Ⅲ.新潟県の高波災害(台風を除く)

新潟県の気象災害

 強い風(暴風)による災害は第二室戸台風のように台風によることが多いですが、冬季にも発達した低気圧によって暴風の吹くことがあります。
 新潟市の最大瞬間風速の記録(1937年以降)をみますと、上位10位までのうち、7例が台風となっていますが、低気圧も3例あります。強い風は高波をもたらします。波には風により生じた波(これを「風浪」といいます。)と、遠くで発生した高波が伝わった波(これを「うねり」といいます。)があります。「風浪」に「うねり」が加わると、より高い波となります。

新潟の最大瞬間風速の記録
新潟の最大瞬間風速の記録(1937年~2010年まで)

 県内では昭和45年(1970年)1月31日の「昭和45年1月低気圧」や昭和54年(1979年)3月31日の低気圧により高波の被害が発生しています。ここでは最近の事例である平成20年2月24日の高波について述べます。
 天気図をみると2月22日21時、日本海西部で発生した1008hPaの低気圧は急速に発達しながら東に進み、23日21時には津軽海峡付近で980hPaに達しました。このため、日本付近は全般に強い風となり、日本海でも北または北西の強い風となりました。北海道奥尻、山形県飛島、新潟県相川の23日から24日の風の状況をみますと、23日昼過ぎから24日朝にかけて北または北西の20m/sを超える風が続いています。

平成20年(2008年)2月22日21時
平成20年(2008年)2月22日21時
平成20年(2008年)2月23日21時
平成20年(2008年)2月23日21時

 波の状況をみますと23日21時(23日9時観測による12時間後の波の分布を予想したもの) の佐渡付近の波の高さは約5mですが、津軽海峡西方では7mにも達しています。この高波が「うねり」となって南に伝わるとともに強い風による波も加わって、24日9時には佐渡付近で高さが7mの(周期が12~13秒と長い)高波となっています。また、通常は佐渡の東海岸は西海岸に比べて波が低いのですが、北から伝わった「うねり」により東海岸でも波が高くなったのが特徴です。
 このような「うねり」による高波は富山県で顕著で、「寄り回り波」とも呼ばれています。
 この高波のため、佐渡の東側沿岸や上越地方の沿岸で堤防の破損、家屋の浸水などの被害が発生しました。

奥尻、飛島、相川の風の時系列(2月23日9時~24日9時)
奥尻、飛島、相川の風の時系列(2月23日9時~24日9時)
旗印は10m/s、矢羽根は2m/s、短矢羽根は1m/sを示す。たとえば、相川の23日20時は西北西23m/s。
波高
波の高さ。左:2月23日21時(23日09時の12時間予想) 右:24日09時
ブロック矢印は波の進む向きを、添数字は波の周期を、等値線は波の高さを示す。
24日09時、佐渡北方の日本海では波の高さ7m以上、波の周期12秒で、波が南方向に進んでいることを示している。