衛星観測画像の見方

静止気象衛星ひまわりに搭載している可視赤外放射計は、人間の目で見ることのできる「可視光」から目に見えない「赤外線」までの様々な波長帯で、 電磁波の強さを観測しています。これらの観測結果を雲画像として表示することで、見慣れた「衛星画像」となります。 このページでは、主な衛星画像がどのような特徴があるかを紹介します。

目次

画像の種類

気象庁ホームページの10分ごとの気象衛星のページには「可視画像」、「赤外画像」、「水蒸気画像」があります。また、2.5分ごとの気象衛星のページには、「可視画像」、「赤外画像」、「水蒸気画像」に加え、「雲頂強調画像」が掲載されています。

可視画像

可視画像は、雲や地表面によって反射された太陽光を観測した画像です。雨を伴うような発達した雲は厚みがあり、太陽光を強く反射するため白く写り、視覚的にわかりやすい画像です。 夜間は太陽光の反射がないことから雲は可視画像に写りません。
可視画像 可視カラー画像
2017年6月20日11時00分(日本時)の可視画像(左:白黒、右:カラー)

赤外画像

赤外画像は、雲、地表面、大気から放射される赤外線を観測した画像です。 放射される赤外線の強さは雲の温度により変化する特性をもっており、温度の低い雲をより白く表現しています。ごく低い雲や霧は、温度が高いため地表面や海面とほとんど同じ温度で灰色や黒色で表示され、地表面や海面と区別がほとんどできません。温度の低い雲には、夏の夕立や集中豪雨をもたらす積乱雲のような厚い雲もあれば、晴れた日にはるか上空に薄く現れる巻雲のような雲もあります。 このため、白く写っている雲が雨をもたらすとは限りません。
赤外画像 赤外画像(カラー)
2017年6月20日11時00分(日本時)の赤外画像(左:白黒、右:カラー)

水蒸気画像

水蒸気画像は赤外画像の一種で、大気中にある水蒸気と雲からの赤外放射(6.2μm帯)を観測した画像です。 この波長帯の赤外線は、大気中に存在する水蒸気によく吸収されると同時に、その水蒸気からの放射が行われる特性をもっています。 この特性を利用して、水蒸気画像では、雲がないところでも対流圏上・中層にあるごくわずかの水蒸気からの放射を観測することができます。 また、対流圏上・中層の水蒸気の多いところが白く、少ないところが黒く写るように処理を施し、上空の大気の湿り具合をわかりやすくしています。 さらに、複数の画像を動画として見ることで、水蒸気の流れを介して上空の大気の流れを見ることができます。
水蒸気画像 水蒸気画像(カラー)
2017年6月20日11時00分(日本時)の水蒸気画像(左:白黒、右:カラー)

雲頂強調画像

雲頂強調画像は、日中の領域は可視画像、夜間の領域は赤外画像を表示し、その上に雲頂高度が高い雲のある領域を色付けした画像です。 雲はその高度によって温度が異なります。また、その温度によって雲から放射される赤外線の強さが異なります。 そのため、観測される赤外線の強さから、雲の温度がわかり、その雲の高度(雲頂高度)が推定できます。 宇宙にあるひまわりから見えるのは雲頂部分なので、ひまわりの観測データから上記の方法を用いてわかることは雲頂高度です。 赤味がかった領域は特に雲頂高度が高いことを意味しています。 雲が発達して積乱雲になると雲頂高度が非常に高くなるので、赤味がかった領域の中には積乱雲が含まれている可能性があることがわかります。 特に、日中の領域で使用している可視画像では、太陽光で影ができることにより積乱雲の雲頂のでこぼこした形状が見えるため、このような雲が赤く表示されているときは、積乱雲が存在するとわかります。 (注:この色付けはレーダーで観測した降水強度を示したものではありません。) 雲頂強調画像は2.5分ごとの気象衛星画像のページにのみ掲載されています。
雲頂強調画像
2017年6月20日11時30分(日本時)の雲頂強調画像

カラー合成画像

気象庁ホームページの10分ごとの気象衛星のページでは、カラー画像を表示できます。可視画像のカラー画像は、ひまわりの可視の3バンド(青・緑・赤)を合成した画像です。 赤外画像と水蒸気画像のカラー画像は、陸地を緑、海を青で塗り分けて作成しています。
可視カラー画像 赤外画像(カラー)
2017年6月20日11時00分(日本時)の画像(左:可視カラー画像、右:赤外画像(カラー))

トゥルーカラー再現画像

トゥルーカラー再現画像は、ひまわり8号・9号の可視3バンド(バンド1、2、3)、近赤外1バンド(バンド4)及び赤外1バンド(バンド13)を利用し、人間の目で見たような色を再現した衛星画像です。本画像は、衛星によって観測された画像を人間の目で見たように再現する手法(参考文献[1])によって作成されています。この色の再現過程において緑色を調節するために、Millerらによる手法(参考文献[2])の応用として、バンド2、3、4が使用されています。また、画像をより鮮明にするために、大気分子により太陽光が散乱される影響を除去するための手法(レイリー散乱補正)(参考文献[2])が利用されています。

トゥルーカラー再現画像の利用(転載等)もご確認ください。

カラー再現画像 カラー再現画像
カラー再現画像(左:2017年6月20日11時00分(日本時)、右:2017年11月1日11時00分(日本時)(拡大画像)

謝辞

トゥルーカラー再現画像は、気象庁気象衛星センターと米国海洋大気庁衛星部門GOES-Rアルゴリズムワーキンググループ画像チーム(NOAA/NESDIS/STAR GOES-R Algorithm Working Group imagery team)との協力により開発されました。また、レイリー散乱補正のためのソフトウェアは、NOAA/NESDISとコロラド州立大学との共同研究施設(Cooperative Institute for Research in the Atmosphere: CIRA)から気象庁気象衛星センターに提供されました。関係機関に感謝いたします。

参考文献

[1] Murata, H., K. Saitoh, Y. Sumida, 2018: True color imagery rendering for Himawari-8 with a color reproduction approach based on the CIE XYZ color system. J. Meteor. Soc. Japan, doi: 10.2151/jmsj. 2018-049.

[2] Miller, S., T. Schmit, C. Seaman, D. Lindsey, M. Gunshor, R. Kohrs, Y. Sumida, and D. Hillger, 2016: A Sight for Sore Eyes - The Return of True Color to Geostationary Satellites. Bull. Amer. Meteor., Soc., doi: 10.1175/BAMS-D-15-00154.1.

RGB合成画像

RGB合成画像は、数種類の観測画像の情報を1つのカラー画像に凝縮して表示する技術を用いた画像です。 複数の観測画像を組み合わせることで、強調して表示したい現象を分かりやすく表示することができます。 標準的なRGB合成画像には

  • 自然色画像 (Natural color RGB)
  • 日中雲解析画像 (Day microphysics RGB)
  • 日中対流雲画像 (Day convective storm RGB)
  • 日中雪霧画像 (Day Snow-Fog RGB)
  • 夜間雲解析画像 (Night microphysics RGB)
  • ダスト画像 (Dust RGB)
  • 気団解析画像 (Airmass RGB)

があり、現在開発を進めています。
参考 : ひまわり8号RGB合成画像の基礎(平成27年度 予報技術研修テキスト)

画像の呼び方について

ひまわり8号・9号の観測では、10分間を基本単位とし、その間にフルディスク観測を1回行いながら、日本域観測及び機動観測を4回ずつ並行して行います。 ある時刻に開始されたこの基本単位の中で行われるフルディスク観測、日本域観測、機動観測の観測時刻は以下のようになります。

例:「11時40分00秒」に開始された基本単位で行われるフルディスク観測、日本域観測、機動観測それぞれの観測時刻
ひとつの基本単位での
観測数
観測時刻
フルディスク観測 1回 11時50分00秒
日本域観測 4回 1回目 11時42分30秒
2回目 11時45分00秒
3回目 11時47分30秒
4回目 11時50分00秒
機動観測 4回 1回目 11時42分30秒
2回目 11時45分00秒
3回目 11時47分30秒
4回目 11時50分00秒

観測画像への影響

衛星の保守及び太陽、地球、月などにより、ひまわりの観測画像に影響が出ることがあります。
詳細は春分期・秋分期の太陽自動回避による画像欠損及び観測休止(気象衛星センターのホームページ)をご覧ください。
太陽自動回避画像
春分・秋分期の太陽自動回避により観測の一部が欠損となった例

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