予測計算の概要

気候シナリオ

 予測計算に与えられた温室効果ガス濃度の見通しは、気候変動に関する政府間パネル第5次評価報告書で用いられたシナリオのうち、2℃上昇シナリオ(RCP2.6)及び4℃上昇シナリオ(RCP8.5)を基にしている。2℃上昇シナリオ(RCP2.6)は低位安定化シナリオと呼ばれ、気温上昇を工業化以前と比べて2℃未満に抑えることを目指す想定である。4℃上昇シナリオ(RCP8.5)は高位参照シナリオと呼ばれ、現時点を超える政策的な緩和策を取らない想定である。詳細は「日本の気候変動2020」(詳細版)付録1.2.1を参照。

数値モデル

 予測計算に用いた数値モデルは、気象庁気象研究所が開発した水平解像度5kmの非静力学地域気候モデル(NHRCM05)である。実行にあたっては、同じく気象庁気象研究所が開発した水平解像度20kmの全球大気モデル(MRI-AGCM 3.2S)に海面水温・海氷被覆データを境界条件として与え、20世紀末20年分(1980~1999年)及び21世紀末20年分(2076~2095年)の計算を行った。次に、それらの結果を境界条件として、日本とその周辺を対象としてNHRCM05による計算を行った(力学的ダウンスケーリング)。詳細は「日本の気候変動2020」(詳細版)付録1.2.2を参照。

アンサンブル予測

 4種類の海面水温パターンによる4通り(メンバー)の計算を実施し(アンサンブル予測)、それぞれの増減傾向がどの程度一致しているかを確認することにより、温暖化の傾向に関する信頼性を評価している。また、複数メンバーによる予測結果は、それだけ多くの自然変動を考慮できることから、より現実的な年々変動による不確実性の評価を可能とする。具体的には、NHRCM05、MRI-AGCM3.2Sともに大気の変動のみを予測する気候モデルであることから、海面水温データは、結合モデル相互比較プロジェクト第5期(CMIP5)で行われた各国の全球大気海洋結合モデルから28モデルを選択し、その結果を3パターンに分類してそれぞれを平均したものと、28モデルすべてを平均した計4通り(メンバー)の予測結果を用いた。詳細は「日本の気候変動2020」(詳細版)付録1.2.2を参照。

予測計算の仕様

対象領域 日本域(力学的ダウンスケーリングによる)
期間 現在:20世紀末(1980~1999年)
将来:21世紀末(2076~2095年)
気候モデル 気象研究所地域気候モデル NHRCM05(Sasaki et al. 2011)
気象研究所全球大気モデル MRI-AGCM3.2S(Mizuta et al. 2012)
水平解像度 5km
メンバー数 現在:1メンバー
将来:4メンバー
温室効果ガス排出シナリオ 2度上昇シナリオ(RCP2.6)
4度上昇シナリオ(RCP8.5)
将来の海面水温 CMIP5モデルの予測に基づく4つの変化パターン