1994年7・8月の大気の流れの特徴―詳細解説―

 図10-4は1994年の7~8月におけるOLR(Outgoing Long Radiation;外向き長波放射量)の平年偏差を表していて、積雲対流活動の活発・不活発の推定に用います(青色領域が対流活動活発域を表す)。 南シナ海からフィリピン東海上にかけての熱帯の積雲対流活動が、平年より活発になっていることがわかります。 この付近の対流活動活発の応答により、対流圏下層の太平洋高気圧の北西部にあたる日本付近で気圧が強められています(図10-5)。 このような大気の流れはPJ(Pacific Japanの略)パターンと呼ばれていて、晴れて暑い日が続くときによく見られる大気の流れの特徴です。

図10-4 図10-5

 熱帯の対流活動の活発・不活発は対流圏上層の流れにも影響を与えます。図10-4のOLR平年偏差の分布図を見ると、熱帯の対流活動がインド洋北部から南シナ海、フィリピン付近まで活発となっています。この対流活動活発の対流圏上層大気の応答としてチベット高気圧の勢力が強くなります。それによりチベット高気圧の北側の張り出しが平年と比べて強くなり、北東側にあたる日本付近への張り出しも顕著となっています(図10-6)。
 また、チベット高気圧北側の縁を流れる上空の偏西風(亜熱帯ジェット)が日本では北に蛇行しており、日本付近の上空も高気圧性循環偏差に覆われています(図10-6)。
 このように日本付近は背の高い高気圧(上層から下層まで高気圧)に覆われ、下降気流により空気が断熱圧縮された結果、地上気温は高温が持続したと考えられます(図10-7)。また、局地的にフェーン現象に日射による昇温が加わるなどにより、記録的な高温になった所がありました。

図10-6 図10-7

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