徳島県の地震の特徴

日本周辺で発生する地震の種類

日本周辺で発生する地震は大きく2種類あり、さらに細かくわけて以下の4種類があります。


  • ┌海溝型地震──┬プレート境界の地震
  • │       └沈み込むプレート内の地震(スラブ内の地震)
  • └陸域の浅い地震┬活断層による地震
  •         └活断層以外の地震

地震調査研究推進本部:「地震がわかる!」より一部修正


プレート境界の地震

陸のプレートと海のプレートの境界では、密度の高い海のプレートは陸のプレートの下に沈み込んでいきます。沈み込んでいく際に、海のプレートと陸のプレートの間の摩擦により、陸のプレートは引きずりこまれていきますが、それにより変形させられますので、ひずみがたまっていきます。やがて、そのひずみに耐えられなくなり、陸のプレートは元の状態に戻ろうとし、大きく跳ね上がり地震が発生します。これがプレート境界の地震のメカニズムです。地震が発生するとたまっていたひずみが解消されますが、また陸のプレートとが海のプレートに引きずられるため、周期的にプレート境界の地震は発生します。


沈み込むプレート内の地震(スラブ内の地震)

沈み込んだ海のプレートは、プレート境界の動きにより、張力や圧縮力が加わる場合があり、その内部で地震が発生することもあります。これが沈みこむプレート内の地震でスラブ内の地震ともいいます。


陸域の浅い地震と活断層による地震

プレート境界の近くでは、張力や圧縮力が加わり岩盤に大きなひずみが蓄えられています。陸域の浅い所(深さ20kmより浅い所)でも多くの地震が発生します。これを陸域の浅い地震といいます。
過去に繰り返し地震を起こし、将来も地震を起こすと考えられている断層を「活断層」と言います。 日本の周辺には約 2,000 もの活断層があり、それ以外にもまだ見つかっていない活断層が多数あると言われています。徳島県周囲の活断層は徳島地方気象台HPの徳島県の活断層にまとめています。


徳島周辺の地震の地域ごとの特徴


徳島周辺の地震の地域ごとの特徴をまとめると以下の通りです。

  • ①南海トラフ地震(フレート境界の地震)
  • ②日向灘の地震(フレート境界型地震)
  • ③安芸灘~伊予灘~豊後水道の地震(スラブ内地震)
  • ④徳島県周辺のやや深い地震(スラブ内地震)
  • ⑤徳島県周辺の活断層による地震(活断層による陸域の地震)
  • ⑥徳島県南部の地震(活断層ではない陸域の浅い地震)
  • ⑦和歌山県の陸域の浅い地震(活断層ではない陸域の浅い地震)

特徴ごとの領域を徳島県で震度1以上を観測した震源の分布図上に図示すると次のようになります。



各地域の特徴について解説をします。


各地震の特徴の解説

①南海トラフ地震(プレート境界の地震)

南海トラフは駿河湾から日向灘にかけての陸側の太平洋プレートと海側のフィリピン海プレートの境界で、100~150年周期でM8~9の巨大地震が発生し、過去に地震動や津波による大きな被害記録が残されています。1946年の南海地震から70年以上経過し、30年以内に南海トラフ巨大地震が発生する確率は70~80%と推計されています。
南海トラフではプレート間の摩擦が強いため、他のプレート境界とくらべ地震活動は低調です。最近の大きめのプレート境界の地震としては2016年4月1日の三重県南東沖の地震(M6.5、深さ29km、最大震度4)で徳島県の最大震度2を観測しました。また、南海トラフ近くで2004年9月5日に三重県南東沖でM7.4(深さ44km、最大震度5弱)の地震が発生しましたがプレート境界の地震ではなくフィリピン海プレート内部の地震と考えられています。


②日向灘の地震(プレート境界の地震)

日向灘は南海トラフ巨大地震の震源域西端にあたりますが、南海トラフ巨大地震とは別に日向灘単独で20年に一度くらいでM7.0~7.5の地震が発生します。震源が浅いものは津波を引き起こし、徳島県内でも津波を記録することがあります。 1968年の日向灘地震では、徳島地方気象台で震度3を、小松島で22cmの津波を観測しています。


③安芸灘~伊予灘~豊後水道の地震(スラブ内の地震)

南海トラフ巨大地震の北西隣りの領域で、数十年に一度程度でM6~7クラスのスラブ内地震が発生します。広島県と愛媛県の間の安芸灘付近でのスラブ内の地震は「芸予地震」とよばれ徳島県内でも強く揺れる場合があります。近年では2001年3月24日に広島県で最大震度6弱、徳島県内で最大震度4を観測しています。


④徳島県周辺のやや深い地震(スラブ内の地震)

四国南海トラフはプレート間の固着が強くプレート境界の地震の活動は活発ではありません。プレート境界から下側の沈み込むプレート内ではときおりM5~6クラスの地震が発生しており、徳島県に近いところで発生した場合は強く揺れる場合があります。


⑤徳島県周辺の活断層による地震(活断層による陸域の地震)

徳島県内には中央構造線断層帯などの活断層があります。徳島県内の中央構造線断層帯で最新の活動は16~17世紀頃で、それ以降活動は見られず活動周期は短く見積もっても千年弱であることから、30年以内の発生確率は1%以下と評価されています。 徳島県の周辺での活断層による地震は、近年では1995年兵庫県南部地震で六甲・有馬断層帯の野島断層によるものです。2013年に淡路島で最大震度6弱、鳴門市で震度5弱の地震がありましたが、既知の活断層によるものではありませんでした。


⑥徳島県南部の地震(活断層ではない陸域の浅い地震)

徳島県南部では陸域の浅い地震で強く揺れる地震を観測することがあります。徳島県南部には目だった活断層は確認されておらず、地表に現れていないものや、短い活断層の可能性がりますが、発生の原因はよくわかっていません。。近年では、2015年2月6日M5.1、深さ11kmで牟岐町で震度5強、海陽町で震度5弱を観測しています。徳島県の報告では学校のガラスが割れるなどの被害がありました。
過去には1955年7月27日の徳島県南部を震源とするM6.4の地震で、当時は震度観測は職員による体感で徳島地気象台で震度4を観測しています。震源近くの那賀川町では随所に山崩れが発生し死者1名などの被害が生じました。当時の職員により被害調査報告がまとめられています。
昭和30年(1955年)7月27日德島県南部の地震踏査報告へのリンク


⑦和歌山県の陸域の浅い地震(活断層ではない陸域の浅い地震)

和歌山県、特に和歌山市付近は定常的に地震の活発な地域です。地震の規模はM5以下と中小規模ですが、震源が浅いため徳島県でも強い揺れを感じることがあります。この付近の浅いところで堅いけれども脆い性質を持つ岩石が分布して、その地盤の特性が原因と考えられています。

徳島県に被害を及ぼした主な地震

発生年月日
(日本暦)
地域(名称) 規模 (M) 被害
684.11.29
(天武13)
東海・南海・西海諸道[白鳳地震] 8 1/4 [南海トラフ地震]歴史に記録された最初の南海トラフ系の巨大地震。 山崩れ河湧き、諸国の百姓倉、寺塔、神社の倒壊多く、人畜の死傷多し。 土佐の田苑約12km2海中に沈む。津波来襲。 阿波の被害記録なし。
887.8.26
(仁和3)
五畿七道
[仁和地震]
8.0~8.5 [南海トラフ地震]京都で諸司の舎屋及び民家の倒壊多く、圧死者多数。 津波が沿岸を襲い、溺死者多数。余震多く1ヶ月続いた。 阿波の被害記録なし。
1099.2.22
(康和1)
南海道・畿内
[康和地震]
8.0~8.3 [南海トラフ地震]興福寺西金堂・塔小破、大門と回廊が倒れた。 摂津天王寺回廊倒る。 土佐で田千余町(約1,000ha)みな海に沈む。 阿波の被害記録なし。
1361.8.3
(正平16)
畿内・土佐・阿波
[正平(康安)南海地震]
8 1/4
~8.5
[南海トラフ地震]摂津四天王寺の金堂転倒し、5人圧死。 諸国の堂塔の破損破壊多し。 津波が沿岸を襲い、摂津・阿波・土佐で被害。 由岐で津波による流出1,700戸、流死60余人。 鳴門海峡では、海水がなくなる。 余震多し。
1498.9.20
(明応7)
東海道全般
[明応地震]
8.2~8.4 [南海トラフ地震]被害記録は紀伊半島以東に限られ、四国での明確な被害記録は無かった。そのため南海地震領域は連動しなかった説が強かったが、近年遺跡などからこの時期での津波の痕跡が徳島県内でもみつかっている。
1596.9.5
(慶長1)
畿内[慶長伏見地震] 7 1/2
±1/4
[活断層型地震]京都では被害多数、諸寺・民家倒壊も多く、死傷者多数。4日前には慶長伏見地震が、1日前には慶長豊後地震が発生。徳島県付近の中央構造線断層帯がこの時に動いた可能性があり、鳴門市撫養町付近で土地が隆起した説がある。
1605.2.3
(慶長9)
東海・南海・西海諸道[慶長地震] 7.9 [南海トラフ地震]津波は、犬吠岬から九州に至る太平洋沿岸を襲い、各地に大きな被害。 ほぼ同時に2つの地震が起きたともみられる。 震動による被害は少ない。 津波地震。 阿波鞆浦で波高10丈(約30m)、死100余人、宍喰で波高2丈(約6m)、死1,500余人。
1707.10.28
(宝永4)
[宝永地震] 8.4 [南海トラフ地震]我が国地震史上最大級の地震の一つ。 震害と津波の被害は東海道から九州に及び、全体で死者4,900人、潰家29,000戸。 徳島では630戸倒壊、県内で津波により全滅した村あり。
1789.5.10
(寛政1)
阿波・土佐・備前など 7.0 [地震の発生原因不明]震源は不明だが、揺れの強さから阿波国近辺と考えられている。現在の阿南市から美波町、海陽町にかけて地割れ、山崩れ、石垣が崩れるなどの被害。ほか家屋や土蔵などの被害があった。
1854.12.24
(安政1)
畿内・東海・東山・北陸・南海・山陰・山陽道[安政南海地震] 8.4 [南海トラフ地震]前日の安政東海地震の32時間後に発生した。 震害は近畿・四国が中心で、津波による被害と合わせて死者2万人、潰家2万戸と推定。 牟岐では波高3丈(9m)、家屋全滅し死者20人。 宍喰では2丈(6m)、檎では波高18尺(5.5m)、流出家屋134戸。 小松島は1,000軒の内、倒壊、火災、津波をうけ残80戸(あるいは30戸)。
1946.12.21
(昭和21)
[昭和南海地震] 8.0 [南海トラフ地震]昭和東南海地震の2年後に起こった巨大地震。 近畿・四国が被害の中心となった。 津波による被害も大きく、全体で死者1,330人、全壊11,591戸。 徳島県の被害は、死者(不明)202人、負傷者258人、住家流出413戸、全壊602戸、半壊914戸、床上浸水3,440戸、床下浸水1,057戸、 堤防決壊40ヶ所、道路損壊21ヶ所、橋流失11ヶ所、船流出330隻、田畑流出78町、田畑浸水1,734町、その他木材流出。
1955.7.27
(昭和30)
徳島県南部 6.4 [陸域の浅い地震]徳島・日和佐で震度4。現在の那賀川町域にあたる那賀川上流で被害が大きく、死者1人、負傷者8人、那賀町域で山(崖)崩れが随所に発生。
1995.1.17
(平成7)
[平成7年兵庫県南部地震] 7.2 [活断層型地震]県内は徳島地方気象台と那賀町横石で震度4(震度計による観測の移行期で、当時の徳島県内の震度観測点はこの2点)。震源の淡路島に近い鳴門市を中心に重傷者負傷者21名、住家全壊4件。

【参考文献】
宇佐美龍夫 他:日本被害地震総覧599-2012
徳島県・徳島地方気象台:徳島県自然災害誌(2017)