地球温暖化について
新着情報
気候変動に関する最新の科学的知見を提供する役割を担う「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、第6次評価報告書 統合報告書を令和5年3月20日に公表しました。第6次評価報告書 統合報告書において評価された気候変動に関する最新知見を学ぶことを目的として、5月22日にIPCCシンポジウムを開催します。
詳細は令和5年4月28日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
<文部科学省、農林水産省、経済産業省及び環境省同時発表>
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第58回総会が令和5年3月13日(月)から3月20日(月)にかけてインターラーケン(スイス連邦)で開催され、IPCC第6次評価報告書(AR6)統合報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、同報告書の本体が採択されました。
詳細は令和5年3月20日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
当ページ内の気温と降水のこれまでの変化の図を更新し、2022年のデータを追加しました。
〇IPCCシンポジウム『第6次評価報告書から考える私たちと気候変動』の開催について
気象庁は、文部科学省、農林水産省及び環境省と共同でIPCCシンポジウム『第6次評価報告書から考える私たちと気候変動』を開催します。参加費無料で、事前申込が必要です。
詳細は令和4年10月31日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
大気中の主要な温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素)の2021年の世界平均濃度はいずれも観測史上最高を更新し、特にメタンの年増加量は観測史上最高となりました。
詳細は令和4年10月27日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
<文部科学省、農林水産省、経済産業省及び環境省同時発表>
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第56回総会及び同パネル第3作業部会(WG3)第14回会合が令和4年3月21日(月)から同年4月4日(月)にかけてオンラインで開催され、IPCC第6次評価報告書(AR6)WG3報告書(以下「AR6/WG3報告書」と言う。)の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、同報告書の本体等が受諾されました。
詳細は令和4年4月5日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
<文部科学省、農林水産省、経済産業省及び環境省同時発表>
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第55回総会及び同パネル第2作業部会(WG2)第12回会合が本年2月14日(月)から2月27日(日)にかけてオンラインで開催され、IPCC第6次評価報告書(AR6)WG2報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、同報告書の本体等が受諾されました。
詳細は令和4年2月28日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
IPCCシンポジウム/気候講演会『気候変動を知る ~最新報告書が示すこれまでとこれから~』がオンライン開催されました。講演動画を配信中です。
詳細は令和3年10月29日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
気象庁が運営を担う温室効果ガス世界資料センターの解析によれば、大気中の主要な温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素)の増加が続いており、2020年の世界平均濃度はいずれも観測史上最高を更新しました。
詳細は令和3年10月25日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第54回総会及び同パネル第1作業部会(WG1)第14回会合が7月26日(月)から8月6日(金)にかけてオンラインで開催され、IPCC第6次評価報告書(AR6)WG1報告書(自然科学的根拠)(以下、「AR6/WG1報告書」と言う。)の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、同報告書の本体等が受諾されました。
詳細は令和3年8月9日の報道発表資料をご覧ください。
- 報道発表資料(気象庁ホームページへのリンク)
近畿・中国・四国地方の気候変動
〇気温のこれまでの変化
平均気温の上昇と共に極端な高温の頻度も増加しています
(1)平均気温のこれまでの変化
- 世界と日本の年平均気温は、様々な時間スケールの変動を伴いながら上昇しています。
- 気温の上昇は一様ではなく、日本の年平均気温の上昇は世界平均よりも速く進んでいます。
(日本の気候変動2020本編第2章より)
近畿、中国、四国地方の年平均気温も、様々な周期の変動を繰り返しながら上昇しています。
近畿※1 | 中国※2 | 四国※3 |
細線(黒)は各年の平均気温の平年値からの偏差、太線(青)は偏差の5年移動平均値(その年および前後2年を含めた5年の平均値)、直線(赤)は長期変化傾向を示す。 平年値は1991~2020年の30年平均値。観測地点の移転による影響は補正しています。 |
※1 近畿地方9地点:豊岡、舞鶴、京都、彦根、姫路、神戸、大阪、和歌山、潮岬。観測地点の移転後の経過年数が短い洲本および奈良のデータは含まれていません。
※2 中国地方11地点:西郷、松江、境、米子、鳥取、浜田、津山、広島、呉、福山、岡山。
※3 四国地方9地点:松山、多度津、高松、宇和島、高知、徳島、宿毛、清水、室戸岬。
(2)極端な高温、低温のこれまでの変化
- 日本国内では、猛暑日※1、真夏日※1、熱帯夜※1の日数が有意に増加している一方、冬日※1の日数は有意に減少しています。
(日本の気候変動2020本編第2章より)
近畿、中国、四国地方においても、 猛暑日、熱帯夜等の日数は有意に増加し、1990年代以降特に多くなっています。一方冬日の日数は有意に減少しています。
※1 猛暑日:日最高気温35℃以上、真夏日:日最高気温30℃以上、熱帯夜:日最低気温25℃以上、冬日:日最低気温0℃未満
猛暑日日数 | 熱帯夜日数 | 冬日日数 | |
近畿※2 | |||
中国※3 | |||
四国※4 |
棒グラフ(緑)は毎年の値、実線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向を示す。
※2 近畿地方7地点:豊岡、舞鶴、京都、彦根、姫路、大阪、和歌山。観測地点の移転により、神戸、洲本、潮岬、奈良のデータは含まれていません。
※3 中国地方7地点:西郷、松江、境、米子、浜田、津山、福山。観測地点の移転により、鳥取、広島、呉、岡山のデータは含まれていません。
※4 四国地方7地点:松山、多度津、高松、高知、徳島、清水、室戸岬。観測地点の移転により、宇和島、宿毛のデータは含まれていません。
他府県の図はこちら(気候変動適応情報プラットフォーム)(国立環境研究所ページへのリンク)
〇雨の降り方のこれまでの変化
大雨及び短時間強雨の発生頻度が増加しています
- 日本国内の大雨及び短時間強雨の発生頻度は有意に増加し、雨の降る日数は有意に減少しています。
(日本の気候変動2020本編第4章より)
近畿地方においては、短時間強雨の発生頻度は有意に増加しています。
四国地方においては、大雨の発生頻度は有意に増加しています。
また、近畿、中国、四国地方においては、雨の降らない日が有意に増加しています。
日本国内の観測によると、大雨(日降水量100mm以上及び200mm以上)の日数は、いずれも増加しています。
また、短時間強雨(1時間降水量50mm以上及び80mm以上)の年間発生回数についても、いずれも増加しています。
なお、大雨及び短時間強雨の発生頻度はまれな現象であるため、府県などの狭い範囲では統計的に有意な変化傾向が確認できないことがあります。
近畿、中国、四国地方(アメダス)の非常に激しい雨(1時間降水量50mm以上)の年間発生回数については、近畿地方では増加しているとみられます(信頼水準90%で統計的に有意)が、
中国地方と四国地方については変化傾向は見られていません。
また、近畿、中国、四国地方※の大雨(日降水量100mm以上)の年間発生日数については、
四国地方では増加しているとみられます(信頼水準90%で統計的に有意)が、近畿地方と中国地方については変化傾向は見られていません。
近畿、中国、四国地方※の無降水日(1日の降水量が1.0mm未満の日)の年間発生日数については、増加しているとみられます(信頼水準90%で統計的に有意)。
※ 近畿地方11地点:豊岡、舞鶴、京都、彦根、姫路、神戸、大阪、洲本、和歌山、潮岬、奈良。
※ 中国地方11地点:西郷、松江、境、米子、鳥取、浜田、津山、広島、呉、福山、岡山。
※ 四国地方9地点:松山、多度津、高松、宇和島、高知、徳島、宿毛、清水、室戸岬。
近畿 | 中国 | 四国 |
棒グラフ(緑)は毎年の値、実線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向を示す。
近畿 | 中国 | 四国 |
棒グラフ(緑)は毎年の値、実線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向を示す。
近畿 | 中国 | 四国 |
棒グラフ(緑)は毎年の値、実線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向を示す。
他府県の図はこちら(気候変動適応情報プラットフォーム)(国立環境研究所ページへのリンク)
将来予測について
以下の説明では、20世紀末(1980~1999年の平均)と比較した21世紀末(2076~2095年の平均)将来予測を、 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)で用いられた以下2つの代表的濃度経路(RCP)シナリオについて示しています。
2℃上昇シナリオ
RCP2.6シナリオでは、21世紀末の世界平均気温が、工業化以前※と比べて0.9~2.3℃上昇する可能性が高いことから、 以下の説明では「2℃上昇シナリオ」と表記しています。これは、パリ協定の2℃目標が達成された世界でありうる気候の状態に相当します。 RCP2.6はIPCC第6次評価報告書(AR6)のSSP1-2.6に近いシナリオです。
4℃上昇シナリオ
RCP8.5シナリオでは、21世紀末の世界平均気温が、工業化以前※と比べて3.2~5.4℃上昇する可能性が高いことから、 以下の説明では「4℃上昇シナリオ」と表記しています。これは、追加的な緩和策を取らなかった世界であり得る気候の状態に相当します。 RCP8.5はIPCC AR6のSSP5-8.5に近いシナリオです。
※1750年より以前の期間を示しますが、世界的な観測が行われるようになった1850-1900年の観測値で代替しています。
予測と不確実性の幅(陰影)の時系列を、RCP2.6(青)とRCP8.5(赤)のシナリオについて示した。 黒(と灰色の陰影)は、モデルにより再現した過去の推移を示す。 全てのRCPシナリオに対し、2081~2100年の平均値と不確実性の幅を彩色した縦帯で示している。 数値は、複数モデルの平均を算出するために使用したモデルの数を示している。 (出典:図, IPCC AR5 WGⅠ SPM Fig. SPM.7(a)) |
〇気温の将来予測
今後も平均気温の上昇と極端な高温の頻度の増加が予測されます
- いずれの温室効果ガスの排出シナリオにおいても、21世紀末の近畿・中国・四国地方の平均気温は上昇すると予測されます。
- これに伴い、多くの地域で猛暑日や熱帯夜等の日数は増加すると予測されます。
(日本の気候変動2020本編第3章より)
地域で平均した年平均気温の変化は、以下の表のように予測されています。
20世紀末(1980~1999年平均)を基準とした21世紀末(2076~2095年平均)における将来変化量を棒グラフ、 年々変動の幅を細い縦線で示す。棒グラフの色は、赤が4℃上昇シナリオに、青が2℃上昇シナリオに、それぞれ対応する。 棒グラフが無いところに描かれている細い縦線は、20世紀末の年々変動の幅を表している。 |
年々変動の幅を細い縦線で示す。棒グラフの色は、赤が4℃上昇シナリオに、青が2℃上昇シナリオに、灰色が現在気候に、それぞれ対応する。 棒グラフの赤及び青の網掛けは減少することを示す。 |
平均気温の上昇に伴い、4℃上昇シナリオ(RCP8.5)と2℃上昇シナリオ(RCP2.6)のいずれの温室効果ガス排出シナリオにおいても、 20世紀末と比べ、21世紀末には多くの地域で猛暑日及び熱帯夜の年間日数は増加し、冬日の日数は減少します(いずれも信頼水準90%以上で統計的に有意)。
他府県の図はこちら(気候変動適応情報プラットフォーム)(国立環境研究所ページへのリンク)
〇雨の降り方の将来予測
今後も雨の降り方が極端になる傾向が続くと予測されます
- いずれの温室効果ガスの排出シナリオにおいても、大雨及び短時間強雨の発生頻度は、地域平均では有意に増加すると予測されます。
- 一方、4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では、無降水日の日数が増加すると予測されます。
(日本の気候変動2020本編第5章より)
いずれの温室効果ガスの排出シナリオにおいても、1日の降水量が200mm以上となる大雨の年間の日数は、20世紀末(1980~1999年平均)と比べ、
21世紀末(2076~2095年平均)には全国平均では増加すると予測されています。1時間降水量が50mm以上となるような短時間強雨の頻度も、
同様に全国平均では増加すると予測されています(いずれも信頼水準90%以上で統計的に有意、ただし四国地方の大雨のRCP2.6の予測を除く)。
一方、4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では、無降水日(1日の降水量が1.0mm未満の日)の日数が、20世紀末と比べて21世紀末にはほぼ全地域で増加すると予測されています(信頼水準90%以上で統計的に有意、RCP2.6の予測では近畿日本海側及び山陰のみ信頼水準90%以上で統計的に有意)。
(日本の気候変動2020本編第5章より)
日降水量200mm以上 | 1時間降水量50mm以上 | 無降水日 |
棒グラフはそれぞれの年間発生回数(無降水日は年間発生日数)、細い縦線は年々変動の幅、棒グラフの色は灰色が20世紀末(1980~1999年平均)、 赤が4℃上昇シナリオ(RCP8.5)、青が2℃上昇シナリオ(RCP2.6)の21世紀末(2076~2095年平均)に対応する。
大雨や短時間強雨は発生数が少ないため、地域単位での予測は不確実性が大きいことに注意が必要です。
近畿・中国・四国の各府県のこれまでの変化及び将来予測については、以下のリーフレットに掲載していますので、ご覧ください。
気温の変化
これまでの変化
- 大阪では年平均気温が100年あたり約2.0℃上昇しています。
- 猛暑日や熱帯夜の日数については、1990年代以降の発生数は特に多くなっています。
細線(黒)は各年の平均気温、太線(黒)は年平均気温の5年移動平均値、直線(赤、緑、青)は長期変化傾向を示す。
▲は観測地点の移転を示します。移転による影響を補正しているため、移転以前の値は観測統計値とは異なります。
これからの変化
- いずれのシナリオにおいても21世紀末の大阪の平均気温は上昇し、多くの地域で猛暑日や熱帯夜の日数が増加、冬日の日数が減少すると予測されます。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
---|---|---|
年平均気温 | 約1.3℃上昇 | 約4.2℃上昇 |
【参考】世界の年平均気温※ | (約1.0℃上昇) | (約3.7℃上昇) |
猛暑日の年間日数 | 約8日増加 | 約40日増加 |
真夏日の年間日数 | 約19日増加 | 約60日増加 |
熱帯夜の年間日数 | 約18日増加 | 約63日増加 |
冬日の年間日数 | 約13日減少 | 約28日減少 |
猛暑日:日最高気温35℃以上、真夏日:日最高気温30℃以上、熱帯夜:日最低気温25℃以上、冬日:日最低気温0℃未満
「これからの変化」とは、21世紀末(2076~2095年の平均)の予測を20世紀末(1980~1999年の平均)と比較したものです。
※ 算出期間が異なることから【参考】としています。世界の年平均気温の算出期間:1986~2005年の平均を基準とした、2081~2100年の平均との差
雨の変化
これまでの変化
- 近畿地方では 、短時間に降る非常に激しい雨(1時間降水量50mm以上)の回数には増加傾向が現れています。
- なお、大阪府においてはまれな現象なので、統計的に有意な変化傾向は確認できません。
棒グラフ(緑)は毎年の値、実線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向を示す。
これからの変化
- 近畿地方で見た場合、大雨や短時間強雨の発生頻度や強さは増加し、雨の降る日数は減少すると予測されます。
- なお、大阪府においてはまれな現象なので、統計的に有意な変化傾向は確認できません。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
---|---|---|
1時間降水量50mm以上の回数 | 約1.9倍に増加 | 約2.4倍に増加 |
日降水量200mm以上の回数 | 約2.0倍に増加 | 約2.7倍に増加 |
年最大日降水量※ | 約1.1倍に増加 | 約1.2倍に増加 |
無降水日日数 | 約4日増加 | 約12日増加 |
※1年で最も多くの雨が降った日の降水量
「これからの変化」とは、21世紀末(2076~2095年の平均)の予測を20世紀末(1980~1999年の平均)と比較したものです。
大雨や短時間強雨は発生数が少ないため、地域単位での予測は不確実性が大きいことに注意が必要です。
【台風の将来予測】
日本付近の台風の強度は強まり、日本の南海上で猛烈な台風の存在頻度が増加すると予測されます※1。
(『日本の気候変動2020』本編第9章より)
猛烈な台風※2に着目すると、日本の南海上で存在頻度(一定期間当たりに、その場所に存在する個数)が増加すると予測されています(Yoshida et al. 2017)。
※1 :確信度は中程度(詳細は『日本の気候変動2020』本編第9章参照)
※2:気象庁では最大風速54m/s以上の熱帯低気圧を指します。ただしこの研究では最大風速59m/s以上とされています。
世界平均気温が4℃上昇した状態において、猛烈な台風の存在頻度が、暖色の領域では現在(1979~2010年)よりも増し、寒色の領域では減ることを示している。( 平成29年10月26日気象研究所・気象業務支援センター報道発表資料より) |
〇参考文献
Yoshida, K., M. Sugi, R. Mizuta, H. Murakami, and M. Ishii, 2017: Future changes in tropical cyclone activity in high-resolution large-ensemble simulations, Geophys. Res. Lett., 44, doi:10.1002/2017GL075058
【大阪湾の高潮】
日本沿岸における高潮の発生数や大きさには、有意な長期変化傾向は見られません。21世紀末における大阪湾の最大潮位偏差※1は大きくなると予測されます※2。
(『日本の気候変動2020』本編第18・19章より)
潮位偏差の将来予測によると、例えば大阪湾では、小規模な高潮の数は減少するものの、大規模な高潮の頻度が増加すると予測されます。
東京湾、大阪湾及び伊勢湾の最大潮位偏差の将来予測によると、21世紀末(2075~2099年)における各湾の最大潮位偏差は、現在気候(1979~2003年)と比べ増加すると予測されます※2。
(『日本の気候変動2020』本編第19章より)
※1:潮位偏差 天体の動きから算出した天文潮(推算潮位)と気象などの影響を受けた実際の潮位との差(ずれ)。
※2:確信度は中程度(詳細は上記資料参照)。
4つのRCPシナリオ条件下の大阪湾、伊勢湾及び東京湾の湾奥における、21世紀末(2075~2099年)の最大潮位偏差の現在(1979~2003年) からの変化量。2.6は2℃上昇シナリオ(RCP2.6)、8.5は4℃上昇シナリオ(RCP8.5)を指す。(最小値、10パーセンタイル値※3、25パーセンタイル値、平均値、 75パーセンタイル値、90パーセンタイル値、最大値。ただし最大値と最小値は欄外のものもある)(有吉及び森 2018)。 |
※3 :百分位数(percentile)。データを値の小さい方から順に並べた場合に全体のN%の位置にあるものを、Nパーセンタイルと言う。 例えばデータの個数が100である場合、33パーセンタイルは、小さい方から数えて33番目のデータを指す。
〇参考文献
有吉望,森信人,2018:北西太平洋の台風の最大潜在強度を用いた3大湾における高潮偏差の将来変化予測.土木学会論文集B2(海岸工学),74(2),pp. I_619-I_624.
高潮は、主に台風や発達した低気圧の接近に伴い、吸い上げ効果や吹き寄せ効果などにより、海面が異常に上昇する現象で、短時間のうちに急激に潮位が上昇することがあります。
台風や低気圧の中心付近では気圧が低いため、その部分の空気が海面を吸い上げるように作用する結果、海面が上昇します。気圧が1hPa低くなると、海面は約1cm上昇します。 台風等による強風が沖から海岸に向かって吹くと、海水が海岸に吹き寄せられ、海面が上昇します。 (気象庁パンフレット「高潮と高波から命を守るために」より) |
【日本沿岸の平均海面水位の将来予測】
日本沿岸の平均海面水位は、過去100年間に上昇傾向は見られないものの、1980年以降では上昇傾向が見られます。 21世紀末の日本沿岸の平均海面水位は上昇すると予測されます※1。
平均海面水位の上昇は、浸水災害のリスクを高めます。
(『日本の気候変動2020』本編第14・15章より)
※1 :確信度は高い(詳細は上記資料参照)
21世紀末の日本沿岸の平均海面水位は、世界平均海面水位と同じくらい上昇すると予測されます。
日本沿岸海面水位については、黒潮の影響が強まると考えられる地域で上昇が僅かに大きいものの、地域間で顕著な違いは見られないと予測されています。
(『日本の気候変動2020』本編第15章より)
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
---|---|---|
(0.22~0.55 m) | (0.46~0.97 m) | |
世界の平均海面水位 | (0.26~0.53 m) | (0.51~0.92 m) |
【都市気候】
都市域では、その周辺に比べて時に数℃程度高い気温が観測されることがあります。こうした都市の高温傾向は、ヨーロッパでは19世紀には知られており、
気温の分布を描くと等温線が都市を囲むようになり、それが島(アイランド)の等高線と似ていることから、「ヒートアイランド現象」と呼ばれています。
ヒートアイランド現象は、主として次の3つの影響により起こることが知られています。
- 土地利用の変化(緑地や水面の減少)の影響
- 建築物とその高層化の影響
- 人間活動で生じる熱の影響
日中のヒートアイランド現象の主要因。草地、森林、水田等の植生域や水域は保水力が高く、そこから水分が蒸発する際の蒸発熱(気化熱)により温度の上昇が抑えられます。
一方、舗装された路面や人工建造物は、蒸発熱が奪われないために高温となります。
夜間のヒートアイランド現象の主要因。建築物によって風通しが悪くなり熱がこもりやすくなること、日中に蓄積した熱を夜間になっても保持する性質があります。
局所的に生じる高温の主要因。都市の多様な産業活動や社会活動に伴い熱が排出されることによります。
(『日本の気候変動2020』本編コラム1より)
内容は、毎年観測データの解析部分について更新を行っていますので、最新のデータをご覧ください。
- ヒートアイランド現象(気象庁ホームページへのリンク)
〇気候変動とは
地球上で起こる様々な大気現象は太陽から受け取ったエネルギーを源としています。地球が太陽から受け取ったエネルギ-は、大気圏だけではなく、 様々な形態を取りながら、海洋・陸地・雪氷・生物圏の間で相互にやりとりされて、最終的には赤外放射として宇宙空間に戻され、ほぼ安定した地球のエネルギ-収支が維持されています。 このようなエネルギ-の流れに関与する地球の全システムを気候系と呼び、また大気の平均状態を気候と呼びます。気候は様々な要因により、様々な時間スケールで変動しています。
- 気候変動(気象庁ホームページへのリンク)
〇地球温暖化とは
私たちの社会はそれぞれの地域の気候を背景に形作られています。その気候が、地球規模で、私たちが経験したことのないものに変わりつつあります。現在の地球は過去1400年で最も暖かくなっています。 この地球規模で気温や海水温が上昇し氷河や氷床が縮小する現象、すなわち地球温暖化は、平均的な気温の上昇のみならず、異常高温(熱波)や大雨・干ばつの増加などのさまざまな気候の変化を伴っています。
- 地球温暖化問題とは(気象庁ホームページへのリンク)
〇温室効果ガスとは
地球の大気には二酸化炭素などの温室効果ガスと呼ばれる気体がわずかに含まれています。これらの気体は赤外線を吸収し、再び放出する性質があります。
この性質のため、太陽からの光で暖められた地球の表面から地球の外に向かう赤外線の多くが、熱として大気に蓄積され、再び地球の表面に戻ってきます。
この戻ってきた赤外線が、地球の表面付近の大気を暖めます。これを温室効果と呼びます。
温室効果が無い場合の地球の表面の温度は氷点下19℃と見積もられていますが、温室効果のために現在の世界の平均気温はおよそ14℃となっています。
大気中の温室効果ガスが増えると温室効果が強まり、地球の表面の気温が高くなります。
- 温室効果とは(気象庁ホームページへのリンク)
- 地球温暖化情報ポータルサイト(気象庁ホームページへのリンク)
- 海洋の健康診断表(地球温暖化に関する診断表、データ)(気象庁ホームページへのリンク)
- 気候変動適応情報プラットフォーム(国立環境研究所ページへのリンク)
- 日本の気候変動2020(気象庁ホームページへのリンク)
- 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(気象庁ホームページへのリンク)