春一番について

鹿児島地方気象台長 瀧下


 こんにちは、鹿児島地方気象台長の瀧下です。

 「春一番」とは、冬から春に季節が変わるころに初めて吹く暖かい南よりの強い風のことを言います。春の訪れを告げるというイメージもあって穏やかな現象を想像される方もおられると思いますが、「春一番」は別名「春のあらし」とも呼ばれています。

 立春を過ぎてくると、それまで見られた西高東低の冬型の気圧配置から、東シナ海や黄海付近で発生した低気圧が発達しながら日本海を進むことが多くなります。この低気圧に向かって吹き込む強い南風が「春一番」です。この時期に発生する低気圧は急速に発達することが多いため荒れた天気になりやすく、強風や落雷、竜巻などの突風に注意が必要です。また、台風の場合は中心付近で最も風が強くなることが多いですが、急速に発達する低気圧の場合は、より広い範囲で風が強まることがあり、海難事故や交通機関の乱れ、ビニルハウスの倒壊など影響が広範囲に及ぶことがあります。

 九州南部・奄美地方における「春一番」の発表基準は、「立春から春分までの期間に、低気圧の影響を受けて広い範囲で南よりの風が毎秒8メートル(10分間平均風速)以上吹き、気温が上昇すること」です。この様な条件を初めて満たした場合は、「春一番に関するお知らせ」として、観測された最大風速や最大瞬間風速、最高気温等を発表します。
 なお、「春一番」は期間が限定されていますので、この間に広い範囲で強い南風が吹かなければ発表しない年もあります。

 「春一番に関するお知らせ」が発表された際には、強風の他、突風や落雷などにも注意すると共に、低気圧から延びる寒冷前線の通過後は、春の陽気から一転して寒気が流れ込み、寒暖の差が大きくなりやすいことから、体調管理や農作物の管理にも注意をお願いします。

(2022年1月14日掲載)