覚えていますか? 東日本台風の記録

どのような台風だったのか?

19時前に上陸し、関東を北上した

 10月6日に南鳥島近海で発生した台風第19号は、マリアナ諸島を発達しながら西へ進み、7日には大型で猛烈な台風となりました。

 その後、日本の南を発達しながら北北西に進み、12日昼頃から北北東に進路を変え、19時前に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸しました。

 その後も北北東に進み、夜遅くには埼玉県南部を通過し、13日未明に福島県沖に達しました。

図1 図2
  図1 台風経路図(令和元年東日本台風)

  図2 衛星画像(赤外)

北・東日本の広い範囲で大雨が降った

 この台風では、東日本の広い範囲で大雨になりました。

 軒並み、太平洋側で赤色の300ミリを超える雨が見られ、17の地点で500ミリを超え、箱根では1000ミリもの記録的な雨になりました。

 これは一年間に降る雨の30パーセントに相当します。

 この雨を想像できますか? 1000ミリの雨は、観測場所に一様な雨が降ったとすると、箱根では1平方メートルに1000kg(1t)の雨が降ったことになります。

 この雨が、みなさんのところで降ったらどうなるでしょうか。

図3

 図3 期間降水量分布図(2019年10月10日0時~10月13日24時)

災害をもたらした気象事例「台風第19号による大雨、暴風等」(気象庁HP)より抜粋

埼玉県でも記録的な大雨

 埼玉県でも記録的な大雨となりました。

 10月10日19時から12日24時までの総降水量は、秩父市浦山で687.0ミリ、ときがわで604.5ミリ、秩父市三峰で593.5ミリと記録的な大雨となりました。

 この期間の最大1時間降水量は、寄居で62.0ミリ(12日16時22分まで)、秩父市浦山で59.0ミリ(12日15時01分まで)、所沢で51.0ミリ(12日20時58分)など非常に激しい雨となった所がありました。

 なお、12日は秩父市浦山など多くの地点で日降水量の極値を更新しました。

図4

 図4 解析雨量※と埼玉県における日降水量(2019年10月12日)
 ※解析雨量とは、気象レーダーとアメダス等の地上の雨量計により観測されたデータを組み合わせ、1㎞四方ごとに過去1時間雨量分布を解析したものです。

R1.10.15「台風第19号に関する埼玉県気象速報」(熊谷地方気象台)より抜粋

台風接近前から激しい雨

 埼玉県では、台風接近前から激しい雨が降り、強弱を繰り返しながら半日以上継続しました(秩父市浦山で激しい雨が降り始めた時点で台風は八丈島の西海上でした)。更に台風の接近・通過に伴い、台風本体の雨雲もかかり記録的な大雨となりました。

 台風の中心から離れていても、台風の周りから暖かく湿った空気が入り大雨となることがあります。

 また、台風中心の北東側は竜巻などの激しい突風が発生しやすいため注意が必要です。

図5 図6
 図5 アメダス観測所の降水量 令和元年10月12日 1時~24時
   棒:1時間降水量(左軸)
   折線:積算降水量(右軸)
   赤実線・赤字:10月の月降水量平年値
 図6 地上天気図(令和元年10月12日9時)



R1.10.15「台風第19号に関する埼玉県気象速報」(熊谷地方気象台)より抜粋

北・東日本の広範囲で大雨の特別警報が発表

 台風上陸前日の気象庁の記者会見では、「広い範囲で記録的な大雨となる見込み、状況によっては、大雨特別警報を発表する可能性がある」と、前日からの異例とも言える言及をしていました。

 12日は台風が上陸する前から大雨が降っていました。今後、数十年に一度の、これまでに経験したことのないような、重大な危険が差し迫っていることから、15:30、19:50、0:40に大雨の特別警報を順次発表していきました。

 図7 

 図7 特別警報を発表した区市町村と各都県の発表の時刻

 「台風第19号の事例における雨量等の予測と実際の状況等について(速報)」(気象庁HP)より抜粋

気象台の情報発表状況(熊谷地方気象台)

 こちらは、熊谷地方気象台の特別警報・警報・注意報、指定河川洪水予報、土砂災害警戒情報の発表状況を、発表は埼玉県内の最も早い時間、解除は最も遅い時間で示したものです。

 大雨特別警報:10月12日15時30分から12日22時45分にかけて、5回40市町村に発表しました。

 指定河川洪水予報:10月12日から14日にかけて、国管理河川を23回、県管理河川を11回発表しました。また、入間川流域では、氾濫発生情報を発表しました。

 土砂災害警戒情報:10月12時07時00分から14日14時10分にかけて、16回、41市町村に発表しました。

 気象台の情報発表状況(熊谷地方気象台)

  


 R1.10.15「台風第19号に関する埼玉県気象速報」(熊谷地方気象台)より一部を抜粋して作成、県内の最早最遅で作成

 図8 

 図8 大雨特別警報・土砂災害警戒情報の発表市町村

広範囲で風が強かった

 こちらは、東日本台風の際の最大瞬間風速の分布です。

 赤いところは瞬間で30メートル以上が吹いていて、黒い四角は観測史上一位を更新した観測地点です。

 東京や千葉でも瞬間で40メートル以上が吹いていました。

 このくらいの風になると、通常走行している電車は転覆することがあります(日本版改良藤田スケール DI16、DOD1の先頭車両より転覆 代表値40m/s)。

 台風自体が大きかったこともあり、このように広い範囲で観測史上一位を更新していました。

 図9 

 図9 期間最大瞬間風速分布図(2019年10月10日0時~10月13日24時)

 災害をもたらした気象事例「台風第19号による大雨、暴風等」(気象庁HP)より抜粋

関東の沿岸では波が高かった

 こちらは台風が関東地方を通過した頃の波の高さです。

 静岡県の石廊崎(いろうざき)という観測所では13.24mを観測しています。これは清水寺の舞台の高さや金閣寺の高さと同じくらいです。

 日本海に面した京都府の経ヶ岬(きょうがみさき)の観測所では9.13mの波、これは、この観測所で過去最高の波の高さを観測しました。

 9mを超えると気象庁では「猛烈なしけ」と表現しますが、台風の規模が大きいため、日本海側でも猛烈なしけとなっていました。

図10 

 図10 沿岸波浪実況図(2019年10月12日21時)

 災害をもたらした気象事例「台風第19号による大雨、暴風等」(気象庁HP)より抜粋

関東の沿岸では高潮も発生していた

 また、この台風では、幾つかの地点で過去最高の潮位も観測していました。

 静岡県の石廊崎(いろうざき)では、通常時より2mも高くなっていて、※がついているのは過去最高となった地点です。

 波は海の上のほうが変動する現象ですが、高潮は、海自体の高さが変動する現象です。

 海面全体が2m高くなるというのは、津波同様、かなりのエネルギーがあるのです。

 

 <記録的な高潮となった理由>

 ・台風通過時の気圧が低かったこと(伊豆半島上陸直前955hPa)

 ・台風接近時の暴風により、海水が海岸に吹き寄せられたこと

 ・台風が接近した時間帯が満潮時刻に近かったこと

 ・10月14日が満月で大潮の時期にあたり、満潮時の潮位が平常時より高かったこと

 ・夏から秋にかけての期間は海水温が高く、海水の膨張により冬から春にかけての期間に比べ潮位が高かったこと

 など

 (参考)

 ・最大潮位偏差は天文潮、通常時と比べて、どの程度高くなったかというものです。

 ・最高潮位は基準とする高さ、通常は東京湾平均海面(TP)から測った海面の高さです。

戻る
令和元年東日本台風トップページ
次へ
過去最強の台風だったのか?