中国地方の天候

コラム


春一番 6月の降水量 最近、夏が長いと思いませんか 台風通過後の北東風 中国地方の大雪について

春一番


 気象庁では立春から春分までの間に、広い範囲(中国地方くらいの範囲)で初めて吹く、暖かく(やや)強い南よりの風のことを「春一番」と呼んでいます。

 中国地方では、「複数の気象官署等で南よりの風が最大風速10m/s以上、最高気温が前日より3℃以上高くなり、10℃以上になる。」ことを目安としています。

 このような条件が揃わずに、発表しない年もあります。

(左図、春一番を観測した2004年2月14日12時の地上天気図)

各地の風速は以下のとおりです。


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6月の中国地方の降水量

 中国地方の平年の梅雨入りは6月7日ごろで、毎年この頃から降水量が多くなります。まれに、平年の梅雨入りの時期を過ぎても梅雨空とはならず降水量の少ない年や5月終わり頃から梅雨空となり降水量が多くなる年があります。では、どういう状況のときに梅雨前半(6月)の降水量が多く(少なく)なるのでしょうか?

①地上の気圧配置の特徴

 下図は、6月の降水量が多い年の地上気圧の平年からの偏差を平均した図(左)と、少ない年の地上気圧の平年からの偏差を平均した図(右)です。これを見ると、降水量が多い年は日本の南で平年より気圧が高くなっていることが分かります。これは太平洋高気圧の勢力がこの付近で強いことに対応しています。日本の南で太平洋高気圧の勢力が強ければ、梅雨前線は北へ押し上げられます。太平洋高気圧の縁を通って南から暖かく湿った空気が流れ込み降水量が多くなります。日本の南で太平洋高気圧の勢力が弱ければ、梅雨前線の北上および暖かく湿った気流の影響が弱いため、降水量が少なくなります。

梅雨時期中国地方で降水量が多い年(左)、少ない年(右)の地上気圧の平年からの偏差
 降水量が多い年(左)は、日本の南海上で平年より気圧が高いのが分かります。

中国地方で降水量が多い年(左)、少ない年(右)の説明図

降水量が多い年(左)は、日本の南海上で平年より太平洋高気圧の勢力が平年より強く、梅雨前線が北へ押し上げられます。また、高気圧性の回転(時計回りの回転)が強まるため、太平洋高気圧の縁辺を通って南から暖かく湿った空気が流れ込みやすくなります。降水量が少ない年(右)は、太平洋高気圧の勢力が平年より弱く、梅雨前線の北上が見られません。


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最近、「夏が長い」と感じることはありませんか?
 中国地方では2014年までの10年間の夏のうち5回が暑い夏となっており、2010年~2014年は4年連続して暑い夏となりました。夏が終わり、9月となれば本来は徐々に気温が低くなり、過ごしやすい季節となります。近年の9月は、来る日も来る日も残暑に次ぐ残暑となることが多く、暑い年が多くなっています。更に10月も…、このように「夏が長い」と感じることはありませんか?下図は中国地方の30年(1981~2010年)の気温変化です。「10年あたり何℃の割合で各月は気温が変化しているか」というものをあらわしたものになります。9月や10月の気温の上昇率が大きくなっています。最近の9月や10月は気温が平年を上回ることが多く、残暑が厳しくなっています。10月と言えば衣替えの季節、そして実りの秋。中国地方はモモやナシなど国内でも美味を誇る有数の果物がたくさんあります。本来は、夏の暑さから解放され、活動的になれる季節、秋!です。この気温上昇は今後も続くのか、注意深く見守っていきましょう。
 
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台風通過後の北東風

 平年の天候で見たとおり、冬は山陰・山陽北部と山陽南部で天候が大きく異なります。他の季節でもこのような大きな違いが見られることがあります。それは、台風や発達した低気圧が日本の南岸付近に沿って東進した後に現れます。台風の通過後は、山陰はしばらく雨が続き、大雨となることもあります。これは、下図のように、台風通過後は日本海では北東風となることが多く、これにより冷たく湿った空気が山陰に吹き込むことが原因です。

   
 2011年9月21日9時(左)及び22日9時(右)の天気図

非常に強い台風第15号が通過しました。通過後は山陰では北東風の影響により雨が続き、大雨となった所がありました。

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中国地方の大雪について

 2013(平成25)年12月27日~29日にかけて、中国地方は西高東低の冬型の気圧配置となり、27日は山間部で、28日は平野部でも大雪となりました。
地上天気図の等圧線の走向により季節風の風向を、衛星画像(可視)の雲列の形状から、大雪となる要素や場所を確認してみましょう。

 
 
 地上天気図(左:27日09時、中:28日09時、右29日09時)
衛星画像 (左:27日12時、右:28日12時)

 27日~29日の地上天気図を中国地方付近について見てみると、等圧線が27日の縦縞から29日は斜めに変わっています。これは、季節風が北西から西よりに変わったことを示しています。衛星画像では、27日は全般にすじ状の雲列、28日はすじ状雲は日本海中部のみとなります。朝鮮半島北部沖の日本海の線状雲が山陰にかけて次第に雲列の幅を広め、山陰の平野部に達しています。27日は、一般的な冬型による大雪、28日は日本海寒帯気団収束帯(以下、JPCZとする。)による大雪となります。

 
 
衛星画像拡大図(12月27日12時) 衛星画像拡大図(12月28日12時)
 次に、一般的な冬型による大雪とJPCZによる大雪(鳥取県の米子で記録的な大雪:降雪の深さ日合計が観測史上1位:79cm)事例を説明します。  

冬型による大雪のタイプのちがい

 中国地方の大雪は、シベリアからの寒気団が中国山地沿いで大雪を降らせます。この寒気団は北西の季節風として日本海を渡る際に、日本海で水蒸気を補給してすじ状の雲列を形成し、すじ雲は中国地方に達する頃には十分に発達して、中国山地にぶつかって大雪を降らせます。

強い寒気団が朝鮮半島北部を通過する際に、高い山岳で分流された季節風は日本海で収束して雲列を形成し、その先端部が平野部に達して大雪となることがあります。この雲域はJPCZと呼ばれています。次に、具体的な事例を用いて説明します。

   中国山地沿いの大雪

JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)による大雪

Japan sea Polar air mass Convergence Zone

概念図(左下図)によると、北西の季節風が朝鮮半島北部の高い山岳により別れ、山岳を回り込んだ西よりの季節風と北西の季節風が日本海で収束して積雲列が形成され、発達した積雲列の先端部が山陰の平野部に達して大雪となります。衛星画像(右下図)では、朝鮮半島北部沖の日本海西部において、積雲列が南東に列状に連なり、山陰の平野部に達しています。この場合は山間部だけでなく平野部でも大雪となります。

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