観測・予報体制の進展と防災気象情報の高度化

警報や注意報の発表対象地域(細分地域)

 平成5年(1993年)当時、県内には96の市町村がありました。警報や注意報は、これらを薩摩地方、大隅地方など、県内を6つの細分地域に分け、細分地域毎に定めた「雨量基準」により発表していました。

 令和5年(2023年)現在、県内43市町村毎(薩摩川内市は甑島を分割して44の二次細分区域)を対象に、防災気象情報を発表しています。また、二次細分区域毎にきめ細かく定めた3つの指数(表面雨量指数、土壌雨量指数、流域雨量指数)を基準として、大雨と洪水に関する警報や注意報を発表しています。

警報や注意報の発表対象地域

アメダス(地域気象観測システム)

 平成5年(1993年)当時、89型地域気象観測システム(アメダス)は、風向風速、気温、降水量、日照時間の4要素を観測し、1時間毎に配信していました。

 令和3年(2021年)3月に更新された最新の19型地域気象観測システム(アメダス)では、日照時間の観測を終了し、気象衛星観測のデータを用いた推計値としました。代わりに湿度を加えた4要素の観測とし、結果は10分毎に配信されています。加えて、船舶やマイクロ波放射計による水蒸気観測データの利用開始・拡充や局地モデル・メソアンサンブル予報システムの改良により、線状降水帯の予測精度の向上等、主要な数値予報モデルの予測精度が改善されました。

平成5年当時のアメダス

気象観測衛星ひまわり

 平成5年(1993年)当時、気象衛星ひまわり4号は、可視、赤外の2種類の波長でそれぞれ1.25km、5kmの解像度で1時間毎に観測していました。最新のひまわり8号と9号は、計16バンドのセンサーを備え、地球全体の観測を10分毎に行いながら、特定の領域を高頻度(例:日本域を2.5分毎)に観測することができます。さらに、空間分解能は可視で0.5km~1km、近赤外と赤外で1km~2kmとなっています。これらにより、台風や集中豪雨をもたらす雲等の移動・発達を詳細に把握でき、また火山灰やエーロゾルの分布も高精度に把握できます。得られた観測データは、雲画像として利用されるほか、上空の風向風速や温度など多くの物理量が計算され、数値予報など様々な用途に活用されています。

気象衛星ひまわりの変遷

気象観測衛星ひまわりの観測例

気象観測衛星ひまわりの観測例(令和4年台風第14号)
気象観測衛星ひまわりの観測例(西之島の噴煙)
気象観測衛星ひまわりの観測例(フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の大規模噴火)
気象観測衛星ひまわりの観測例(黄砂)

気象レーダー観測システム

 平成5年(1993年)当時、気象レーダー観測は部内向けに解像度2.5kmの雨量強度データ(雲長高度は1時間に1回)を7.5分毎に配信していました。その後、平成20年(2008年)のドップラー化により、雨雲の強度に加えて動きを立体的に観測できるようになりました。気象ドップラーレーダーの観測結果は、同年3月から開始された竜巻注意情報の発表や数値モデルの初期値として活用されています。

 また、令和4年(2022年)には、二重偏波化により雨量強度の精度が向上し、将来的には雨雪の判別も期待されています。これらにより、急速に発達する積乱雲や線状降水帯の監視に威力を発揮しています。

 さらに、インターネットの普及により、平成14年(2002年)から気象庁HPでは様々な防災気象情報とともにリアルタイムで公開されています。

気象レーダー観測システム

平成5年8月6日17時30分の気象レーダー画像

 平成5年(1993年)当時は、解像度2.5kmのデータを7.5分毎に配信していましたが、現在では解像度1kmのデータを5分間隔で観測し、気象庁HPで広く公開しています。下の図は平成5年8月6日17時30分の気象レーダー画像(左)とこれを現在の解像度1kmに変換(内挿法)したものです。

平成5年8月6日17時30分の気象レーダー画像

レーダー・アメダス合成図から解析雨量へ

 平成5年(1993年)当時、気象レーダーをアメダス雨量計で補正したレーダー・アメダス合成図(現在の解析雨量)と3時間先までの降水短時間予報が部内向けに1時間に1回配信されており、雨量計が設置されていない場所でも大雨を監視可能となっていました。平成5年8月6日アメダスの雨量計では、八重山地域気象観測所の18時までの1時間65ミリが最大でしたが、レーダー・アメダス合成図(左下図)では、80ミリ以上の値が出力されており、大雨情報の発表判断に活用されました。

 最新の解析雨量は、解像度1km(5倍)、配信間隔は30分毎(2倍)、速報解析版は10分毎(6倍)に作成、配信されています。解析雨量から、大雨警報や洪水警報の基準となる3つの指数(表面雨量指数、土壌雨量指数、流域雨量)が作成され、防災気象情報の判断やキキクルの作成に活用されています。

レーダー・アメダス合成図から解析雨量へ

解析雨量から3つの指数、そしてキキクルへ

 解析雨量と降水短時間予報を活用して、 3つの指数(①表面雨量指数、 ②土壌雨量指数、③流域雨量指数)を計算し、各指数は市町村毎に発表する大雨や洪水に関する警報や注意報の基準として判断に活用しています。

 さらに、キキクル(危険度分布)で災害種別(①浸水害、②土砂災害、③洪水害)毎の警報発表の危険度を地図上に表示することが可能となりました。

解析雨量から3つの指数、そしてキキクルへ

防災気象情報のレベル化と対応行動の整理

 平成5年(1993年)当時、大雨警報、洪水警報が最も災害発生の危険度の高い防災気象情報でした。現在では、これらに加えて、特別警報、土砂災害警戒情報、早期注意情報等が加わり、段階的に発表しています。

 また、自治体や気象庁等から発表される防災気象情報を用いて住民がとるべき行動を直感的に理解しやすくなるよう、下図のとおり5段階の警戒レベルが分かるように防災気象情報を提供しています。

防災気象情報のレベル化と対応行動の整理
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