奈良県における気候変動

1. はじめに


 20世紀半ば以降に見られる地球規模の気温の上昇、すなわち現在問題となっている地球温暖化の支配的な原因は、人間活動による温室効果ガスの増加である可能性が極めて高いと考えられています。
 ここでは、奈良県における気候変動を中心に記述しています。
 なお、奈良県のこれまでの気候変動及び将来予測については、以下のリーフレットにも掲載していますので、ご覧ください。

 奈良県の気候変動リーフレット[PDF]


2. 奈良のこれまでの気候変動


《気温》

  これまでの変化

  • ・奈良では年平均気温が100年あたり約2.2℃上昇しています。
  • ・猛暑日や熱帯夜の日数については、1990年代以降の発生数は特に多くなっています。


図 奈良の年平均気温の経年変化

細線(黒)は各年の平均気温、太線(黒)は年平均気温の5年移動平均値、直線(赤、緑、青)は長期変化傾向を示す。

は観測地点の移転を示します。移転による影響を補正しているため、移転以前の値は観測統計値とは異なります。






《降水量》

  これまでの変化

  • ・奈良の年降水量は、年毎の変動幅が大きく、はっきりした傾向はありません。
  • ・奈良県内のアメダスでは、短時間に降る激しい雨(1時間降水量30mm以上)の回数には増加傾向が表れています。
  • ・近畿地方では、短時間に降る非常に激しい雨(1時間降水量50mm以上)の回数には増加傾向が表れています。









《生物》

ソメイヨシノの開花日、イロハカエデの紅葉日の年々変動については、生物季節観測をご参照ください。

3. 奈良のこれからの気候予測


 以下の説明では、20世紀末(1980~1999年の平均)と比較した21世紀末(2076~2095年の平均)将来予測を、 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)で用いられた以下2つの代表的濃度経路(RCP)シナリオについて示しています。


2℃上昇シナリオ

 RCP2.6シナリオでは、21世紀末の世界平均気温が、工業化以前※と比べて0.9~2.3℃上昇する可能性が高いことから、 以下の説明では「2℃上昇シナリオ」と表記しています。これは、パリ協定の2℃目標が達成された世界でありうる気候の状態に相当します。 RCP2.6はIPCC第6次評価報告書(AR6)のSSP1-2.6に近いシナリオです。


4℃上昇シナリオ

 RCP8.5シナリオでは、21世紀末の世界平均気温が、工業化以前※と比べて3.2~5.4℃上昇する可能性が高いことから、 以下の説明では「4℃上昇シナリオ」と表記しています。これは、追加的な緩和策を取らなかった世界であり得る気候の状態に相当します。 RCP8.5はIPCC AR6のSSP5-8.5に近いシナリオです。


 ※1750年より前の期間を示しますが、世界的な観測が行われるようになった1850-1900年の観測値で代替しています。



図 1986~2005年平均に対する世界平均地上気温の変化

 予測と不確実性の幅(陰影)の時系列を、RCP2.6(青)とRCP8.5(赤)のシナリオについて示した。 黒(と灰色の陰影)は、モデルにより再現した過去の推移を示す。 全てのRCPシナリオに対し、2081~2100年の平均値と不確実性の幅を彩色した縦帯で示している。 数値は、複数モデルの平均を算出するために使用したモデルの数を示している。 (出典:図, IPCC AR5 WGⅠ SPM Fig. SPM.7(a))


《気温》

  これからの変化

  • ・いずれのシナリオにおいても21世紀末の奈良の平均気温は上昇し、多くの地域で猛暑日や熱帯夜の日数が増加、冬日の日数が減少すると予測されます。

表 奈良県の年平均気温及び階級別年間発生日数の将来変化

2℃上昇シナリオによる予測4℃上昇シナリオによる予測
年平均気温約1.3℃上昇約4.2℃上昇
【参考】世界の年平均気温(約1.0℃上昇)(約3.7℃上昇)
猛暑日の年間日数約5日増加約24日増加
真夏日の年間日数約17日増加約56日増加
熱帯夜の年間日数約4日増加約38日増加
冬日の年間日数約20日減少約52日減少

猛暑日:日最高気温35℃以上、真夏日:日最高気温30℃以上、熱帯夜:日最低気温25℃以上、冬日:日最低気温0℃未満

「これからの変化」とは、21世紀末(2076~2095年の平均)の予測を20世紀末(1980~1999年の平均)と比較したものです。


※ 算出期間が異なることから【参考】としています。世界の年平均気温の算出期間:1986~2005年の平均を基準とした、2081~2100年の平均との差


《降水量》

  これからの変化

  • ・近畿地方で見た場合、大雨や短時間強雨の発生頻度や強さは増加し、雨の降る日数は減少すると予測されます。

表 近畿地方の雨の将来変化

2℃上昇シナリオによる予測4℃上昇シナリオによる予測
1時間降水量50mm以上の回数約1.9倍に増加約2.4倍に増加
日降水量200mm以上の回数約2.0倍に増加約2.7倍に増加
年最大日降水量約1.1倍に増加約1.2倍に増加
無降水日日数約4日増加約12日増加

※1年で最も多くの雨が降った日の降水量

「これからの変化」とは、21世紀末(2076~2095年の平均)の予測を20世紀末(1980~1999年の平均)と比較したものです。


4. 気象庁の取り組み


 気象庁では、地球温暖化を始めとする地球環境問題に対して積極的に取り組んでいます。
 「気候変動監視レポート」として、 世界や日本の気候変動や温室効果ガス、オゾン層の状況について年に1回刊行しています。また、月に1回気象庁HPで速報を発表しています。
 さらに、日本の気候変動について、これまでに観測された事実や、今後の世界平均気温が2℃上昇シナリオ(RCP2.6)及び4℃上昇シナリオ(RCP8.5)で推移した場合の将来予測をとりまとめ、 2020年12月4日に「日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」として文部科学省と共同で公表しました。
 このように実態を把握し、将来の予測を立ててその影響を評価し公表することで、地球温暖化に関する理解や、対策検討資料としての活用の促進を図っています。また、これらの気候変化に関するデータ等の提供も可能です。

 気象台では広報活動の一環として、地球温暖化に関する「出前講座」を行っています。 ご希望の方は業務・危機管理官室までお問い合わせ下さい。


5. 地球温暖化に関連したウェブサイト


気象庁 地球環境・気候
「地球温暖化に関する情報」
環境省
奈良県の環境情報サイト エコなら(令和4年3月9日時点で不具合を生じており、復旧のめどはたっておりません。)→ 奈良県 環境政策課
全国地球温暖化防止活動推進センター