2014年8月の不順な天候(日照不足・長雨)

 2014年8月は、台風や前線活動の影響を大きく受けて、西日本を中心に記録的な日照不足・長雨となりました(図13-1参照)。 長期間にわたって大雨の降りやすい状態が続き、北海道から九州にかけての各地で記録的な大雨が発生しました。これらの大雨について、気象庁は「平成26年8月豪雨」と命名しました。 九州北部地方においても2014年8月は記録的な日照不足・多雨になり(図13-2参照)、日照時間は平年と比べて43%とかなり少なく統計開始以来2番目に少ない記録となり、降水量は平年と比べて218%とかなり多く統計開始以来5番目に多い記録となりました。平均気温に関しては、平年と比べて-1.2℃とかなり低く統計開始以来9番目に低い記録となりました。


図13-1
図13-1 2014年8月の分布図
(気温平年差・降水量平年比・日照時間平年比)
図13-2
図13-2 2014年8月の九州北部地方における日別の
気温平年差、降水量平年比、日照時間平年比の時系列

 この不順な天候(日照不足・長雨)の要因は、日本付近に南からの暖かく湿った空気が流入する状態が長く続いたことと考えられます。 特に、7月末から8月上旬については、2つの台風(第12号と第11号)の影響も受け、8月上旬後半以降については、上空の偏西風が日本の西側で南に蛇行したことで、本州付近に前線が停滞しやすくなりました。 7月末から8月上旬前半と8月上旬後半以降で分けて、以下で解説します。
 7月末から8月上旬前半は、7月29日にマリアナ諸島付近で発生した台風第11号がフィリピンの東海上まで発達しながら西進し、同じく7月29日にフィリピンの東海上で発生した台風第12号は東シナ海を北上しました。 図13-3の概念図のとおり、この期間は日本の上空を流れる偏西風が平年と比べて北寄りを流れていたため、台風第12号は東に流されにくくなりました。そのため、西日本には台風第12号や第11号により、暖かく湿った空気が長くもたらされました。 また、フィリピン付近の対流活動が活発で、太平洋高気圧を本州の南東海上で強め、高気圧の縁辺を流れる暖かく湿った空気が西日本に流れ込みやすくなりました。


図13-3
図13-3 2014年7月末~8月上旬前半の不順な天候をもたらした要因の概念図

 8月上旬後半以降は、台風第11号がフィリピンの東海上から西日本の南海上を北上し、10日に日本本土に上陸しました。 図13-4の概念図のとおり、上旬前半から一転してフィリピン付近の対流活動が不活発となり、地上付近は高気圧性偏差となりました。 このため、平年では南シナ海からフィリピン東海上へ吹く地上付近の西風(モンスーン西風)が、東シナ海に向かう風(南西風)となり、湿った空気が日本付近に流れ込みやすくなりました。 また、上空の偏西風が日本の西側で南に蛇行したことで、前線が本州付近に停滞しやすくなりました。 この偏西風の蛇行には、フィリピン付近の対流活動が不活発だったことが影響したと考えられます。


図13-4
図13-4 2014年8月上旬後半以降の不順な天候をもたらした要因の概念図

 この事例については2014年9月3日に開催された異常気象分析検討会(臨時会)において、要因を分析し見解がまとめられています。 詳細については、気象庁ホームページ内の報道発表資料及び検討会資料をご参照ください。

さらに詳細な解説

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