鳥取県の地震・津波の特徴

鳥取県で発生する地震の特徴

 鳥取県内を震源として発生する地震は、基本的に内陸の浅い地震です。図1は気象庁で全国の地震の震央を一元的に決定し始めた1997年10月から2021年にかけて発生した、マグニチュード0.5以上の地震が発生した位置(震央)を赤色の点で表した震央分布図と東西・南北方向の断面図ですが、断面図を見るとほとんどの地震が20kmより浅いところで発生していることがわかります(※西部にある深さ30km付近の地震は通常の地震とは発生原因が異なる低周波地震と呼ばれるもので、地下で流体が移動する際に発生していると考えられています)。

 この震央分布図からは、「平成12年(2000年)鳥取県西部地震」や平成28年の「鳥取県中部の地震」の活動域を除き、概ね鳥取県の東部から西部にかけて東北東から西南西へ直線状に震央が並んでいるのが見て取れます。さらに、分布図上に青丸で示している1922年以降に発生し被害をもたらした地震の震央が、この線状の領域付近に分布していることがわかります。

鳥取県の地図を東北東から西南西へ列をなすように、マグニチュード0.5以上の地震の震央を示す赤点が直線状に分布している。その線に沿うように過去に鳥取県周辺で発生した被害地震の震央が青丸で示されている。

図1:震央分布図および東西・南北断面図(1997年10月~2021年)と主な被害地震

 この領域は京都大学防災研究所の西村教授の提唱によって「山陰沿岸のひずみ集中帯」と呼ばれています。国土地理院のGNSS観測局の地殻変動解析により、鳥取県の大地が日本の周囲のプレートから圧力を受けて東西に圧縮されるように応力がかかっており、これが地下の岩盤の歪みとしてエネルギーが溜まり続けています。この歪みに耐え切れなくなった岩盤が壊れることで地震が発生しています。その破壊によって生じた地震の断層は、そのほとんどが北北西ー南南東方向か東北東ー西南西方向にずれる横ずれ断層となっています。 2000年の鳥取県西部地震は前者、1943年の鳥取地震は後者の例となります。

 また、過去の地震の発生状況を見ると、鳥取県では比較的近い範囲で同程度の規模の地震が、比較的短い間隔で続発しやすい傾向があります。図2では鳥取県内で地震が続発した事例を、各事例ごとに色分けして示しています。県内でマグニチュード5クラスの地震が発生しその後の地震活動が活発になった場合、1週間から1年程度はさらに規模の大きい地震の発生に警戒が必要なことをこの図は示しています。

図2:地震調査研究推進本部による鳥取県内での続発事例
(1923年~2016年6月、M≧5.0、深さ30km 以浅)

鳥取県で発生する津波の特徴

 山陰地方の沖合の日本海では、被害を及ぼすような津波を引き起こした地震の発生は知られていませんが、鳥取県の西部から島根半島や隠岐諸島では、江戸時代以前から津波被害の記録が残っています。その多くは日本海東縁部の海底で起きた地震によるもので、近年では1983年の日本海中部地震や、1993年の北海道南西沖地震によって発生した津波が、山陰沿岸まで届き、主に鳥取県の西部の港湾で被害が発生しています。第1波に比べ、最大波は遅れて届く傾向にありますが、第1波が到達した後は、最大波でなくとも何時何処で被害を生じる津波が海岸を襲うかわかりませんので、海岸には近づかず安全なところに避難する必要があります。

 また、南米のチリ沖で発生した大地震や東北地方太平洋沖地震の際にも津波が観測されています。

地震 M 津波の高さ 鳥取県内の被害状況
境検潮所
の記録
現地調査
(最大)
新潟地震
1964(昭和39).6.16
7.5 71cm
(波高)
新潟地震の鳥取県内現地調査及び被害を記載した文献はありません。
日本海中部地震
1983(昭和58).5.26
7.7 42cm 120cm 一部の漁港で船が岸壁に接触して軽微な損傷を受けた。
北海道南西沖地震
1993(平成5).7.12
7.8 37cm 90cm 赤碕町(現琴浦町)赤碕漁港で係留中の遊漁船(1.7t)が転覆。
青谷町(現鳥取市青谷町)の夏泊漁港と長和瀬漁港で漁船数隻が岸壁に乗り上げ一部損傷。

鳥取県に被害をもたらした主な地震

 鳥取県では、図1で示したように何度か被害を引き起こした地震が発生していますが、ここでは近年に発生した、以下の3つの地震について紹介します。

  • 鳥取地震:1943年9月10日 深さ0km M7.2
  • 平成12年(2000年)鳥取県西部地震:2000年10月6日 深さ9km M7.3
  • 鳥取県中部の地震:2016年10月21日 深さ11km M6.6
  • 活断層

    鳥取県の活断層

     地震調査研究推進本部の調査によると、県内でランク付けされた活断層は4つあり、周辺にも発生確率の高い活断層が2つあります。

    鳥取県内と周辺の活断層を地図上に示しその名称とランク、地震の規模を示している

    ・鹿野-吉岡断層

     1943年の鳥取地震の震源断層として有名です。鹿野町から鳥取市にかけて雁行状に西南西から東北東方向へ延び、延長約26kmの横ずれ断層です。断層面は地表に対しほぼ垂直になっていると考えられており、その幅は15~20km程度とみられます。

     京都大学が行った調査では、鳥取地震の一つ前の活動は9,200年前~1,300年前の間に発生したと推定されており、活動した場合の地震の規模はM7.2程度、平均活動間隔は4,600年~9,200年です。前回の活動である鳥取地震からさほど時間が経過していないため、今後30年の地震発生確率はほぼ0%で、Zランクです。地震後経過率は0.008-0.02で信頼度は「低い」となっています。

    図3 鳥取地震の際に断層の動きで右へずれた用水路(鳥取市鹿野町法楽寺)。
    山陰海岸ジオパークのジオサイトに指定されています。

    ・雨滝-釜戸断層

     岩美町から鳥取市国府町にかけて、北西ー北東方向へ延長約13kmに渡って伸びている活断層です。断層面は高角な北東傾斜と推定されていて、幅は不明ですが15~20km程度ある可能性があります。

     鳥取県が行った調査によると、この断層の最新活動時期は7,600年前~3,700年前の間であった可能性があります。活動した場合の地震の規模はM6.7程度で平均活動間隔は約2万年程度の可能性があり、今後30年の地震発生確率はほぼ0%で、Zランクです。地震後経過率は0.2-0.4で信頼度は「かなり低い」です。

    ・岩坪断層

     鳥取市安蔵~上砂見にかけて、概ね東西に延びる約10kmの長さの右横ずれ断層。詳しい現地調査は実施されておらず、地形の特徴から存在が推定されています。

     名称のもととなった岩坪地区周辺には、断層崖や風隙などの断層地形がみられ、山陰海岸ジオパークのジオサイトに指定されている。

     断層の長さから活動した場合の地震の規模はM6.5と推定されており、調査が行われていないため、今後30年の地震発生確率は不明でXランク、地震後経過率は不明です。

    ・日南湖断層

     鳥取県日野郡日南町印賀から花口にかけて分布する活断層です。概ね北西ー南東方向に延び、その長さは約13kmで、横ずれを主体としています。活動した場合の地震の規模はM6.7です。過去に調査が行われたことはありますが過去の活動は判明しておらず、今後30年の地震発生確率は不明でXランク、地震後経過率は不明です。

    鳥取県周辺の活断層

    ・宍道(鹿島)断層

     島根県松江市鹿島町から美保関町にかけて分布する活断層です。境港市の対岸の島根半島に存在し、この活断層で地震が発生すると鳥取県西部で大きな揺れが生じる可能性があります。

     この断層は、活動した場合の地震の規模がM7.0以上で平均活動間隔は3,300年~4,900年と推定されていますが、前回の活動について2つの説が存在し、それが奈良時代から平安時代(ケース1)であれば、今後30年の地震発生確率はほぼ0%~0.003%(Zランク)、地震後経過率は0.1-0.4ですが、約5,900年前~3,700年前であれば、発生確率は0.9%~6%となり、Sランクで地震後経過率は0.8-1.8となります(経過率の信頼度は「低い」です)。

    ・山崎断層帯

     岡山県東部から兵庫県南東部にかけて分布する活断層帯です。そのうち岡山県内の部分は那岐山断層帯として山崎断層帯主部と区分して考えられています。

     那岐山断層帯は岡山県苫田郡鏡野町から岡山県勝田郡奈義町に至る、長さ約32kmの東西に延びる活断層で、活動した場合の地震の規模はM7.3程度、平均活動間隔は24,000年~53,000年程度で、最新の活動時期は不明(従って、地震後経過率は不明)ですが、今後30年の地震発生確率は 0.06%~0.1%(Zランク)と見積もられています。

     山崎断層帯主部は岡山県美作市から兵庫県三木市に至る断層帯で、ほぼ西北西−東南東方向に一連の断層が連なるように分布しています。全体の長さは約79kmで、左横ずれが卓越する断層帯です。鳥取県に近い北西部が活動した場合の地震の規模はM7.7程度、平均活動間隔は約1,800~2,300年で、最新活動時期は868年の播磨国地震と見られており、今後30年の地震発生確率は0.1~1%でAランク、地震後経過率は0.5-0.6で信頼度は「中程度」となっています。