夏の特徴

長野県の夏

梅雨の初期は、曇りや雨の日も多いですが、梅雨前線が本州の南海上や南岸に位置する場合、北部中心に晴れ間もあります。

また、梅雨前線が長野県に停滞あるいは梅雨前線上に低気圧が発生し、西日本から接近してくる場合や、南海上からは台風などが北上する場合、大雨となることがあります。

梅雨明け後は、太平洋高気圧に覆われ、日中昇温すると、山沿いを中心に発雷し短時間強雨となる日が多くなります。

長野、松本、飯田では猛暑日の日数が5日~6日程度ありますが、熱帯夜の日数は長野で1日ほどでその他の地域ではほとんどありません。

大雨

大雨に備えて-大雨が降るとき-

「台風・梅雨前線・低気圧」は、広い範囲に大雨を降らせます。一方、夏に代表される夕立(雷雨)は、狭い範囲に短い時間で強い雨を降らせます。

一般に、激しい雨ほどその範囲が狭く、長続きしにくいものです。しかし、「台風や梅雨前線」などは、発達した雨雲を次々につくり、激しい雨を広い範囲に降り続かせる原因となっています。

長野県内で1日程度続くような大雨は、南からの暖かく湿った空気が流れ込み続け、地形の影響で強制的に上昇させられることによって雨雲が発達することによる場合が多く、一般に県の西側の山沿いで雨量が多くなります。一方、短い時間(1~2時間程度)の激しい雨についてははっきりした地域差はありません。

集中豪雨とは

「集中豪雨」とは、同じような場所で数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす現象です。夕立の時のような激しい雨と雷が、夜中や明け方など時間を選ばず何時間も続くことが特徴です。

ある地域に集中して大雨が降るためには、雨の源であるたくさんの水蒸気が途切れることなく運び込まれる必要があります。

災害をもたらす雨の降り方

大雨にも様々な降り方があり、以下の3つの降り方に分けることができます。

  1. 短時間(1~2時間)に集中するが、雨そのものは長続きしない
  2. 長時間降り続く
  3. 長時間に渡り降り続く中、短時間の強い雨を含む

過去の大災害のほとんどは、3の「長時間に渡り降り続く中、短時間の強い雨を含む」降り方で起きています。

数十年に一度という大雨では、山崩れ・がけ崩れや洪水が発生する可能性が極めて高くなります。

ここしばらく記録的な大雨のない地域、雨の少ない地域でも決して安全というわけではありません。

「長野県の大雨」は、6~7月の梅雨期の雨、8月の雷雨による短時間の強い雨、9~10月の台風襲来期の雨で発生することが多いです。

梅雨

春から盛夏への季節の移行期に、日本から中国大陸付近に停滞前線が出現します。一般的には、南北振動を繰り返しながら沖縄地方から東北地方へゆっくり北上します。

この前線を「梅雨前線」と呼び、梅雨前線の近くでは雨の日が続いたり局地的な大雨が起きやすくなります。

梅雨時期に長野県で大雨となる条件は

  1. 梅雨前線が長野県付近に停滞しており、前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んでいる時。
  2. その梅雨前線上に低気圧が発生し、西日本から接近してくる時。
  3. 梅雨前線が停滞し、南海上から台風や熱帯低気圧(台風に達しない低気圧)が北上してくる時。
  4. このような時の上層の風は、南~西南西の風が吹いているので、特に南西向きの斜面(木曽谷や伊那谷)では、地形による上昇流で雨雲が非常に発達して雨量が多くなるという特徴があります。

図1 長野県で大雨となった時の梅雨期の地上天気図

1999年6月29日9時(左図)1999年6月30日9時(右図)

夏の雷雨-内陸部の積乱雲による雷雨-

長野県で積乱雲(雷雲)が発生しやすいのは、山沿いの南斜面です。そして、その積乱雲の移動は、上層の風に流されますが、谷や河川に沿って平地に向かう傾向もあります。夏に雷が集中するのは、夏の日差しが強いため、まず地面の温度が高くなり、それに接する下層が暖められた結果、上昇気流が発生して積雲(垂直に発達する雲)ができ、雷雲にまで発達するためです。

また、上空に冷たい空気(寒気)が入ってくると、午後には大気(上層では冷たくて重たい空気、下層では暖かくて軽い空気)が不安定な状態となり、この不安定を解消するため上下の空気が混じり合います。この時も強い上昇気流が発生して積乱雲にまで発達し、局地的な激しい雨を降らせます。このようにして発生する雷を「熱雷」といい、時には「ひょう」や「突風(瞬間的な強い風)」を伴います。

気温が上がることによって生じる雷雨は、日没によって日射がなくなれば次第に弱まります。しかし、上層に入る寒気の程度いかんでは、夜遅くまで雷雨が続きます。

ひょう(雹)とは-雹災害-

「ひょう」は、空から降る氷の粒のうち、直径が5mm以上のものをさし、それより小さいものは、あられ(氷あられ)と呼んで区別しています。

直径が数cmを超える大きなひょうが降ることも珍しくはありません。

昭和42(1967)年6月18日の上田から小諸にかけての千曲川沿い北斜面の標高 600 ~ 1,000 mの広範囲に及んだ降ひょう害では、東部町でピンポン玉大のひょうが、真っ白に積もっています。

ひょうは積乱雲の中で成長し、落雷や突風の被害を伴うこともあります。

ひょうはなぜ怖いのか

氷の固まりであるひょうによる被害の多くは、ひょうが物に落下したときの衝撃によるものです。

ひょうの落下のスピ-ドは、小さいものでも秒速 10 m/s(時速 36 km)、ゴルフボ-ル大のものでは秒速 30 m/s(時速 100 km) にも達するといわれており、その衝撃の大きさが伺えます。

主に生育期の果樹や野菜、ビニ-ルハウスなどが被害を受けますが、家屋(窓ガラスの破損)や自動車に被害の生じることもあります。時には地面に積もるほど大量に降り、あたり一面が真っ白になることもあります。

長野県の降ひょう地域

長野県では 6 月を中心にひょう害の季節となりますが、真夏にも降ることも特徴です(図2)。

ひょう害は、短い時間(ほとんどが 10 分以内)で狭い地域に被害が集中します。

長野県でひょうの降りやすい地域は、1) 上田、佐久、東部町などの千曲川流域、(2) 裾花川流域、(3) 松本盆地及び諏訪盆地、(4) 天竜川流域の順になります(図3)。

降ひょう域の範囲は、おおよそ 5 ~ 10 km以内がほとんどです。

図2 長野県における月別降ひょう災害回数

(統計期間:1971~2000年)

図3 農作物に被害を与えた降ひょう分布

(統計期間:1951~1985年)

暑い夏と涼しい夏

太平洋高気圧と8月の気象

梅雨明け以降の 8 月にかけては、太平洋高気圧が勢力を強め日本付近を広く覆うため、気温が高く安定した晴天が続くようになります。しかし、太平洋高気圧の日本付近への張り出しの強さの程度いかんでは、「暑い夏や冷たい夏」となり農作物などに大きな影響を与えます。

太平洋高気圧の強さは、フィリピン周辺の海水温やその付近での積乱雲の活動状況と関わっていると言われており、フィリピン周辺の海水温が高く、積乱雲の活動が活発であれば、その北側の太平洋高気圧が発達して日本付近を覆うことになります。

暑い夏

「暑い夏」となる時は、日本付近を覆う高気圧が非常に安定した状態となります。高気圧内では下降流となっているため、この下降流により、周りの空気と混じり合うことなく空気が圧縮されて気温が上がること(断熱昇温)と、強い日射で暖められた地上の気温が混合することによって、連日の厳しい暑さとなります(図4,5)。

図4 暑い日の続く代表的な天気図(2001年7月4日9時) 図5 2001年7月4日9時の衛星画像(可視画像)

涼しい夏(冷夏)

夏の天気が不順で気温の低い状態となる気圧の型には、二つあります。

一つは、太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱く、代わってオホ-ツク海・千島列島付近のオホ-ツク海高気圧から吹き出す北東の風が、海上の冷たい空気を日本付近に運び込みます。そのため、本州の南には低気圧や前線が発生し、曇りや雨のぐずついた天気が続き、全国的に低温となる型です。

もう一つは、沿海州からオホ-ツク海付近が気圧の低い所となっていて、北日本では北西の風の流れとなり北極方面から冷たい空気が流れ込む場合で、北日本が不順な天気となります。