火山の噴火警戒レベルについて

鹿児島地方気象台長 瀧下

こんにちは、鹿児島地方気象台長の瀧下です。

 日本には多くの火山があり、美しい景観や温泉など私たちに多くの恩恵を与えてくれます。一方、ひとたび噴火すると人命にかかわる災害をもたらすこともあり、火山活動の状況に留意しておく必要があります。

 鹿児島県内には、11の活火山があり、そのうち桜島、霧島山、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島の5火山については火山活動を24時間体制で観測・監視しています。これらの火山に対しては、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲(生命に危険を及ぼす範囲)」と、防災機関や火山周辺の住民の方、観光客、登山者などが「とるべき防災対応」を5段階に区分した噴火警戒レベル及びキーワード噴火警報や噴火予報に付して発表しています。

 噴火警戒レベルは、鹿児島県、地元市町村、気象台などを構成機関とする「火山防災協議会」において、警戒が必要な範囲に応じて設定されています。中でも噴火警戒レベル4と5は、居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生または予想される場合を想定しており、特別警報に位置づけています。

 噴火警戒レベル5の想定として、例えば桜島では主に2つのケースがあります。
 1つ目は『大正噴火のような大規模噴火が切迫』している場合で、桜島全域に影響する溶岩流や火砕流などを想定しています。2つ目は『これまで発生している噴火(ブルカノ式噴火)が激化』した場合で、大きな噴石の飛散などにより桜島の一部居住地域への影響を想定しています。桜島の火口に最も近い居住地域は火口から約2.5kmの距離にあるため、仮に噴石が2.4kmを超えて飛散するようなことがあれば、住民の生命に危険を及ぼす可能性があります。本年(令和4年)7月24日に発生した桜島の爆発では噴石が2.4kmを超えて飛散したため、噴火警戒レベルを5へ引き上げました。

桜島大正噴火写真(鹿児島県立博物館所蔵)
桜島の噴火警戒レベル5:大規模噴火の事例
大正噴火直後の大正3(1914)年1月12日午前10時30分頃に撮影された桜島。
鹿児島県立博物館所蔵
1986年11月23日の桜島噴火に伴う噴石落下痕
桜島の噴火警戒レベル5:これまで発生している噴火が激化した事例
1986年11月23日16時02分の南岳山頂火口で発生した爆発に伴う噴石の落下痕。噴石は屋根を突き抜けた後1階のコンクリート床を貫通し地下室まで達した。
気象庁撮影
 実際に身近にある火山に噴火警報が発表されたとき、適切な行動をとれるよう日頃から火山の活動状況を知っておくことが大切です。発表中の噴火警報、噴火警戒レベルや火山情報は気象庁のホームページ(桜島霧島山えびの高原(硫黄山)周辺大幡池新燃岳御鉢薩摩硫黄島口永良部島諏訪之瀬島)で確認することが出来ます。あらかじめそれぞれのレベルにおける警戒が必要な範囲や取るべき行動を確認して頂き、噴火活動に対して身を守る行動をお願いします。

 また、噴火警戒レベルが1の火山や噴火警戒レベルが発表されていない静穏な火山でも、活火山であることを意識しておくことも必要です。火山に登山される際には、退避壕など噴火に遭遇した際に身を隠す場所の事前確認やヘルメットや噴火速報を受信できる端末を持参するなどの準備をして頂き、登山中は火口付近の様子に気を付けるなど、常に身を守る行動が取れるよう心がけておくことが大切です。

 噴火警報など、気象台が発表する火山や気象の防災情報は、民間事業者が通知サービス(無料)を提供しています。この通知サービスでは、ユーザーが登録した地域に噴火警報などが発表された場合等に、メールやスマホアプリからプッシュ形式でお知らせが届きますので、ぜひ御利用ください。

(2022年11月1日掲載)