覚えていますか?東日本台風の記録
なぜ、そんなに大雨になったのか?
幾つかの要因が重なって大雨となった
なぜ大雨をもたらしたのでしょうか。このことについては気象庁の気象研究所で研究成果を発表しています。
東日本に記録的な大雨をもたらした気象要因として、次の3点を挙げています。
① 大型で非常に強い勢力をもった台風の接近による多量の水蒸気の流れ込み
② 局地的な前線の強化及び地形の効果などによる持続的な上昇流の形成
③ 台風中心付近の雨雲の通過
台風中心付近の雨雲がまだ関東甲信地方に到達していない段階から、①と②の効果による降水が続き、さらに台風通過時には③の効果によって降水がもたらされたため、総降水量が多くなりました。

図1 記録的な大雨の気象要因のイメージ図
海面水温が高い領域を進んでいた
台風は、海水温が27℃くらいで発生すると言われますが、当時は日本の沿岸近くまで、海水温が27℃くらいありました。
台風が海水温が高かったところを通ってきたので、あまり衰弱することなく接近してきたと言えます。

図2 台風第19号発生時の海面水温(黄色い実線は、台風第19号の経路を示す)
R2.3.31「災害時気象報告 令和元年東日本台風等による10月10日から10月26日にかけての大雨・暴風等」(気象庁)より抜粋
多量の水蒸気が流れ込んでいた
こちらは、上空1.5kmくらいの風と相当温位の天気図です。
相当温位は、暖かく湿った空気の指標で、温度が高いほど、また湿度が高いほど大きな値となります。
この図で赤く塗りつぶした部分は、相当温位345K以上の領域で暖かく湿った空気の領域を示しています。
太平洋側では、台風が大型で比較的ゆっくりと北上したことにより、台風周辺の多量の水蒸気が長時間流れ込むこととなりました。
また、日本海より北側には相対的に冷たい空気が入り(青く塗りつぶした部分)、南からの暖かく湿った空気との間の温度差により前線が形成され、台風接近前から雨が強まりました。

図3 上空約1.5kmの風・相当温位の12時間予想図(10月11日21時時点)
地形の影響により降水量が増加した
こちらは、数値シミュレーションで、地形による効果でどれだけ雨が増えたかというものです。
赤い領域は、地形の影響で雨が増えたとされる領域です。
台風から標高の高い山に雨雲が吹きつけるところ、阿武隈高地や関東山地、越後山脈など、地形の影響で雨が200ミリ以上増えているのが分かります。
図4 数値シミュレーションによる積算降水量分布(地形による増減)(10月11日9時から13日12時まで)
台風の北側で発生した前線
赤い破線は台風の北側に発生した前線の大まかな位置を示したものです。青い矢印は風の流れです。
太平洋側からの風、こちらは大量の水蒸気を含んでいます。
それと、北からの風がぶつかったところに前線が見られます。
この前線により台風が来る前から大雨が降りました。
図5 解析雨量による前1時間降水量分布
10月12日の15時の解析雨量による前1時間降水量分布(mm)
赤丸は台風の中心位置、赤破線は台風北側で発生した前線の大まかな位置を示す
三角印は観測所における風向と風速(m/s)、青実線は地上風の流れを解析したもの。
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