秋の特徴

長野県の秋

台風の接近や秋雨前線の影響で大雨となる場合があります。台風のコースにより県内に影響する地域が変わるので注意が必要です。たとえば、1959年の伊勢湾台風や1998年の台風第7号は、県の西側に接近しながら北上し、風雨による被害が大きくなりました。

晩秋になると、寒気が南下し、移動性の高気圧に覆われ朝晴れると、盆地では放射霧や川霧が発生することが多くなります。

台風

台風は大きな空気の渦巻きで、強い風が北半球では反時計回りに吹いています。

風による災害には、瞬間的な風(突風)の強さが被害をもたらします。

斜めから風が吹き当たる場合は、建物の風上にあたる屋根周辺部から円すい状の渦により局部的に押し上げられて、破壊のきっかけとなります。また、風上側の窓が破れると、室内の風による圧力が急激に大きくなって、家屋破壊のきっかけともなります。

強い風による飛散物は空中でさまざまな運動をします。瓦のような平らな板状ですと、回転しながら吹いている風の力の向きと、瓦が下に落ちる力(重力)とが釣り合うような、斜めの方向に落下し、かなり広い範囲に飛びます。

県内の観測開始以来の日最大瞬間風速の第一位は、表1のとおりです(2021年7月31日現在)。

表1 日最大瞬間風速の第一位

観測所名 長野 松本 諏訪 軽井沢 飯田
風速 31.4m/s 37.6m/s 33.8m/s 36.3m/s 37.0m/s
風向 北西 南東 北東
年月日 1948/8/23 1998/9/22 1959/9/26 1959/8/14 1959/9/26
発生原因 寒冷前線通過 台風第7号 伊勢湾台風 台風第7号 伊勢湾台風
統計開始年月 1937年1月~ 1939年1月~ 1953年9月~ 1925年1月~ 1940年5月~

台風は、たくさんの水蒸気を含んでいるため、広い範囲に雨を降らせ、雨の降る時間が長くなり、雨量が非常に多くなります。また、台風の通過するコ-スにより、大雨の降る地域が地形の影響を受けて変わります。

日本付近に前線が停滞しているところに、台風が接近すると台風からの湿った空気が前線に流れ込み前線の活動が活発化します。そして、その前線付近では、局地的に激しい雨が降ります。

県内の観測開始以来の日最大降水量の第一位は、表2のとおりです(2021年7月31日現在)。

表2 日最大降水量の第一位

観測所名 長野 松本 諏訪 軽井沢 飯田
雨量 132.0mm 155.9mm 161.5mm 318.8mm 325.3mm
年月日 2019/10/12 1911/8/4 1983/9/28 1949/8/31 1961/6/27
発生原因 台風第19号 台風 台風第10号 キティ台風 梅雨前線と台風第6号
統計開始年月 1889年1月~ 1898年1月~ 1945年1月~ 1925年1月~ 1897年11月~

長野県に災害をもたらす台風コース

長野県の台風災害は、おおむね8~10月です。長野県から見た台風のコースによって、雨や風のおおよその傾向があります(図1)。

ただし、個々の台風によって雨雲の分布や風の吹き方は異なるため、実際に台風が接近する際には、気象台から発表される台風情報や警報・注意報を参照してください。

図1 長野県に災害をもたらす台風コース

  1. 長野県を通過するコース

    県内を通過する最悪のコ-スで、大雨と強風の被害が発生します。特に①のルートで県内を通過する場合、全県的に大雨と強風の被害が発生し、千曲川水系では厳重な警戒が必要となります。

    1959(昭和34)年8月12~14日の台風第7号は、県の東部・北部を縦断したため風、雨ともに非常に強く、死傷者453人、住宅への被害が2万戸に達する空前の被害となり、44市町村に災害救助法が適用されました。


  2. 西側北上コース

    長野県に接近して西側を北上するコ-スで、全県が暴風・大雨域に入り、風水害が発生します。特に木曽川、天竜川水系では厳重な警戒が必要となります。

    1959(昭和34)年9月25~27日の伊勢湾台風では、強風による住家の全半壊が約10,400戸に達し、全体の70%が南部に集中しました。死傷者は約272人で、農作物被害は、りんご・ブドウ・梨など全県に及びました。

    1998(平成10)年9月21~22日の台風第7号は、和歌山県に上陸し強い勢力を保ったまま西側を北上したため、全域で南よりの強い風が吹き、松本の最大瞬間風速は37.6m/s と、伊勢湾台風の時の最大瞬間風速35.3m/sを上回りました。


  3. 東側北上コース

    県の東側を北上するコ-スで、台風の吹き返しによる強風の被害が大きくなります。特に台風に近い佐久地方の山沿いでは雨、風が強まります。また、東部や北部では大雨に対する厳重な警戒が必要となります。

    1958(昭和33)年9月17~18日の台風第21号では、県の北東部と東部周辺で総雨量が140~200mm以上となり、千曲川水系の中小河川が氾濫・決壊して、死傷者約150名の大災害となりました。

    1982(昭和57)年9月10~13日の台風第18号では、佐久から北部で総雨量が140~200mm以上、南部では200~300mmとなり、千曲川水系の中小河川が氾濫し、飯山市の樽川が決壊しました。死者2名、負傷者33名、被害総額は約554億円となっています。

    2019(令和元)年10月10~13日の台風第19号では、県の東と北東部を中心に総雨量が140~300mm以上となり、千曲川堤防の決壊などによる洪水や大雨で多大な被害が生じました。また、記録的な大雨により平成25年の運用開始以来、県内43市町村に初めて大雨特別警報を発表しました。


  4. 南側東進コース

    太平洋側を東に進むコ-スで、典型的な雨台風です。伊那谷や木曽谷、佐久地方などを中心に一様な大雨となります。

    1983(昭和58)年9月28~29日の台風第10号により中部・南部では、総雨量が200mmを超え、各地で土砂崩れが発生しました。また、諏訪湖が増水し約1,083haが浸水しました(床上・床下浸水家屋は約6,600戸)。

    また、飯山市常磐地区では千曲川が決壊しました。


  5. 対馬海峡から日本海中部を北東進コース

    全般に雨量は少ないが、北部の山沿いで強風となり、北アルプス一帯では強い風、雨となるので注意が必要となります。

    1991(平成3)年9月27~28日の台風第19号では、全県で強風となり特に北部の千曲川沿いで、最大瞬間風速が30~40m/sに達しました。この強風により果樹中心の農作物に被害が発生しました。

紅葉

台風が足早に関東の東海上に抜けて、冷たい空気が入って気温が急に下がると、標高の高い所では、初霜や初氷が観測され紅葉の便りも届き始め、この紅葉する日の等しいところを結んだ線は「紅葉前線」と呼ばれています。

紅葉は、最低気温が8℃前後より低くなった日があってからしばらくして始まると言われています。長野県内の各地の最低気温の平年値からこの条件に当てはまる時期は、標高1,200m前後では10月中旬頃です。紅葉が山を降りる早さは、標高100mにつき2~3日といわれています。

美しい紅葉の条件は、「昼と夜の寒暖の差が大きいこと。太陽の紫外線にたくさんあたること。葉が乾燥し、枯れてしまわないこと。」といわれます。

このような条件は、移動性の高気圧に覆われて、昼間に暖かく、夜に冷えるような日が続く年ということになります。

霧の季節-秋の霧-

気象台や特別地域気象観測所の平年の月別の霧日数は、諏訪と軽井沢を除いて秋に多くなっています(図2)。

これは内陸の盆地で多く発生する「放射霧」によるものですが、千曲川、犀川、天竜川の大河川やそれに流れ込む中小河川からの「蒸発霧(川霧)」も加わって、長野・松本・伊那盆地などでは濃い霧が発生しやすくなります。

図2 気象官署の平年の月別霧日数

※1 月別霧日数の平年値統計期間は観測所ごとに異なります。

   長野:1991~2019年 松本:2007~2020年 諏訪:1997~2020年 軽井沢:2009~2020年 飯田:2006~2020年

※2 松本の2~5月の月別霧日数平年値は、欠測などの理由により平年値の統計年数が不足しているため、空白としています。

※3 長野の月別霧日数の平年値は、平成31年の目視観測の終了により統計を切断したため、切断前までの期間の値で求めた平年値(参考値)です。

霧の発生条件

霧が発生するには、その付近の空気中の水蒸気が水蒸気としていられない程に湿った状態になることが必要です。それには気温が下がるか(冷却)、結露し始める温度(露点温度)が上がるか、またはこの二つが同時に起きることです。

空気中に含みきれる水蒸気の量は、気温の低下とともに減少します。そのため、空気が水蒸気を含みきれる温度以下まで下がると空気は完全に湿って「飽和状態(湿度が100%)」となり、余分な水蒸気は小さな水滴となります。また、露点温度が上がるということは、湿った空気が供給されることで、空気は飽和状態になります。この小さな水滴が光を散乱したり、反射や吸収して見とおせる距離(視程)が1km未満になった場合が「霧」です。

霧の分類

  1. 空気の冷却

    気温が下がることによって発生する霧には、「滑昇霧」「放射霧」「移流霧」があります。

    滑昇霧」は、湿った空気が斜面を上昇するときに、空気が膨張して気温が下り、発生する霧です。軽井沢の春から夏にかけての霧がこれに当たります。

    放射霧」は、「盆地霧」ともいわれ県内の秋を代表する霧です。

    移動性の高気圧に覆われ、晴れて風の弱い夜には、「放射冷却現象」といって地面は大気中に熱を放出するため気温が下がり、それに接している地表付近の空気の温度も下がって飽和状態となります。すると余分な水蒸気は細かな水滴に変わり、遠くの景色を急速に見えなくしていき霧となります。

    秋は、移動性の高気圧に覆われる日が多くなるため、霧の発生する季節となるわけです。

    しかし、この霧は、日の出とともに空気が暖められると消えていきます。

    移流霧」は、暖かく湿った空気が、それより冷たい水面や地面を移動する時に、下から冷やされて気温が下がって発生する霧です。


  2. 水蒸気の供給

    水蒸気の補給によって発生する霧には、「蒸発霧」「前線霧」があります。

    蒸発霧」は、川や湖、海や湿った地面が、冷たい空気に覆われた時やその空気が移動する時に、その空気よりも暖かい水面または地面から蒸発する水蒸気が冷えて発生する霧のため、「蒸気霧」ともいわれます。

    前線霧」は、温暖前線(暖かい空気が冷たい空気の上をはい上がっている前線)から降る暖かい雨が、下の乾いた冷たい空気層の中で蒸発して水蒸気になった後、再び冷やされて霧になる場合です。

    また、暖かい空気と冷たい空気が混合しますので、気温の高い空気は、気温が下がり霧の発生することがあります。これを「混合霧」ともいいます。

図3 霧が発生する時の概念図

しぐれ

秋の終わりから冬のはじめのころ、長野県の北部の山沿い地方を中心に、断続して降る雨を「しぐれ」といっています。

冬型の気圧配置となって、日本海で発生した積雲や積乱雲が山にぶつかって山沿いでしぐれとなり、強い風の時には、山あいを吹き抜けて平地にもしぐれをもたらします。

11月の野沢温泉の日降水量1mm以上の日別の出現率では、11月下旬からしぐれの影響を受けているのが分かります(図3)。

図4 11月の日降水量1mm以上の日別出現率の時系列図

(統計期間:1976~1992年)