出水期に備えて

鹿児島地方気象台長 菅野


 こんにちは、鹿児島地方気象台長の菅野です。

 奄美地方は平年より6日遅い5月18日ごろに、九州南部も平年と同じ5月30日ごろに梅雨入りをしたとみられます。

 鹿児島県では梅雨から台風シーズンにかけて、大雨による土砂災害や河川の氾濫などが度々発生し、全国各地でも集中豪雨による甚大な被害が発生しています。集中豪雨をもたらす現象の1つに線状降水帯があります。

 鹿児島県でも一昨年(令和3年)7月10日明け方から朝にかけて薩摩地方の北部で線状降水帯が発生し、大雨特別警報を発表しました。甚大な被害をもたらす線状降水帯の発生を事前に予測することは技術的に困難ですが、できるだけ早めの避難につながるよう、昨年(令和4年)6月から、九州南部・奄美地方のどこかで線状降水帯の発生する可能性が高いと予想された場合に、半日程度前から気象情報で呼びかけをしています。
 また、今年(令和5年)5月25日から、迫りくる大雨による災害への危機感をいち早く高めていただくため、これまで線状降水帯発生の基準を実況で満たしたときに発表していた「顕著な大雨に関する気象情報」を、予測技術を活用し、最大で30分程度前倒しして発表することを始めました。

 毎日の天気予報で雨の予報が出ている場合は、大雨の早期注意情報(警報級の可能性)を確認してください。[中]や[高]の予想があるときは警報級の大雨となる可能性があります。鹿児島地方気象台が段階的に発表する大雨や洪水の注意報・警報などの防災気象情報、雨雲の動きキキクル(危険度分布)を活用し、早め早めに自ら安全な場所へ移動する判断をしてください。キキクル(危険度分布)では、遅くともお住いの地域に「危険(紫色)」が出現した時点で速やかに安全な場所に避難を開始することが重要です。雨雲の動きやキキクルなどの気象情報は、スマートフォンなどで気象庁ホームページを確認していただくようお願いします。(参考:気象庁ホームページ防災情報ページカスタマイズ案内)

 日頃から、市町村が作成しているハザードマップなどでお住いの地域にどのような危険があるか確認していただき、大雨となった際の避難場所や避難経路を確認しておいてください。避難先としては、避難所だけでなく安全な親戚・知人宅なども考慮してください。また、大雨や洪水の注意報・警報が出ている時は、崖には近づかない、川の様子や田畑の様子を見にいかないようにお願いします。大雨による災害が想定される地域にお住いの方は、市町村から発令される避難情報に従い、適切な避難行動をとってください。周りの状況を確認し、避難場所への避難がかえって危険な場合は、少しでも崖や沢から離れた建物や、少しでも浸水しにくい高い場所に移動するなど、身の安全を確保してください。

 少しでも危険を感じた場合には、自ら安全な場所へ移動する判断をお願いします。自分の命、大切な家族の命を守るという強い意識を持って、大雨に備えましょう。

(2023年6月7日掲載)