気象、地震、火山、海洋の知識 - 天候のはなし


九州北部地方の天候の特徴(解説)

 ここでは、九州北部地方の天候が季節とともにどう変わり、それがどのような大気の流れによってもたらされているかについて解説します。また、春の低温(日照不足)や夏の高温(少雨)など、年によって現れる、平年と大きく違う天候のうちのいくつかを、具体的な例をあげて解説します。



九州北部地方の平年の天候

 九州北部地方は、標高1500mを超える山々が、九州のほぼ中央を南北に連なっています(図1-1)。その西側と東側(大分県付近)では季節により天候に差があり、特に冬は大きくなります(西側より東側の方が日照時間が多い)。
 九州山地や筑紫山地、山口県の中国山地に面した平野、さらに有明海に面して一方を山地に囲まれた佐賀・筑紫、熊本平野などは、周囲の地形や地理的条件がその地域の気候特性に寄与しており、図1-2の年降水量分布にもよく現れています(平野部は周辺の山地と比べて降水量が少ない)。
 その他の特徴的な点として、九州山地沿いの東側斜面で降水量が多いことがわかります。 9月前後の台風の接近が多くなる季節に、東側斜面は台風の影響を受けやすいためと考えられます。 また、比較的緯度が低い地域(北緯32~33度付近)は、梅雨の季節に梅雨前線や低気圧の影響を受けやすいため、緯度が高い地域(北緯34度付近)と比べて降水量が多い分布となっています。

図1-1
図1-1 九州北部地方の地勢図
※九州北部地方各県の気象官署の位置も記入している
図1-2
図1-2 九州北部地方の年降水量分布(平年値)

 図1-3は、各県の気象官署における気象要素の季節変化を表しており、季節による地域間の違いが見られます。
 冬に現れやすい冬型の気圧配置(西高東低)の際に、北西の季節風で日本海から流れてくる対流雲の影響を受けやすい地域(日本海に近い福岡や下関)では日照時間が少ないことがわかります。 反対に、そのような雲の影響を受けにくい大分では日照時間が多いことがわかります。 日本海に近い福岡や下関などの冬は、他の日本海側の地域(山陰や北陸地方など)とは少し異なり、日照時間が少ないだけでなく降水量も少ない傾向にあります(コラム1参照:九州北部地方(福岡)の気候は日本海型?)。
 夏~秋の降水量については、梅雨期間(6~7月)は、梅雨前線や低気圧の影響を受けやすい九州山地の西側に位置する熊本で顕著に多くなっていますが、台風の季節である9月は、台風の影響を受けやすい九州山地の東側に位置する大分で多くなっていることがわかります。

図1-3
図1-3 九州北部地方の各県気象官署における気象要素の月ごとの季節変化
※1981~2010年の30年間を月別に平均した平年値

 図1-3で示される地点ごとの各月の気温・降水量・日照時間は、その地点の平年値(1981~2010年の30年間の平均値)であり、各年、各月の平年差(平年比)を算出する基準となります (コラム4参照:九州北部地方の平年差及び平年比とは?)。


関連リンク⇒【コラム1】九州北部地方(福岡)の気候は日本海型?
関連リンク⇒【コラム4】九州北部地方の平年差及び平年比とは?


春の天候

 春季(3~5月)は、低気圧と高気圧が交互に日本付近を西から東へ通過します。低気圧の通過前(通過後)には南(北)からの暖かい(冷たい)気流が流れ込み、気温が上昇(下降)します。九州北部地方の気温もこうした短期の変動を繰り返しつつ、次第に上昇していきます。天気の変化による、寒暖の差が大きい季節です。春季の後半は、高気圧に覆われることが多くなるため、日照時間が多くなります。また、この時期は大陸から黄砂がしばしば運ばれて来ます。

図2-1
図2-1 春の大気の流れの模式図
図2-2
図2-2 2013年4月6日09時の天気図(春期の例)


関連リンク⇒平年と大きく違う天候の例 (1991年5月の九州北部地方の低温と日照不足)


夏(梅雨・盛夏期)の天候

 6月上旬から7月中旬は梅雨の時期で、太平洋高気圧の勢力が強まり、南の暖かく湿った気団と大陸や北の冷涼な気団がぶつかることで、前線が停滞しやすくなります。 九州北部地方はこの時期の降水量が全国で最も多い地域の一つです。特に、九州北岸付近の梅雨前線上を低気圧が東に進む場合などは、南西から湿った空気が流れ込み、山間部の南西側を中心に局地的な大雨となりやすくなります。
 梅雨明け後は、太平洋高気圧に覆われ晴れて暑い盛夏になります。強い日射の影響で日最高気温35℃以上の猛暑日や夜間の最低気温が25℃以上の熱帯夜も増加します。また、九州山地を中心に大気の状態が不安定となり、雷雲が発生し一時的に激しい雨の降る日があります。

図3-1

図3-1 夏の大気の流れの模式図

図3-2
図3-2 2013年6月20日09時の天気図(梅雨期の例)
図3-3
図3-3 2013年8月10日09時の天気図(盛夏期の例)


関連リンク1⇒【コラム2】クジラの尾と猛暑
関連リンク2⇒平年と大きく違う天候の例  (1994年7・8月の全国的な高温・少雨・多照)
関連リンク3⇒平年と大きく違う天候の例  (2014年8月の西日本を中心とした多雨・寡照)


秋の天候

 秋季(9~11月)は、低気圧と高気圧が、交互に日本付近を西から東へ通過し、9月頃まで暑さが残ることがありますが、九州北部地方の気温は次第に低下します。また、9月は秋雨前線や台風の影響で降水量が多くなり、勢力の強い台風の接近・上陸で大きな被害を受けることがあります。10~11月になると、大陸からの移動性高気圧に覆われて天気は次第に安定し、おだやかな晴天となる日が増えてきます。

図4-1
図4-1 秋の大気の流れの模式図
図4-2
図4-2 2012年10月20日09時の天気図(秋期の例)


関連リンク⇒【コラム3】秋雨前線と台風による大雨


冬の天候

 冬季(12~2月)は、ユーラシア大陸でシベリア高気圧が発達する一方、北太平洋北部ではアリューシャン低気圧が発達して、西高東低の冬型の気圧配置となります。このため、九州北部地方には寒気が流れ込んで曇りの日が多くなりますが、山地の風下側にあたる地域(大分など)では比較的晴れの日が多くなります。高気圧に覆われた晴天の朝は、放射冷却により気温が下がり冷え込む日があります。

図5-1
図5-1 冬の大気の流れの模式図
図5-2
図5-2 2013年1月18日09時の天気図(冬期の例)

関連リンク⇒平年と大きく違う天候の例  (2011年1月の九州北部地方の低温・少雨)


問い合わせ先

   福岡管区気象台 地球環境・海洋課 (電話 092-725-3613)