が発達し、50以上(降水強度5mm/hの時、電線に直角な風速成分10m/s)では大事故に至るほどの着雪となる。「若浜五郎:北大低温研より」

参考3:湿度が低いとなぜ雪が溶けない

 同じ気温でも空気が乾いていると涼しく感じる。これは湿度が低いと肌の水分が蒸発しやすく、蒸発するときに肌の熱が奪われて体温を下げるからである。これと同様に雪も湿度が低いと蒸発が起こって雪の温度が低くなるため、地上まで溶けずに落ちてきやすくなる。

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