緊急地震速報の発表基準に「長周期地震動階級」を追加します!

鹿児島地方気象台長 瀧下

こんにちは、鹿児島地方気象台長の瀧下です。

 地震が発生すると、さまざまな揺れが起きて周辺に伝わります。大規模な地震では、揺れが1往復するのにかかる時間(周期)が長い、ゆっくりとした大きな揺れ(長周期地震動)が発生します。
 建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があります。地震波の周期と建物の固有周期が一致すると建物が大きく揺れることが知られており、これを「共振」といいます。高いビルの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と共振しやすく、共振すると高いビルは長時間にわたり大きく揺れることになります。また、「高層階の方がより大きく揺れる傾向」があります。
 
 平成23年3月に発生した「東北地方太平洋沖地震」では、東京都内の高層ビルで大きな揺れを観測したほか、震源から約700km離れた大阪市の高層ビルでも、長周期地震動により大きく長く揺れ、内装材や防火扉が破損したり、エレベーター停止による閉じ込め事故が発生しました。
 高いビルでの長周期地震動による揺れの大きさは、震度ではわからないため、「長周期地震動階級」という目安で表します。大きな揺れにより、家具類が倒れたり・落ちたりする危険に加え、大きく移動したりする危険があります。

長周期地震動階級関連解説表
長周期地震動階級関連解説表。階級1は室内にいたほとんどの人が揺れを感じる。驚く人もいる、ブラインドなど吊り下げものが大きく揺れる。階級2は室内で大きな揺れを感じ、物につかまりたいと感じる。物につかまらないと歩くことが難しいなど、行動に支障を感じる。キャスター付きの家具類等がわずかに動く。棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。階級3は経っている事が困難になる。キャスター付きの家具類等が大きく動く。固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある。階級4は立っていることができず、這わないと動くことができない。揺れに翻弄される。キャスター付きの家具類等が大きく動き、転倒するものがある。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものがある。

 令和5年2月1日から、長周期地震動により被害が発生する可能性がある場合にも「緊急地震速報」を発表するよう、予想される長周期地震動階級を緊急地震速報の発表基準に追加します。また、現在「長周期地震に関する観測情報」を地震発生から20分~30分後に気象庁HPで提供していますが、10分後程度に迅速化してオンラインによる配信も合わせて開始します。

令和5年2月1日からの「緊急地震速報(警報)の発表基準」 赤字は変更点】
発表基準は震度5弱以上または長周期地震動階級3以上を予想した場合。対象地域は震度4以上または長周期地震動階級3以上を予想した地域。
※緊急地震速報(予報)の発表条件には、長周期地震動階級1以上を予想した場合を追加します。

 高いビルやマンションなどでは、家具が倒れたり移動したりしないよう、家具類などの固定や配置に気を付けて普段から備えましょう。高いビルやマンションにいる際に、緊急地震速報を見たり聞いたりした場合は、揺れが始まるまでわずかな時間しかありませんが、長周期地震動により家具類の転倒や移動により被害を受けないよう、丈夫な机の下など安全な場所へ移動しましょう。

(2022年12月9日掲載)