平成23年台風第12号による大雨(紀伊半島大水害)の紹介

台風第12号の概況

 8月25日9時にマリアナ諸島の西海上で発生した大型の台風第12号は、発達しながらゆっくりとした速さで北上した。台風は30日ごろ、小笠原諸島付近で進路をいったん西に変えた後、9月2日に四国地方に接近、3日10時頃に高知県東部に上陸して瀬戸内海に抜けた後、3日18時過ぎに岡山県南部に再上陸した。その後、台風は4日未明に山陰沖に進み、5日15時に日本海中部で温帯低気圧に変わった。

 台風第12号は大型でさらに動きが遅かったため、長時間にわたって台風周辺の非常に湿った空気が流れ込み、西日本から北日本にかけて、山沿いを中心に広い範囲で記録的な大雨となった。

2011年台風第12号の経路図

衛星画像(8月29日16時ごろから9月5日16時ごろまで)

9月2日09時の地上天気図

9月3日09時の地上天気図

9月4日09時の地上天気図

気象の状況

 8月30日17時から9月5日24時までの総降水量は、紀伊半島を中心に広い範囲で1000ミリを超え、多いところでは年降水量平年値の6割に達し、紀伊半島の一部地域では解析雨量で2000ミリを超えた。三重県内では8月30日夜から雨が降り始め、9月1日から5日朝にかけて南部を中心に長時間にわたって激しい雨が降った。特に、熊野新鹿では9月4日05時02分までの1時間に101.5ミリの猛烈な雨を観測したほか、4日04時40分に熊野市井戸町瀬戸で131ミリを観測したことから、4日05時01分に三重県記録的短時間大雨情報の発表を行った。三重県内での降り始め(8月30日20時)から9月5日12時までの総降水量は、大台町宮川で1630.0ミリ、御浜で1085.5ミリを観測する記録的な降水量となった。また、台風第12号の接近に伴い次第に風が強くなり、津では9月2日16時58分に最大風速23.7m/s(東南東)、9月2日16時50分に最大瞬間風速32.5m/s(東南東)、尾鷲では9月3日00時32分に最大瞬間風速33.7m/s(東)を観測した。そのほか、海上では、9月2日以降、6メートルを超える大しけとなった。
※津地方気象台が発表した防災気象情報及び風・波の状況等は参考資料(平成23年 台風第12号に関する三重県気象速報)参照

8月30日17時から9時5日24時までの解析雨量の積算値

降水量時系列図(8月30日17時~9月5日24時)

アメダスによる降水量の観測値

(参考)三重県内の観測所

台風第12号による三重県内での被害

 記録的な降水量となった県南部(紀勢・東紀州)の市町を中心に、三重県内全域で土砂災害や浸水害が発生した。このため、死者2名(御浜町・紀宝町各1名)、行方不明者1名(紀宝町)、負傷者17名、家屋の全壊81棟、半壊1077棟、家屋浸水1534棟の大規模な災害となった。

 また、道路の損壊が226箇所、河川の堤防決壊32箇所の被害があった。

(三重県 平成24年3月「紀伊半島大水害~平成23年台風第12号による災害の記録~」及び平成3年2月修正 三重県地域防災計画添付資料 第1部 地勢及び気象編から引用し、一部改変)

災害画像

輪中堤決壊の状況(紀宝町高岡地区)
※津地方気象台撮影(2011.9.5)

明和小学校の裏山で発生した土石流(紀宝町高岡地区)※津地方気象台撮影(2011.9.5)

参考資料