2011年1月の大気の流れの特徴―詳細解説―

低温の要因

 低温の要因として、図11-4の海面気圧分布で示したとおり、対流圏下層において平年と比べて冬型の気圧配置が強まり、北よりの冷たい空気が日本付近に流入したことが挙げられます。 また対流圏の中・上層の寒気が日本付近に入りやすい大気の流れでもありました。 図11-5は、500hPa(上空約5500m)における高度場を表していて、 東経90°付近に顕著な高気圧偏差、日本の東海上を中心に顕著な低気圧偏差が見られます。 この気圧偏差の高・低は、上空を流れる寒帯前線ジェット気流(極域の寒気と中緯度域の暖気との間を流れる強風域)がそれぞれ北寄り・南寄りに蛇行することに対応しています。図11-5の通り、この寒帯前線ジェット気流が中央シベリアで北へ蛇行し日本付近で南に蛇行することから、高緯度域の寒気が日本付近に運ばれたと考えられます。
 また、図11-5でははっきり見えませんが、寒帯前線ジェットより低緯度帯を流れる亜熱帯ジェット気流(熱帯の大気と中緯度帯の大気の境目を吹く)は、ユーラシア大陸南東部で北へ蛇行し、日本付近で南に蛇行する流れをしています。この流れも高緯度域の寒気を日本付近に運ぶことに寄与していると考えられます。  図11-6は、対流圏下層の850hPa(上空約1500m)における気温場を表しており、これらの上空の偏西風の蛇行に対応して、西日本を中心に大陸から冷たい空気(青色域)が流れてきていると考えられます。

図11-5
図11-5 2011年1月の500hPa面の高度分布
等値線は月平均の高度(m)、色は平年偏差

暖色:平年に比べ気圧が高い領域、寒色:平年に比べて気圧が低い領域を表す。
※500hPa面上の高度分布は、上空約5500mの気圧分布に対応している。
図11-6
図11-6 2011年1月の850hPa面の気温分布
等値線は月平均の気温(℃)、色は平年偏差

暖色:平年に比べ気温が高い領域、寒色:平年に比べて気温が低い領域を表す。

少雨の要因

 図11-7は、対流圏下層の850hPa(上空約1500m)における、湿数(気温から露点温度を引いた値を表し、平年と比べて湿っているほど小さい)とその平年偏差(湿っているほど青、乾燥しているほど赤)と風向・風速を表しています。 この年は平年と比べて冬型の気圧配置が強く、日本列島に吹く北西風は平年と比べて強いため、九州北部を除く日本列島日本海側の地域では、日本海の海面上を強く吹く北風により大雪となる地域が多くなりました。それを反映し、これらの地域の湿数の平年偏差が低く(青色に)なっています。
 一方、【コラム1】で述べているように、九州北部地方に北よりの風が吹くと、朝鮮半島が風上となり降水量が低い傾向にあります。さらに、この年は平年と比べて北よりの風が強く、九州北部地方の降水量は少なくなったと見られます。九州北部地方付近の湿数が平年と比べて高く(赤色に)なっていることも、そのことを反映していると考えられます。

図11-7
図11-7 2011年1月の850hPaにおける湿数(気温-露点温度;黒色点線)、湿数の平年差(色)、風向・風速(緑色矢印)

戻る(一つ前の解説)

戻る(九州北部地方の天候の特徴)