静岡県の気象特性

静岡県は、全国的に見ると温暖な気候に恵まれているといえますが、ときには大雨・強風・波浪などの激しい気象現象も現われます。
静岡県は日本一の標高差を持つ県で、気候的にも海岸に近い地域の海洋性気候と、標高の高い内陸台地や山間部の内陸性気候とに分れ、伊豆半島の天城山付近や富士山麓や大井川上流域では、雨が多く、冬期は厳しい低温となり降雪も多くなっています。
県内の平均気温は、遠州灘、駿河湾に面する沿岸部では15~16℃と比較的温暖ですが、中部や東部の標高の高いところでは11~12℃と標高と同様に気温差も大きくなっています。
県内の年間の降水量は、分布図から見ると、平地で1800~2300mm前後、多雨地域は静岡市山岳部で3000mm、富士山麓で2800mm、少雨地域は、遠州地方と伊豆半島の西海岸で1600~2000mmです。
なお、静岡市(静岡地方気象台)の年平均気温は16.5℃、最高気温の極値は、38.7℃(1995年8月28日)、最低気温の極値は、-6.8℃(1960年1月25日)です。
年間降水量は2325mm、最大24時間降水量の極値は1974年7月8日に観測された508.0mmで、その大雨は一般に七夕豪雨(1974年7月7日~8日)と呼ばれています。

静岡県で夜間・早朝に発生する特徴的な大雨について

静岡県では、暖候期(4~9月)の夜間・早朝に、局地的な前線による大雨が発生することがしばしばあります。発生場所は、山地(図1)や沿岸部(図2)に発生する場合があります。

図1

図2

図3

各ステージ毎の現象と防災気象情報について(図4)

  • 発生期
    日本海に前線または低気圧があるなどの場合(図3)、暖かく湿った空気が南から入り込み、山地中心に降雨がはじまります。気温に着目すると、夜間、山地を中心に気温が下がります。さらに、山地中心の先行する降雨によりさらに気温が下がります。
  • 最盛期
    気温が低下した山地から、北よりの冷たい風(山風)が吹き始めます。南からの暖かく湿った空気とぶつかることで、局地的な前線が発生・発達し、大雨をもたらします。
  • 衰弱期
    日中の気温上昇により、山風が弱まると、次第に局地的な前線は不明瞭化し、大雨は終息します。

図4

本現象の特徴について
  • 正確な発生場所の予測が難しい現象
    南よりの風が強い場合は山地に、弱い場合は沿岸部に発生する傾向があります。
  • 発生予測が難しい現象
    早期注意情報で、警報級の可能性を「中」*としても、実際に警報を出すことになるのは半分程度です。
    *警報級の現象が5日先までに予想されているときには、その可能性を「早期注意情報(警報級の可能性)」として[高]、[中]の2段階で発表しています。
  • 警報リードタイム**が十分に確保できない現象
    **リードタイムとは猶予時間のことで、気象警報・注意報が防災関係機関や住民に伝わり安全確保行動がとられるまでにかかる時間を考慮して設けています。
    本現象は、現象発生直前の警報発表が多く、過去に平均したリードタイムは1時間程度となっています。

伊豆の気象特性

伊豆半島の南部と北部、東海岸と西海岸で気象の特性が異なっています。沿岸地方では、年平均気温が15~17℃と暖かく、一方、内陸の田方平野では日中と夜の気温差が大きく、冬期の冷え込みは強くなっています。
また、風の特性を見ると、南伊豆では西よりの季節風が強く、田方平野では南西風が卓越し、他の地域は海陸風型を示しています。
東海岸では、北東風により曇の日が多く低温となりやすい。西海岸では南西から西風が卓越します。冬期は天城山付近で降雪もみられ、積雪となることも珍しくありません。

地点名 気温(℃) 日照時間(h) 降水量(mm)
網代 16.0 1793.0 1974.5
土肥 1755.2
湯ケ島 2778.9
松崎 16.1 1950.5 1958.7
稲取 15.8 1942.0 2322.6
石廊崎 16.6 2120.1 1777.7

東部・富士山麓の気象特性

この地域は標高により気温が変わり、御殿場・白糸(標高約500m)で年平均気温が13℃位ですが、吉原(標高35m)では県内の平坦部と変わりません。
風向は、富士山・愛鷹山等の地形の影響により、東・西山麓では南と北風が卓越し、南山麓では秋から冬にかけては、西の風が現われやすく、夏は海陸風により南風が多くなっています。風速は、御殿場地方では一般に弱く、富士宮南部から岳南地方では風が強く、冬の季節風は強風となります。
降水量は、標高が高い所で多く、御殿場では年間2800mm位です。
降雪は観測地点でみると御殿場で多く、積雪の深さの最大値は54cm(1998年1月16日)です。

地点名 気温(℃) 日照時間(h) 降水量(mm)
白糸 2252.8
御殿場 12.8 1700.7 2819.1
富士 15.8 1895.2 2109.1
三島 15.9 1952.7 1874.4

中部の気象特性

中部山岳の南側にあたり、駿河湾の影響をうけて気候が温和です。
風は、静岡付近で南ないし西の風と、北東の風が顕著です。冬の季節風は、山間部では弱いですが、大井川下流から南では西よりの風が強く、春から秋には海陸風により日中は南よりの風が吹きます。
降水量は、標高が高くなるほど多くなり、静岡市の山岳部では、3000mmを超えます。

地点名 気温(℃) 日照時間(h) 降水量(mm)
井川 11.4 1919.4 3110.1
梅ケ島 3006.5
川根本町 13.8 1793.5 2988.3
鍵穴 2774.6
清水 16.3 1935.7 2367.6
静岡 16.5 2099.0 2324.9

西部の気象特性

浜松市を含めた沿岸部ではおよそ16℃くらいで、天竜から佐久間にかけての山間部では、更に1℃程度低くなっています。しかし、佐久間や天竜では、夏期に県内の最高気温を記録することがあります。
冬期遠州灘に面した沿岸部では季節風が強く、特に御前崎付近では10m/s以上の強風が吹くことがあります。一方、春から初夏にかけては一般に風は弱くなっています。
降水量は、平野部は全般に少なく、遠州地方は県内で一番雨の少ない地域で、年間降水量は1700~2000mmです。

地点名 気温(℃) 日照時間(h) 降水量(mm)
佐久間 14.6 1756.3 2231.8
2502.4
三ヶ日 1811.5
天竜 15.9 1944.6 2100.3
三倉 2348.8
浜松 16.4 2179.2 1809.1
掛川 1883.6
菊川牧之原 14.8 2121.6 2157.1
磐田 16.0 2197.4 1723.4
御前崎 16.4 2230.6 2063.4